こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

記憶を辿る「カイバ」

 「カイバ」は2008年放送の全12話のアニメ。

 アニメと私との相思相愛関係にとって壁となる有料チャンネルWOWOWで放送した作品であり、リアルタイムでの視聴は出来なかった。

 タイトルは人の脳における記憶能力を司る器官である「海馬」(カードゲームを行う社長ではない)が由来となっている。

 

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 記憶がテーマになっている作品で、記憶喪失の主人公カイバが自分が何者であるのかを求めて旅するお話になっている。

 

 独特の世界観を持つ作品で、記憶をデータ化することが可能となった世界が舞台である。

 肉体の死=人の死ではなく、データ化した記憶を新たな体に入れ替えることで人生リニューアルが可能になるというもはやロボのように体をいじることが可能な設定になっている。よくゲームである「強くてニューゲーム」ってのが現実でも可能となると思えばちょっとワクワクする。

 記憶が人の本体であり、体は男でも女でも他の生物でも色々選べるようになっている。面白いようで気持ち悪い設定である。

 このように命の終わりが単純化されていない世の理を無視したSF的設定はある意味でユートピア的にも取れ、そして逆にディストピアとも取れる。とにかく不思議すぎる世界の話だった。

 

 ストーリーの時点で色々新しい発想をしている意欲作だけど絵も注目してしまう。キャラ絵は手塚治虫漫画のようでもあるし藤子・F・不二雄赤塚不二夫っぽい感じもする。懐かしさを感じる可愛らしく個性的なキャラクター達が登場する。

 絵柄の緩さに似合わずストーリーは少々難解にして重厚で、一筋縄ではいかない作品だ。悲しい話や欝展開な話も混じり、時に残酷、そしてエロティックな描写もある。ごった煮的要素がある作品だ。

 記憶と言う本来は物理的形状を持たないモノを扱う点で何やら哲学的問いを行っているのがうかがえる一風変わった作風であった。

 アニメに、もっと言えば単純に物語を読むということに慣れていない創作物鑑賞ビギナーには向かない作品だと思う。12話にしては情報量がやや多めな作品で一回の視聴では「謎」を抱えたままゴールしてしまうかもしれない。再度視聴すると伏線回収に納得がいくかもしれない。私も1話の段階で「なんだコレ」ってなった。主人公が記憶喪失だから何が何だかわからない状態でスタートするのだが、それは視聴者も一緒で訳がわからん状態で1話目が終わったと記憶してる。

 

 記憶を操る技術が発展し、人の記憶を見ることが可能である。記憶の削除から改善まで行えるモラル的にどうなんだってことまで出来る。中でも面白いと思ったアイデアが人の記憶を見るだけでなく人の記憶の作る世界に物理的な意味で体ごと侵入できる。記憶の追体験が可能である。これが現実で可能になればどこまでも便利でそして恐ろしいことだと思った。

 

 本来は女であった者が訳あって男の体に記憶を移した時は、小便の仕方がわからない、女の体の時とは出所が違うあふれ出る性的な欲の対処に困るなどの男女体入れ替えあるあるは仮想世界であるのにリアリティがあって良い演出だった。

 逆パターンで男から女の体に移った者の場合には、生涯男の身である私には何のことやらよくわからない女特有の「あの日」なる日の到来のために体調を崩すシーンもあった。

 

 ストーリー後半に差し掛かるあたりまで出て来たバニラというジャイアンみたいな乱暴なキャラがいる。悪者として出てきたけどカイバがクロニコという可愛い女の子の体に移ってからはクロニコの姿に惚れて仲間になってくれる。惚れた女に一途で母ちゃん想いな良い奴と後で判明する。最後までカイバを助けて死んでいったのにはちょっと泣けた。

 

 このアニメは従来のアニメに対して抱く「面白い」「つまらない」の評価だけでは済まされない、評価をするのもやっかいな作品になっている。個人的な面白い、つまらないの枠組みに捕らわれない何ともいえない作品であった。ただ、独特な雰囲気を楽しみ、独特の世界観に浸ることを楽しめた作品ではあった。

 まぁ、色々言ったけどぶっちゃけ一言のみで感想を言うと「よくわかんない。」で終わらせてしまう作品である。