こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

こしのり漫遊記 その1「ゴミから始まったそこそこの冒険」

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 強靭な肉体を作り上げるために日課のランニングをしていたとある日の朝のことである。

 道に紙切れが落ちている。この私の前に紙切れという名のゴミくずが落ちている。私の爽やかな朝がこんなゴミのせいで不快なものとなった。

 小さなゴミだし拾ってゴミ箱に捨てようかと思いその紙切れを私は拾い上げた。

 捨てる前に一応目を通してみる。こいつはビックリ、この紙切れの正体はなんとお食事券であった。私は思った。こいつはゴミ箱にもっていくよりも有効活用するべきだと。

 で、こいつがどこで使えるお食事券かというとどこかの病院の食堂のものとわかった。健康そのものの私は母の腹から出て来たばかりの新生児時を除いて病院なんて所に出入りしたことは無いはずである。また、あったとしても記憶に無いので病院と聞いてもピンとこない。それほどに私生活に病院という施設が縁遠かったので知っている病院の名前が一つでも出てこない。医療の進んだこの国に住んでいて病院の名が一つも思いつかない自分が世間知らずであることと共に健康体である幸福を感じた。

 そんなことを頭で思いながら私は「はて、一体どこにある病院なのか・・?」と一人ごちながら右頬を伝う煌く汗を左手で拭った。食事券をポッケにしまい私は再びランニングに戻った。

 家について一休みしたら、パソコンの電源を入れてネットに繋ぎ食事券に書かれた病院の名を入力した。すると地図が表示されて読んでビックリ。なんとこの病院、我が家から15キロも離れた場所にあるのだ。私は移動手段としては俊足を誇る我が両の足=徒歩とボロの自転車の二つのみしか持ち合わせていない。電車やバスも通じている場所だが、金が惜しい。「さぁどうして行こう。そもそもこの距離であるからまず行くか行かないかどうしようか」と私は少しの間考えた。

 「男なら即決すべし!」これは死んだ爺ちゃんの教えだ。あのジジイの言うこといつも正しかった。なら今回も信じようではないか。「よし、行こう!」そう言って私はパソコンを閉じ愛車のボロい自転車に飛び乗ったのだ。

 場所は自転車で行くのには少々遠いが道は恐ろしく簡単で国道をひたすら真っ直ぐ行くのみだ。体力だけ持てばガキでも迷わずに行ける。しかし、国道の側なんてのは申し訳程度に歩行者用通路があるにはあるが、ガタガタのひどく悪い道なのだ。これだけ車が通るのに歩行者にも自転車にもに全くすれ違わない。一日に車以外でこの道を使う者は一体何人いるのかと不思議に思った。車に乗って国道を行くのと自転車で行くのとは同じ道でも全く景色が異なる。車で道の真ん中を走っていれば気にすることも無いが自転車で端っこを走れば意外と雑草や木が繁っているとわかる。ちょっと怖いくらいなんだけど、夜にこんなところを走るとゾッとするな。車の両の多さは変わらないが進むにつれてだんだんと草や木が増えて歩行者通路にも木の枝がかかってくるところもある。ああ、これは気持ち悪い。

 山を二つ越え、やっとお目当ての病院へたどり着いた。想像以上に遠いし疲れる。よくもまあ一回の食事のためにこんな所まで自転車で来たものだ。病院の食堂に行って券を出すとランチメニューが運ばれてくる。メニュー表を見て驚いたが目の前にあるタダ飯はなんと1300円もするとのことである。「まじかよ、これっぽちの量でそんなにするのか」と思ってしまった。とは言っても栄養バランスの取れたすばらしい飯ではあった。見た目から中身まで上品そのもので私はとても満足だった。しかし少々量が足りないとも言える。

 30分するかしないかの滞在で病院を出て来た。帰りには古くからあると言われる有名なソフトクリーム屋でソフトクリームをデザートにペロペロしてきた。ここでプチトラブルがあった。店の人に金を払う時に死んだお祖母ちゃんからもらった長財布の小銭入れのチャックの摘みを引っ張ったらその部分が取れてしまってこれではチャックが開けられない。小指を突っ込んでチャックをこじ開けてやっと小銭が掴めた。金を払うのに随分もたついてしまった。とてもおいしいソフトクリームであったが財布は壊れちまったし店の人はちょっと「プププ」って笑ってたしなんとも冴えない状況に陥ったもんだ。

 随分遠くの地に来たがこの地には一時間といることは無くすぐに自転車に乗って家に帰った。不思議なもので正直に言うと行きの道はそれは長く、そして心細く感じたのだが帰りはあっという間に家についたと感じた。

 めちゃめちゃ疲れた。往復で30キロ以上あったのだから当然だ。先程メシを食ってきたばかりなのに帰りの道のりの運動量の多さのためにもうすでに体が次の食事を欲していた。帰りにスーパーで半額になった菓子パンも買っていたのでそれを食って寝てしまった。

 翌日は下半身が筋肉痛でうなっていた。一枚の食事券を拾ったことから中々の冒険を味わえた。もうあの病院に行くことはないだろう。もし次に行くとすれば、こんなことは願い下げだが病人としてであろうことと思われる。