こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

韻文小説の金字塔らしい「オネーギン」

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 プーシキン作の「オネーギン」。

 オネエではなく登場人物のエヴゲーニィ・オネーギンという青年の名がタイトルとなっている。

 

 

 遺産で遊び暮らすオネーギンが田舎娘のタチヤーナに惚れられて恋文を貰うのだが、オネーギンは他に類を見ない特殊な振り方をして彼女の愛を受け入れなかった。振るついでに色恋についての長くてうるさい説教をするオネーギンの姿は印象的であった。

 それから数年経って美しく成長した人妻のタチヤーナに今度はオネーギンが惚れこむがオネーギンの想いは受け入れられることは無かった。男女の愛の擦れ違い、恋愛における価値観の相違を特殊なテンポで書き上げている。逃がした魚は大きかったの意味がわかる小説。内容はこんな具合のものである。

 

 中編小説にあたるくらいの長さだと思うが、長い割りに起こった出来事の少ない話である。

 それなのになんで長くなっているかと言うとこの物語の語り手がオネーギンを中心に話を進める中で、自分自身の事を語ったり、世の中に対する評論をしたりするからだ。冗談調に語る時もあり、時には語りが暴走気味になって話が遠くへそれることもある。この語りのテンションが面白くもあり、邪魔に思う時もあるから不思議。

そういう訳で普通の小説とは毛色が違った文章表現を用いての話の進め方になるので最初はなんだか読むのに慣れなかった。

 

 読み終わって、急に話が終わったなと思った。

 

 この本の面白さはストーリー自体にあるのでは無く、従来の小説には用いらない韻文という独特のテンポの文体にある。読み手を選ぶ表現ではあると思う。

 

 それにしても少女期のタチヤーナの純真可憐なるヒロイン然とした振る舞いはすばらしい。

 

オネーギン (岩波文庫 赤604-1)

オネーギン (岩波文庫 赤604-1)

 

 

 愛は掴める内に掴んでおかないとね。