こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

芥川が世を去る前に残したメッセージ「河童・戯作三昧」

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 芥川龍之介の短編集を手に取った。

 水木しげるの「河童の三平」が大好きなため、同じく「河童」というタイトルに目を引かれて読むことにしたのだ。

 芥川が自殺する前の10年間に発表された作品が計10篇収録されている。

 

 まず、「戯作三昧」。戯作は俗世間で広く楽しまれる読み物のことらしい。

 本作は曲亭馬琴を主人公にし、芸術作家の孤独や悩みを芥川自身の経験も含めて描いた一作となっている。馬琴と言えば代表作が「南総里見八犬伝」で、これは結構前にタッキーこと滝沢秀明主演でドラマ化したのを見たことを思い出す。

 最初のシーンで馬琴は銭湯にいるのだが、湯に利用者の脂が浮いてるという表現があって、素直に汚いと思った。

 銭湯の客の中には馬琴の作品を褒める者もいれば、逆にディスりまくる奴もいた。

 低俗な大衆にわかりっこない芸術なのだと思っても、やはり酷評されることを心の隅では気にしている馬琴の姿が描かれている。作家先生ともあろう者が小せぇなぁと思わせながらも素直な人間性が現れていると安心もする。とりあえず、周りの目を気にしては何かとストレスが溜まる職業なのだとわかった。嫁にも碌な商売じゃない的なことを言われて理解されていないので馬琴がちょっと可哀想。

 しかし、最後は馬琴の可愛がる孫との心温まる会話で幕を閉じる。この孫の話でそれまで冴えない感じで描かれた馬琴も救われることになる。

 ちょっと共感できた部分は、馬琴は自分にとっては先輩である過去の文豪達は尊敬しても同世代の連中はとりあえず軽蔑の対象にしているという点。私も既に死者となった先人からは学びを得ようとするのだが、生きている人に対しては、まだ生きているってだけで何か安っぽい感じがして、学びを得ようとすることを怠ってしまう。何故だろう。

 

 「河童」には著者がそろそろ自殺することを読み取れる部分があったりなかったりする。とりあえず、他の作品と比べてクレイジーというかなんか病んでる感が出てる。

 本作は、世にも不思議な河童の世界に迷い込んだことがあると言う精神病院の入院患者の語る物語である。精神病の人の話ってあたりでもうなんか病んでるので本当か幻想を見ての話なのか怪しい。

 山中で河童を追いかけている間に河童の世界に迷い込んでしまった主人公はそこで色んな河童にあう。名前がバッグ、チャック、ゲエル、ラップなど西洋的ネーミングとなっている。河童にも漁師、医者、社長、学生などそれぞれ職業や肩書きがちゃんとある点はコミカル。

 発情した雌河童が、狂ったように雄河童を追いかけるとか、ストを起こしたら殺して肉にして食うなどのブラックな設定が印象的であった。河童世界の恋愛観については、不健全と健全を掛け合わせることで悪遺伝を断つという半分納得の行く思想が広まっている。自由恋愛をする河童もいる。ここら辺は何か風刺がかっている。

 詩人の河童トックが自殺して、その後交霊術で色々話を聞くというオカルト要素も混じった色モノ小説になった。

 主人公は河童の世界から人間の世界に帰って来てからは河童の方が人間よりもずっと清潔だと思うようになりいつしか人間を毛嫌いするようになる。河童の世界を通じて人間の愚かさ、社会悪を指摘したようなメッセージ性のある短編であった。

 ところどころ小難しく、哲学者マッグの話などはなんか深いことを言ってるようだが、全ては理解しきれない。

 ファンタジーを絡めた社会風刺という面白い手法は評価できる。

 

河童・戯作三昧 (角川文庫 あ 2-8)

河童・戯作三昧 (角川文庫 あ 2-8)

 

 

 やっぱり河童ってロマンがあるよね。