こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

三文以上の価値ある作品「三文オペラ」

 

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 ブレヒト作の戯曲「三文オペラ」。

 

 乞食と盗賊と娼婦の栄えるというなんともダークな要素の揃ったロンドンの貧民街を舞台として、お尋ね者の盗賊ボス メッキースの大捕り物を描く内容となっている。

 

 タイトルに「三文」と付く通り、気品溢れる従来のオペラと違って野蛮にして猥雑な内容となっている。だが、それが良い。

 話の所々に痛烈な社会批判が読み取られ、なんとも風刺がかった作品となっていた。ピーチャム夫妻が詩にのせて、人間は誰しも善良でいたいと思うものだが社会の仕組みがそれを許さないと指摘したのは印象的であった。

 

 主な登場人物のメッキースとその子分達、ピーチャム夫妻などがとにかく口が悪く、愉快に皮肉めいた諧謔を飛ばすのが印象的であった。

 

 ピーチャム夫妻が手掛ける事業が乞食商会という設定が斬新で不謹慎。乞食のネットワークを構築し、乞食にも縄張りがあることがわかる。ピーチャムが乞食の元締めという日常では聞いたことのない肩書きを持っているのが印象的であった。乞食がビジネスになっている社会なんて嫌だけどね。

 

 盗賊メッキースはピーチャムの娘ポリーと勝手に結婚してしまい、これに怒った父ピーチャムは何とかして娘を取り返し、メッキースをお縄にかけようとする。

 なんと警視総監のブラウンと盗賊のメッキースには親友という繋がりあった。人情からブラウンがメッキース捕縛に乗り気でないのに対して、ピーチャムはメッキースを捕まえないと近く迫る女王の戴冠式に山程の乞食共を向かわせてパレードを滅茶苦茶にしてやると未だかつて類をみない脅しをかける。なんだコレ?っていう特殊な脅しの術に笑えた。

 

 メッキースは早くから警察の追っ手が来ることを知っていたのに娼婦通いの癖が抜けず何時までも近場をうろついていたためにあっさり捕まってしまう。しかも2度。

 一回逃げて、また簡単に捕まっている。どちらも訪ねた先の娼婦に密告されてのことである。女好きな男は仕方無いんだなと呆れてしまう展開であった。

 

 どんなに気品漂う男性にアプローチをかけられてもなぜか最後は「いや」の一言で関係が終わってしまう一見身持ちの硬そうなポリーが、メッキースに対しては粗暴な盗賊なのに何故か「いや」とは言えない。危険な者に不思議と引かれてしまう乙女の心理を吐露する場面が印象的であった。

 

 警察に捕らえられたメッキースの絞首刑が執行される直前に、女王の特例が言い渡されメッキースは無罪放免となった。この流れについては本来こんな結末はありえないが物語ゆえ良しとしようというメタフィクション的な語りが行われて物語は幕を閉じた。

 

 常にドタバタとして軽快にしてコミカルな楽しい戯曲であった。

 

三文オペラ (光文社古典新訳文庫)

三文オペラ (光文社古典新訳文庫)

 

 

  三文の価値しかない人生なんて絶対に送るんじゃないぜ。