こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

スポ根じゃなくてもいいじゃない「おおきく振りかぶって」

 「おおきく振りかぶって」は2007年に放送された全25話のテレビアニメである。更にテレビ未放送エピソードが1話存在する。

 

 先日アニメ放送開始10周年を記念して発売したBD-BOXを一気見した。これはマジに面白い。野球を題材にした漫画やアニメはだいたい面白いのだが、本作は私が今までに楽しんできた野球ものとは作風が異なる変わり種野球アニメであった。

 

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 軟式野球部から公式野球部になって一年目で、部員も一年生が10名のみの西浦高校野球部が野球でテッペンを目指すという内容の野球アニメである。

 

 アストロ球団とか侍ジャイアンツのようなただただ暑苦しい所謂スポ根モノで育って来た私からすると、この作品のスポーツものというジャンルを主に置きながらも、選手達のまったりとした日常や試合以外での会話シーンなどが目立つ作品は何だか新しいと思えた。野球をする西浦高校の皆を見ては、ただ楽しそうと思うだけである。

 

 たくさんある派手な野球作品と比べるとキャラの見た目は皆爽やかで野球アニメにしてはキャラ絵が地味というか濃くはない感じである。イメージとして近しい作品なら「キャプテン」を思い浮かべる。

 しかし、この作品、女子キャラが可愛い。巨乳の溌剌とした女監督の百枝まりあとかすごく好き。甘夏柑を強靭な握力で絞って果汁100パーセントジュースをその場で手作りするシーンが印象的。この通称モモカンという監督は一番好きなキャラである。監督をするだけあって、野球のルールから戦術まで豊富な知識を有しているし、多感で調子こきがちな高校生男子相手にきっちりした指導ぶりを発揮して選手をまとめている。人身掌握術に長ける凄腕の監督振りには感心した。

 純とした感じのマネージャー篠岡も可愛い。マネージャー役の福圓美里の声が可愛い

 男ばかりの暑苦しいスポーツものでも、こうして脇に女子キャラを置いておけば清涼剤の役割りを果たしてくれるので、やはりスポーツものにヒロインを置くってことは大事。

 

 ド派手な演出もなく、かなりリアル路線なのが印象的な作品である。昭和作品に良く見られたイカれたハードトレーニングなんかは一切ない。中でも印象的なのは西浦高校のトレーニングに心理学を取り入れたメニューがあること。パブロフの犬よろしく条件付けをすることで人は欠点の緩和あるいは克服が出来るという、理論に基づいた特殊なトレーニングをしている。他に紙にランダムで並べられた数字を1から順に見つけて数得ることで動体視力を鍛えるなど野球作品はしゃぶり尽くせど、実際の野球の練習も試合も知らない私には目から鱗な知識がばんばん飛び出した。

 ハリスタ、ファミスタパワプロなどの野球ゲームで特にコマンド入力なしでピッチャーに投げさせたら球種がストレートになるので、ただ投げれば全部ストレートなのだと思っていたら、キャッチャーの阿部君の説明によるとストレートとはバックスピンをかけて投げる立派な変化球とのことである。ストレートって変化球なんだ、という今まで知らなかったことがわかった。結構勉強になるアニメであった。

 

 どうしても暑苦しいが付きまとう野球漫画の主人公にしては珍しいキャラ設定なのが主人公の投手三橋である。コイツがまじでなよなよしたコミュ症モヤシ野郎で、もし私と同級生だったらきっとぶっ飛ばしている。阿部君がよくぶん殴らずに耐えていると感心した。三橋が泣き虫のくせにマウンドで投げるということへの執着が人一倍強いのはピッチャーならではの性なのかもしれない。ハキハキとした喋りをするイメージのある代永翼がどもったり、はっきりした物言いをしないキャラを演じたのも印象的であった。

 作戦指揮を行う百枝監督やゲームメイクを行う阿部君が、試合相手の心理を読み取った上でのものすごく理論づけされた作戦を頭で考えているのがすごいと思った。これは野球プレイヤーに失礼かもしれないが、私は学校の授業でくらいしか野球をやったことがないが、打つも投げるもただ何となくで行っていた。結局は力任せな競技なのかな、とくらいしか考えてなかったが、本作では野球の試合においての各々の人物の心理描写が細かく行われている。野球で心理合戦が展開されるとは意外であった。

 阿部君がプレイしながらめちゃめちゃ頭で作戦を練っているのですごい。阿部君を演じる中村悠一のセリフがすごく多いと感じた。ノリと勢い、後は熱で全て押し切る熱血漫画とは一線を画す、グラウンド上でのかなり緻密に練られた熱い駆け引きのストーリーを楽しめた。

 野球を行う上での心理描写に長ける作品だけあって、相手チーム、敗北を喫した側にも寄り添った描写が印象的であった。熱いドラマにヒューマンストーリー要素も感じるので、たかがスポーツとか言ってられないくらいにはまった作品であった。

 

 

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 いつも思うが、実際の野球は興味ないのにどうしてこうも野球アニメというのは面白いのだろうか。