こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

こしのり漫遊記 その9「夏の夜は怪しげなる話を語らおう(上)」

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 このクソ暑い時期に涼を取るひとつの手段として怪談というのがある。これは普通ならヤバ恐ろしい内容のお話を披露して人を縮みあがらせて寒気を誘うものだが、私が持っているネタは確かに「怪談」の字のごくとに怪しげなる要素を含むが怖さの方は多分ゼロである。最初にそこのところのみバラしておこう。本格的に怖い話を聞きたい方はこんな無料ブログで怖い思いをしようなんて甘いことを考えていないで、それなりの金を払って怪談のプロである稲川氏の話し会にでも行きなさい。

 私は世にも珍しい体験をしたことがある。いや、もしかするとこれは他の多くの同体験者がテレビや書籍などで大々的に発していないだけで実はたいしたことのないありふれた体験なのかもしれない。このように不思議と感じる一方で現実感も伴うのため不思議と感じるのが嘘のようなどこか矛盾した感想が持ち上がるなんとも判別しがたい体験を私は味わったことがある。とりあえず物の試しに語ってみようと思うので、この体験は私がいまいち理解できていない所謂社会常識の範囲内の出来事なのか、はたまた外も外の出来事なのかをなるたけ多くの人に聞いてもらってジャッジをして頂きたい。

 それでははじまり~。

 それは私が小学生の頃か、もしかすると学校に上がる前の段階くらいに幼かった頃の話である。私の生家というのがそこそこ森林多き場所に建っていた。私はその日どこかへ遊びに行って、夕方に家へ帰った。腹が減ったので夕飯の出来あがりの是非に関わり無くなにかをつまみ食いしようとすぐ台所へ向かった。もちろんその前に手洗いうがいもしっかりと終えていた。外出帰りのマナーに祖父が煩かったものでこの習慣は遥か時が過ぎた現在でも染み付いている。

 いつか紹介したかもしれないが私のことを必要以上に猫可愛がりする行過ぎた親バカの私の祖母が台所に立ち夕飯を作っていた。昔生まれのわりに調理レパートリーがハイカラな祖母は今日はマーボー茄子をすると言う。祖母は料理の腕も一級品、そして材料も一級品を手ずから拵える。それというのが家から少し離れたところにある祖母の世話する畑で取れる野菜である。はっきり言おう、スーパーの味が霞むくらいに祖母が自ら骨折って作ったこの野菜達はうまい。素人の私でもはっきりとわかる。

 その祖母がたくさん作っている野菜の中から茄子を4,5本むしって来いと祖母は私に命じた。祖母は収穫用ハサミをいれた大きくて黄色い笊を私に手渡した。さあ畑へレッツゴー。

 レッツゴーの前に廊下から寝間を覗くと母が枕に顔を埋めたうつ伏せ状態で枕の下に両腕をもぐりこませた格好で寝ていた。どうゆうわけか今日は祖母が台所に立ち、若いこちらのおばさんは休業状態であった。わたしは丸々と太ったこの母を見て浜に打ち上げられた海豹(あざらし)を連想した。

 無事に畑で茄子の収穫を終えた私はその当時のマイフェイバリットソングである世良正則&ツイストの名曲「燃えろいい女」をご機嫌に口ずさみながら赤き夕陽の照らす中帰路へと着いた。

 家までは川沿いに伸びる一本道を歩くのみである。道と川の間に無造作に伸び放題の雑草地帯をを挟んでいる。町内会とか市で動いてこの気持ち悪い背の高い林を始末して欲しいと私はいつも思っていた。蛇が飛び出してきそうで怖いからだ。怖いもの無しで通る程にガキにしては物怖じしない私が蛇は駄目であった。

 その汚らしい雑草林の間から何と無しに川の方を見ると人が川の中に足を垂らして川辺に座っている。あんな所に人がいるのも珍しいと思った私は立ち止まって謎の人物のこちらに向ける背中をじっと見ていた。この雑草を越えてあの川辺に下りている人物なんてのはスッポンを捕らえて一儲けを企むつねよし爺さんと、ヌートリアを飼うと言って日々奴らと格闘しては逃げられていた(時には手向かわれて泣かされてもいた)なんとか君というバカガキくらいである。後にこいつは母親に「バカ言ってんじゃないわよ」と言われてビンタをくらったのと同時にそのバカな野望を強制的に忘却の彼方へ捨て去ることになった。ちなみにヌートリアは特定外来種といって取り扱いが厄介な生物であるため個人が捕まえて飼うなどするのは法律で禁止されている。母親のビンタが無ければそれと知らずに悪事に手を染めることになったわけだ。やはり母は偉大だ。

 ここにこういった変わった連中以外が近寄らない理由は地域の大人達が川辺は危ないから近寄るなと言っていたからである。現にここでは人の生死に関わるような何らかの事故があったとかなかったとか聞いたことがある。しかし当時は幼かったし大きくなってもこれといって興味がない私は詳しい事はよく知らない。

 私は草を踏み分け川辺に向かいその人の側まで行って何をしているのかと話かけた。その謎の人物がこちらに振り向いた瞬間に解けた最初の謎がこれだ。まず、こいつは人では無かった。

 

つづく