こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

嫉妬が生む悲劇の連鎖「オセロー」

 

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 いわずと知れたシェイクスピアの四大悲劇の一つに上げられる作品である。本作の読破を持って私は四第悲劇をコンプリートした。

 

オセロー―シェイクスピア全集〈13〉 (ちくま文庫)

オセロー―シェイクスピア全集〈13〉 (ちくま文庫)

 

 

 タイトル名にもなるヴェニス公国の将軍にして主人公のオセローは、冷静沈着、志操堅固なる一角の人物であった。

 彼の地位や名声を妬む彼の部下イアゴーは悪辣たる姦計を巡らせオセローを陥れようとする。嫉妬心からなるイアゴーの計略は皮肉にも同じく人の嫉妬心を利用したものであった。イアゴーは部下の立場でありながら人身掌握の術を心得ている。多くのシェイクスピアの描くキャラクターに共通することだがこいつは一段と弁舌がさわやかである。

 嫉妬心に通じた者だからこその実に狡猾な人間心理のえぐり方をしてくる。物語のキーパーソンであり、悪の黒幕でもある相当に性格の捩れたクソ野郎であるのは間違いない。しかし、計略を巡らせ悪事の限りを尽くすイアゴーは物語の中で一番活き活きとして描かれ、その素直なまでの心の汚さがある意味最も人間らしいとも思える魅力的なキャラクターでもあると言える。

 イアゴーはまずはオセローの嫁のデズデモーナとキャシオーが不倫関係にあるという真っ赤な嘘をオセローに吹き込む。嫁に裏切られたというオセローの嫉妬心に火がついてからは不幸が飛び火していって、ロダリーゴ、デズデモーナ、イアゴーの嫁のエミリアが死亡するはめになりキャシオーも重傷を負い、オセローも最後は自殺してしまう。イアゴー一人に振り回されて何人が死に追いやられるんだよとは私は怒ってしまった。

 オセロー程の人間の出来た者でさえ、一度心に嫉妬の炎がついたならば隅々まで燃えつくされ嫉妬の鬼と化す。誰が見ても真面目と思われる人間がこうも脆くてだまされやすいという事実に恐怖した。人間なんて不完全なもので何がきっかけで堕落していくかわからない。

 イアゴーは元々根の良い奴だったためか、あるいはオセローを陥れることを決めてからあえて演じたためかわからないが周囲からかなり厚い信用を集めている。これだけ腹の中が真っ黒な奴がこうも高い評価を周りから得ることが出来るのかと驚くし疑問でもある。

 オセローをはめる計画を実行をするに当たって、そもそもの土台がしっかりしているのでイアゴーは実に動きやすい立場にある。信頼ある部下なのでオセローへの接触が容易に出来る立場にいるし、キャシオーもイアゴーのことは真実の人と思い込んでいる。オセローに対して「そんなことありえないだろう」と思うほどのビックリ情報を耳打ちしても「イアゴーが言うならきっと真実だ」と皆信じてしまう。嫁のエミリアの前でさえ普段から腹の内を晒すことはしていないと思われ、最後の最後までエミリアも夫の本性に気づいていない。内と外をここまではっきり使い分けるイアゴーはスパイとしては一流かもしれない。悪い奴なんだけど悪さをする手際の鮮やかさは感心するものがあるんだな。

 一人の男の嫉妬から更なる嫉妬を引き起こし果てには嫉妬が化け物となって悲劇を呼び起こすそういった物語であった。エミリアが「嫉妬というのはひとりで種をはらんでひとりで生まれる化け物です」と説いている。本当にその通りだと思った。嫉妬は人を狂わす一つの要因であるとわかった。この物語を教訓に心に闇を飼わないように注意しようと思った。そして、オセローのように早とちりをしてはいけない。物事は慎重に見極めることをしなければならない。