こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

こしのり漫遊記 その11「 ダイヤモンドの苦悶」

 

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 これは苦悶話であって自慢話と勘違いしないで欲しい。最初にこれだけ言っておいて本題に入ろう。

 ごく最近のことである。私は全く興味がないために5万時間の自由時間が与えれても決して見ることは無いであろう野球試合中継を私のお兄ちゃんが手に汗を握って見ていた。彼はその感想を興奮しながら私に話すのだ。私は野球はどうでもいいが血を分けた愛する兄弟が一生懸命喋るのには真剣に耳を傾けて接するのだ。

 このことがあってから私は野球にまつわる苦い過去を思い出した。

 

 私はやたらと義務という概念がくっついて回る義務教育時代のことは教育界の暗黒物質ダークマター)であると独自に定義付けている。つまりは義務教育を諸々良く思っていないというか、単に私とは相性の悪い制度であり時期であると言いたいわけだ。

 中学の時、そうした義務の概念の下に私は部活動に入ることを教師と我が両親に強いられた。もちろん入りたくない。しかし、上からの押さえつけに対して当時の私では物理的に対抗するだけの腕力も体力もない上に未熟な脳みそしか持たぬ故に弁舌爽やかに大人の乱暴な主張を言い負かすだけの弁論の能力も無かった。降参した私はどうせなら楽な部を選びたいので室内で行うゆる~い部(室内での部活動を一生懸命にやっている皆さんにはごめんなさい)を選ぼうとしたが、大人達はお外で運動するものを選べと言う。私は運動は好きではないし興味も無い。時間の無駄なので早く家に帰って自分の趣味をしたいとした思えなかった。

 必ず運動部だというので流れで野球部に入ることになった。全校生徒数が少ないので部の人数もそうはいない。この絶対数の少なさが私には都合が悪かった。それと言うのがサボろうにも数が少ないと監督にすぐバレるのがまず一番に上がる。

 私の記憶するところでは我が部は決して強くは無かったと思う。特別に優れた選手がいるわけでもないありふれたチームだったのではないだろうか。そのいい加減なステータスが悲劇を生んだ。ご存知の通りこのスポーツは何人部員がいようが試合となるとたったの9人しか出ることができない。その9つしかないレギュラーの座の一つを遊撃手(ショート)として埋めたのがなんとこの私なのだ。はっきり思う。何故なんだ。

 正直に言おう。私は野球に対しては全く何の思い入れもないので練習も特別一生懸命にすることもない。ただ流れで皆と同じ練習をするだけでその間は早く帰って当時ハマっていたガンプラを組み立てることに時間を回したいとしか考えていない不真面目な選手だった。家での自主練習なんてもちろんしたことも無い。だったらガンプラを作る。努力も何もしていないのだ。むしろ、その9人に選ばれたくないがためにあえて努めて地味を装ったくらいだ。なのに監督は意外にも目利きがいいのか私の実力が部内ベスト9に入っていると判断した。

 私が自信家の高慢ちき野郎と言うのではないが、私は運動は確かに嫌いだが苦手ではなかった。

 私なんぞは親譲りの無駄な能力の望まぬ恩恵を受けて遠くまで飛ばすバッティング、俊敏な脚力を持っていたのでレギュラー入りしてしまっただけなのだ。レギュラーになれなかった者達の中には真面目に一生懸命練習に励んでいる奴も確かにいた。

 私は周りの者の考えや価値観などはだいたいにおいてどうでもよかったのだが今回は別で、私がいい加減な思いで責の重い背番号をもらっておいて一生懸命の補欠の者達には何もないとなると罪悪感を持たずにはいられなかった。

 私は責任が発生するとわかった後でもどうしても野球には気持ちがはいっていかなかった。普通なら責任を背負えば一生懸命になるのだろうが私にはそれがなかった。マジで、この番号誰にでもやるから家に帰らせてくれとしか思えなかった。

 いい加減な思いで振ったバットで決勝点をもぎ取った時の妙な気持ちは文章で表すことができない。チームメイトが私を一生懸命応援してくれる分だけ胸が痛い。

 愛で溺死させる気かとおもう程に私のことが大好きな祖母が私のレギュラー入りを喜ぶ様が一番胸に堪えた。祖母は「我が家のマグワイアだわ!」とはしゃいでいた。コレには本当に恥ずかしい。

 大人達は誰も助けてくれない。嫌がる私を部に押し込み、その後望まぬ出世で苦しんでいるのを逆にお祭り騒ぎで喜んでいる。全くどうにもならない状態であった。

 このクソ暑い太陽の下でバットを振る坊主頭共の中に、もしかしたら私同様の悩みを抱えた者もいるのかと思いながらお兄ちゃんの野球話を聴く今日この頃である。

 ちなみに私は一校の「メガ粒子砲」の通り名を取った選手だ。チームメイトには親しみを込めてメガリューと呼ばれていた。どこかの旅行先で聞いて回ればもしかしたら私の生まれ地がわかるかもしれない。