こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

世俗を越えて辿りつく悟りの境地「真理先生」

 

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 武者小路実篤の小説「真理先生」を手に取った。

 

 武者小路の作品なら「愛と死」「友情」を以前に読んだことがあったが、この「真理先生」はそれらとはまた毛色が違う、明るくハッピーなお話であった。そして人生教訓がたっぷり詰まった本であるが、この教訓は響かない人には全く響かない物でもあるとも思う。なんせ真理先生は真の理を説く者、そこらの俗人には「何言ってるのかわからない」以上の感想を絞り出すことが出来ないのもまた確かなことであろう。人を選ぶ本かもしれないが、私には大変共感できる良き一冊であった。登場人物の多く、中でもやはり心真理先生には非常に好感を持った。

 

 登場する真理先生、馬鹿一と白雲子の二人の画家、白雲子の弟の書家泰山などの世間離れした生活と思想を持つ個性的人物の元を語り手である山中と言う人物が渡り歩き、各人物との会話劇を主にしてストーリーが展開する。

 

 「善人とはお人好しではなく自分の理想や信念に忠実な努力家」と書かれている。この言葉が印象的で胸に刺さるものがある。この言葉通りの生き方をする登場人物達が輝く一冊である。

 

 序盤での「人を殺していい時があるか」というお題に対して真理先生が行った問答はあっぱれな内容であった。

 この問答は先日見た西尾維新原作のOVAクビキリサイクル」の作中でもネタが引用されていた。ここに目をつけて自分の作品にもその要素を取り込んだのはさすが西尾維新先生であると言えよう。

 

 

 キャラはクセのある奴が多いが、中でも印象的なのは「いしかき先生」の通り名を持つ石ばかり描いている画家の馬鹿一である。この人物が実に活き活きと描かれていて、タイトルになっている真理先生を食う勢いで読み手に印象を与える。それにしても名前どうした?って思う。

 石を描くと思えば次は人形を描き始め、しかも人形と会話をしたりと謎な一面も見せる。最終的には女性モデルを呼んで人物画もはじめる。馬鹿一の良い所は俗世のことなど何のそので自己を開拓し芸術を突き詰めいていくストイックな姿勢である。他の芸術家達も確固たる意志を持ち、自分の道を突き進み脱俗の境地を踏んだ真理に生きる者達である。

 私は私が信じる俗悪に染まらない事を心情に生きているので、彼らの真っ直ぐな生き方は素直に気持ち良く格好の良いものだと思う。

 

 ぶらぶらと皆の家を渡り歩く山中が偶然にも皆に幸福を運ぶアシストを行い、最後は万事ハッピーで終わるのも良かった。

 

 女性の登場人物で絵のモデルの愛子、杉子も良い印象の人物であった。モデルの時は脱衣を行うのでハラハラものである。

 

 そして、終幕を飾る最後の場面は真理先生が真理を説く大演説を行う。小難しいことも言っているように聞こえるが、まさに真理を抉った深い言葉を連ねていた。

 

 日々の社会生活で精神を汚している現代人こそ読むが相応しい一冊だと思える。これを読んで世間ずれしたジジイの綺麗事、ただの理想論という感想で終わるも良し、私のように心震わせてありがたい一冊であったと感謝して図書館に返却するも良しである。

 

真理先生 (新潮文庫)

真理先生 (新潮文庫)

 

 

 私もすっかり真理先生信者。