「白鯨伝説」は1997年4月~1999年5月にかけて放送された全26話のアニメ。
26話の放送に2年もかけているのは、制作が間に合わなかったり、途中で制作会社が倒産して一旦打ち切りになるなどの困難に見舞われたからである。時間がかかってもよくぞ最後までやりきったと言いたい。
まだNHKが今よりも元気だった時代に存在したBS-2というチャンネルで放送していた。
メルヴィルの有名な長編小説「白鯨」を下敷きにしてSF要素たっぷりのオリジナルものに仕上げている。
有名な「白鯨」は、多くのアニメやゲームのアイデアとして取り入れられている。最近では「バケモノの子」や「Re:ゼロから始める異世界生活」にも白鯨が登場している。名作だし皆大好きなんだな。
内容
人類の宇宙進出が確立した時代、人々は次々と宇宙へ出て行ったわけである。そんな文明の発展による困ったことが、宇宙に漂う廃宇宙船が増えたこと。
廃宇宙船は「鯨」と呼ばれ、それの回収業を行う者を「鯨取り」と呼ぶ。主人公エイハブ船長率いる「エイハブ鯨捕りカンパニー」は業界で有名な会社である。
この設定から、地球でも宇宙でも人がたくさんいればゴミ問題が浮き上がるのだなと思った。
エイハブの会社で働かせてほしいとやって来た少年ラッキーは、実は少年ではなく少女であった。男しか採らないという社の方針を前にして、性別を偽ってまでやってきたラッキーの目的は、破壊兵器「白鯨」の魔の手から故郷の惑星モアドを守るため助けを呼ぶことであった。
エイハブはラッキーの依頼を受け、途中でアンドロイドのデュウを仲間にしてモアドで白鯨と闘う。
男と思ったら実は女だったってパターンは一つの萌え。
ラッキーが仲間を連れて故郷へ帰って強敵を倒すという話の流れは「ガンバの冒険」と設定が似ていると思った。
感想
鯨取りの設定は面白い。ガンダムにみたいに宇宙服を着るでもなく、服を特殊なガスでコーティングして宇宙でも楽々動けるようになるシステムもすごい。息をする時は小さなカプセルを口に噛んで宇宙に出ている。しかし、鯨取りの仕事をするのは序盤わずかで後は、モアドに下りて敵とドンパチやるみたいな流れである。
こちら側の使う武器もビームソードとか電子ムチとかSFぽいアイテムが揃っている。
エイハブ鯨取りカンパニーの仲間達が相当に愉快な連中で、急に歌って踊りだす。中盤から後半にかけてはコミカルな会話劇が目立つ。これがちょっとやりすぎていて、特にホワイトハットが寒かったり意味のわからない洒落やギャグを飛ばしすぎている。序盤と比べると皆キャラ崩壊しているような気がした。ホワイトハットは最初はエイハブの仇敵だったのに、気づくとしれっと仲間になっているし、エイハブのことが大好きになっていた。
エイハブ船長がたまに見る、世界観を損なうような野球の夢がちょっと面白い。バッターボックスの左右に3人ずつ立って、バッター計6人でピッチャーと対決する夢が記憶に残る。
モアドに到着してからコバじいさんというじいさんが登場する。コバじいさんはキヨシという名前の「平成イヌ物語バウ」にしか見えない犬を飼っている。このコバじいさんと犬のキヨシの名前ってコバじいさん役の小林清志から採ってきているのではないかと推測できる。
巨漢のババがムラトとの戦闘で死んだ時には、今までのコミカル調から一気に寂しくなってちょっと泣きそうになった。スピードキングがババと麻雀を楽しんでいたのを想いだして泣いている所が可哀想と思って見ていた。しかし、実は仮死状態であっただけでババは死んでなかったので嬉しいようで拍子抜けな感じもした。
敵の女幹部のオハラがSっぽくてセクシーで良かった。こっち側のヒロインの歌姫セイラも可愛いくて良かった。
この監督特有の演出である止め絵の多さが記憶に残る。
メインキャラのエイハブは大塚明夫、ラッキーは水谷優子が演じた。二人は「ブラックジャック」のブラックジャックとピノコのコンビを演じているので、こっちでもこのコンビの芝居が見れて良かった。
鯨取り会社のメンバーが皆おっさんなので、渋いおっさん声に定評がある男性声優が大集合であった。おまけに敵側の強敵アンドロイドムラトは玄田哲章が演じていた。
ラッキー役の水谷優子、アトレ役の新山志保、オハラ役の鶴ひろみと出演声優には既に亡くなられた方が多く、生きていた頃の芝居を懐かしく思って見ていた。
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