こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

こしのり本

三文以上の価値ある作品「三文オペラ」

ブレヒト作の戯曲「三文オペラ」。 乞食と盗賊と娼婦の栄えるというなんともダークな要素の揃ったロンドンの貧民街を舞台として、お尋ね者の盗賊ボス メッキースの大捕り物を描く内容となっている。 タイトルに「三文」と付く通り、気品溢れる従来のオペラと…

リアル路線の社会恐怖「セールスマンの死」

アーサー・ミラーによる戯曲作品、それが「セールスマンの死」である。 作品の内容はタイトルが示す通りに、とあるセールスマンが死ぬお話である。 セールスマンのウィリー・ローマンが死を迎えるまでの過程を見ると創作物だからといって無関心でいることは…

農家を舞台にした愛憎劇「楡の木陰の欲情」

劇作家オニール作「楡の木陰の欲情」を読んだ。 いや、全く知らない本だった。 何か底知れぬ深いテーマがあるような心に引っかかるこの変わったタイトルに釣られて読んでみた。 これは面白い。 作品前面に良くも悪くも「人間」らしさが漂っている作品であっ…

私もかつてはそうだった「恐るべき子供たち」

コクトー作の「恐るべき子供たち」を読んだ。 先日見たアニメ「空の境界」で登場人物の黒桐幹也の名前についてヒロインの両儀式が「フランスの詩人みたいな名だ」と感想を述べたシーンがあった。そのフランスの詩人がこの本の作者コクトーであろう。 かつて…

韻文小説の金字塔らしい「オネーギン」

プーシキン作の「オネーギン」。 オネエではなく登場人物のエヴゲーニィ・オネーギンという青年の名がタイトルとなっている。 内容は遺産で遊び暮らすオネーギンが田舎娘のタチヤーナに惚れられて恋文を貰うのだが、オネーギンは他に類を見ない特殊な振り方…

女性の自我の目覚めを描く「人形の家」

イプセン作の戯曲「人形の家」を読んだ。 日本では弘田三枝子が歌うこれと同じ名前の「人形の家」という楽曲が大ヒットしたのを思い出す。私も良く聴いていた。いずれもマストで子供の遊び道具ということから布施明の「積み木の部屋」という曲とごっちゃにな…

訳がわからない。だがそれが良い「ゴドーを待ちながら」

サミュエル・ベケット作の戯曲である。 本作はとある田舎の一本道が舞台。エストラゴンとウラジーミルというかなり歳のいった冴えない浮浪者が主な登場人物の2幕構成のストーリー。 途中にポッツォという高慢ちきなジジイとその下僕のラッキーというのが出て…

女の特性を知る「かわいい女・犬を連れた奥さん」

戯曲作家として有名なチェーホフの小説作品。 表題の2編の他に「中二階のある家」「イオーヌイチ」「往診中の出来事」「谷間」「いいなずけ」の合わせて7編が収録されていた。全体的にどことなくアンニュイ感が漂っている印象があった。 「かわいい女」に「…

迫り来る死から生をを振り返る「イワン・イリッチの死」

ロシアの文豪トルストイの書いた恐ろしい作品。 ロシア人作家の作品の登場人物はとにかく名前が覚えづらい。ロシア文学を好んで良く読むのだがこの名前の問題には困ったもんだぜ。 一官吏であるイワン・イリッチが不治の病にかかり、迫り来る死からそれまでの…

幼い頃の繊細な感情を綴る「銀の匙」

夏目漱石も絶賛したという名作「銀の匙」を読んだ。 農業高校を舞台にした漫画あるいはアニメ、そしてセクゾの中島ケンティーで実写化もした「銀の匙 シルバースプーン」の方では無い。ちなみに私はシルバースプーンの方に登場する御影というヒロインキャラ…

「機械・春は馬車に乗って」

横光利一(よこみつ りいち)による十篇の短編小説が収められている。 「春は馬車に乗って」という素敵なタイトルに惹かれて読んでみた。 これはタイトルどおり素敵なお話であった。 機械・春は馬車に乗って (新潮文庫) 作者: 横光利一 出版社/メーカー: 新…

失われゆく栄光を偲ぶ「桜の園・三人姉妹」

ロシアを代表する劇作家アントン・チェーホフ作の戯曲である。 チェーホフ四大戯曲の内2作が収められている。過去に他2作の「かもめ」「ワーニャ伯父さん」も読んだのでこれで四大戯曲は無事コンプリートである。 4作共通して言えることは、喜劇要素とどうし…

刹那の時を永遠に「一握の砂・悲しき玩具」

国語や社会科の教科書で良く目にした人物石川啄木の歌集である。綺麗なタイトルに惹かれて読んでみると中身はなかなかヘビーで笑えない話であった。 私としては歌集などを手にとるのは慣れないことで少々内容が脳に入りにくい箇所もあった。しかしその内に慣…

太宰のラスト「グッド・バイ」

太宰治の未完の絶筆それが「グッド・バイ」である。遺作がタイトルでバイバイを言っているのでコントな組み合わせとなっている。太宰にしてはちょっとばかし変わった作風で楽しく読めたので是非最後まで書いて欲しい作品だった。実に惜しい。せめて物語完結…

お父さんと仲直り「和解」

短編作家のイメージのある志賀直哉の中編作品それが「和解」である。 父との不和から実家を出た息子順吉が長きに渡る父との不和を治めるまでの話である。読み終わってから、やはり家族は仲良くなければ損であるし、家族愛は美しい物だと晴れ晴れした心になる…

擦れ違う男と女「雁」

「雁(ガン)」とはカモ目カモ科ガン亜科の水鳥である。カモに似ているがカモより大きい鳥である。国語の教科書に載る「大蔵じいさんとガン」や、名作絵本を原作にした日本名作アニメ「ニルスのふしぎな旅」などで御馴染みの例の鳥である。可愛い、そして美…

私にもあなたにも住まう「肉体の悪魔」

なんとも奇怪にして淫猥さを感じるインパクトのあるタイトルだ。まずタイトルが好きなんだよね。 肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫) 作者: ラディゲ 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2013/12/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 20歳にしてこ…

純愛と奇妙な山越え「外科室・高野聖」

著者である泉鏡花の名前の響きの良さから本作を手にとって読むことにした。 そして、私が手に取った本の表紙は吉永小百合がアップで写っている映画「外科室」のポスターが刷られた物であった。角川文庫のから出た本である。 収録作品は「義血侠血」「夜行巡…

月夜の森のラブコメディ「夏の夜の夢」

シェイクスピアと言えば「四大悲劇」なんて呼ばれる作品群を手掛けたこともあって悲劇の作家のイメージが強いが、実はこの人は万能な作家で喜劇の方も腕もピカイチである。 新訳 夏の夜の夢 (角川文庫) 作者: シェイクスピア,河合祥一郎 出版社/メーカー: 角…

幻想と怪奇渦巻く三人の少女の物語「少女地獄」

「いっぺん死んで見る?」のセリフで御馴染みの地獄への案内人娘のお話ではありません。 「少女地獄」は幻想的且つ怪奇な推理物をお得意とする作家である夢野久作の作品である。 少女地獄 (夢野久作傑作集) (創元推理文庫) 作者: 夢野久作 出版社/メーカー: …

国境の長いトンネルを抜けた先の文学「雪国」

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」の冒頭があまりにも有名な川端康成の小説「雪国」を読んだ。 漱石の「坊ちゃん」、太宰の「走れメロス」と本作は冒頭の一文が有名でクイズ番組の問題で出てきたりする。 有名な書き出しであるが読んだことが…

過酷な農民の生活を知る「土」

土 (新潮文庫) 作者: 長塚節 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1950/06/13 メディア: 文庫 クリック: 9回 この商品を含むブログ (9件) を見る 舞台は明治時代の茨城県の農村。当時の農民の暮らしをリアルに書き綴った作品である。大昔のしかも都会でない田舎…

子を持つ父親の苦悩「個人的な体験」

新たに生まれて来た子供が障害児の場合に親は一体何を想いどのような行動を取るのかということがわかる考えさせる一冊であった。 個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10) 作者: 大江健三郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1981/02/27 メディア: ペーパーバック …

「小僧の神様・城の崎にて」小説の神様の綴る短編集

志賀直哉の思い出とえば、高校の国語の教科書で「清兵衛と瓢箪」を読んだことだ。テンポの良い短編でとても好印象なままに記憶に残っている。高校の国語のテストで志賀直哉の作品を2つか3つ挙げよという文学青年の我にはサービスな問題が出題したこともあ…

不思議でユーモラスな短編集「檸檬」

檸檬(れもん)、私の大好きな黄金の果実だ。何の話か全く知らない作品だったが「ただ檸檬が好きなので」という理由で手に取った。しかし、これは軽い気持ちで読める簡単な本ではなかった。難解な文体、独特な心理描写、不思議でオカルティックな要素も含む…

社会道徳を無視してでもマイライフ「或る女」

「或る女」。なんとも性を主張した深みがかったエロスを彷彿とさせるシンプルタイトルだが内容は決してそういうのでなく本当に或る女、つまりは主人公 早月葉子の一年間の人生記録を読んでいく本である。 表紙の女の絵をじっと見ているとなんだか変な感覚に…

中国古典を漁ろう「李陵・山月記」

中国古典作品を元に書かれた小説作品なので当然にして人物、地名その他もろもろのワードが小難しい漢字で書かれる。開いたページが漢字まみれだと活字に慣れない方は遠慮したいと思うかもしれないが集中して読めばいける。 読み進めるのに少々不自由をするか…

女に飢えた童貞男のイタイお話「お目出たき人」

人はきっと恋をすることだろうと私は信じている。 タイトルが面白いと思っての完全なるタイトル買いの本だったこの「お目出たき人」という一人の男の恋物語、いやいや考え方によってはまだ「恋」としても出来損ないのような感じなのだが、まぁそこのところが…

楽しい大冒険だけでない深い紀行文「ガリバー旅行記」

このガリバー氏による愉快な冒険紀行文は数多く映像作品化されているため原作本は読まないがお話は知っている、聞いたことがあるという人は世の中にいくらでもいることであろう。私も今回始めて手にとったが、本作のことを始めて知ったのは大昔の白黒アニメ…

おい、山根ぇえ!じゃないよ「山の音」

川端康成作の「山の音」です。山の音(おと)と読むらしい。 山の音(新潮文庫) 作者: 川端康成 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/06/14 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 主人公の老人 尾形信吾は、ある日の夜中に聞いた遠く吹く風の音…