こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

美味しいよ!「ミスター味っ子」

 「ミスター味っ子」は1987年~1989年にかけて放送された全99話のテレビアニメである。

 

 当時は珍しかったらしいが、今となってはアニメや漫画でたくさん見られるお料理アニメの決定版である。

 私が毎週楽しみに見ている現在放送中のアニメ「食戟のソーマ 餐ノ皿 遠月列車篇」なんかも味っ子の魂を受け継いでいる作品だと言えよう。

 同じくお料理アニメの「美味しんぼ」が近年BD化されたので、そろそろ味っ子も来るかと想っていたところ、2017年、2018年にかけて2つのBD-BOXに分けて無事発売された。こいつは嬉しい。次は「中華一番!」「焼きたて!!ジャぱん」あたりもBD化してほしいものだ。

 

 このアニメは15年くらい前に再放送されていたのを見て楽しんでいた。記憶は薄れてはいたものの、やたらとテンションの高いお料理バトルをするのと、主人公のお母さんが可愛かったということだけは覚えていた。今回改めてBDで全話視聴したのだが、なかなか味わいある面白い作品だった。あと、主人公の味吉陽一を演じた声優高山みなみの初レギュラー作品である。さすがに声が若い。

 

 それにしても、日本で発売するBDってなぜあんなにアホみたいに高いんだって想う(私の金銭感覚ではね)。

 北米版とかだったらクソ安いじゃないか。

 

 

ミスター味っ子 いただきますBOX [Blu-ray]

 

内容

 主人公の「ミスター味っ子」こと味吉陽一は、亡き父の残したこじんまりとした小さな大衆食堂「日之出食堂」で料理を振舞う少年である。若作りがすごい母が切り盛りしているのだが、陽一の方が料理が上手なので、実際の所は彼がメインシェフになっている。

 そこへ料理業界の重鎮にして味皇料理会のボス「味皇」こと村田源二郎がカツ丼を食いに来る。陽一は、素人技とは思えない程恐ろしく美味いカツ丼を味皇に食わせた。それがきっかけで陽一は味皇に腕を買われ、以来何かと料理に関する騒ぎに関わることになる。

 店はどうするんだ、というくらいの勢いで、陽一は次々と凄腕の料理人達と料理の腕を競い、努力とアイデアを持ってして料理の「美味さ」を追及していく。料理道を極める中で、陽一はライバル達と熱き友情を育くみ、料理人としてはもちろん、人としても成長していく。陽一が青春を捧げた料理の道を通して、努力、友情、愛情をもお届けする一流エンターテインメント作品となっている。すばらしい。

 

感想

・こだわりのリアクションと表現

 この作品は何かとテンション高め、あるいはヤバめな演出で有名な今川泰宏初監督作品である。

 

 まずは、この作品の一番の武器であり特徴でもあるのが、お料理バトルで用いられる料理を食った時の「美味い」を表現したハイテンションなリアクションである。

 最初は、「斬新、これはこれで新たな美味さの表現の仕方かもしれない」と感心していたのだが、制作側がリアクションにこだわり過ぎて、徐々にファンタジックな内容のリアクションになり、果てには荒唐無稽も甚だしいもはや悪ふざけの領域にも達したかなり面白いことになっていた。

 とんでもないリアクションを繰り出すのは主に味皇のじいさんで「う・ま・い・ぞぉぉぉ~!」の雄たけびを上げるとニュータイプの魂の世界みたいなのが開けて、何処にでも行き何にでもなることができる。酷いのが「巨大化して内側から大阪城を破壊する」「入院していたのに急に元気になって車椅子で階段を駆け上がる」とかである。

 料理は味わい楽しむものなので、その観点から言うとこのリアクションでそれを見事に現している。

 他にも焼き鳥を食ったら口から鶏が出てくるとか、豆腐を食ったら顔がゴムみたにはねるとかが面白かった。

 毎回の料理を食った後のリアクションが楽しみであった。

 

 個人的に最も衝撃を受けた独特な演出が、美味い駅弁勝負をする回で、弁当のおかずが擬人化してプロレスを始めるというものであった。もはやギャグであった。おかずの鮭が「サーモン・豊作」というどこかの野球選手みたいなリングネームで登場した時には、見ながら食っていた林檎を吐いてしまった。

 

 ・パロディにネタものが豊富

 味皇のリアクションもそうだが、本編を更に盛り上げるのがパロネタの存在にある。当時のトレンドをねらったところもあったが、古いものでは「金色夜叉」のネタが一瞬使われたりと、当時からしても古すぎなネタも盛り込まれている。どう見てもデューク東郷を真似ているとしか思えない寿司職人がいたりもした。

 

 作品中盤では、「味皇グループ」と対立する「味将軍グループ」から最強料理人軍団「味将軍七包丁」が送り込まれる。メンバーは7人いるんだけど、こいつらがいずれもネタものキャラであった。

 不良坊主に、侍に、大人2人を肩に乗せることが出来るくらいに巨大な寿司職人といろいろいる。

 中でも酷いのは「ロボコック・サリー」。絶対に見た目がロボ・コップだし、コイツが出てくる時はなんかそれっぽいBGMがかかる。

 七包丁の一人大石老師の弟子達をまとめて「瀬戸内少年料理団」と呼び、これは明からに映画「瀬戸内少年野球団」をパクっていると想われる。みんな野球服を着ていたし。ネタすぎる。

 

 これは映画も見たから絶対そうだと言えるが、映画「ニッポン無責任時代」主演の植木等の無責任ぷりを真似た「ウエッキー等」というのが出てくる。これは笑った。

 

 ネタで色々と工夫している点で印象的なのは、料理ものだけに「味」にまつわる用語が多く登場する。

味皇」「味将軍」「味仙人」「味頭巾」の重要人物をはじめ、「味勝負」「味試し」「味探し」などの言葉もしばしば登場する。聞いただけでは何だか分からないものばかり。

 

 後は、本編には関わらないがレギュラーで登場し、陽一達が作るアイデア料理の解説をしてくれるブラボーオジサンというキャラが面白くて好きだった。料理に関する「通」な情報を毎回教えてくれる。 

 

・ヒロインについて 

 恒例のヒロインチェックです。

 主人公陽一の幼馴染で同級生の「山岡みつ子」がメインヒロインのポジションと思える。弟のしげるとセットでずっとレギュラーキャラとして登場する。しかし、びっくりなのが、なんとこの子、原作にいないアニメオリジナルキャラらしい。となると味っ子の原作は女子いなさすぎではないか。

 みつ子がこのまま陽一の彼女になる的な流れになるのに、原作では陽一は他の女と結婚しているらしい。

 

 やはり個人的には陽一の母「味良法子」が一番可愛い。なんか回が進むごとにエロさを増している。みつ子がいても真のヒロインはお母さんだと想っていた。あとで原作にみつ子がいないことを知ると、それならメインヒロインをおしのける勢いで魅力を放つこのお母さんの存在には納得が行く。みつ子抜きなら、原作で一番出番がくる女性キャラはお母さんだったわけだ。たまにあるお母さんが一番可愛いアニメの一つだな(「ハレグゥ」とかがそうだった)。それにしても最終回あたりで、陽一のお母さんと丸山シェフの関係があのように進むとは想わなかった。

 

  最終的には準レギュラーになるコオロギと、なんと陽一に一回勝ってしまった章吉というキャラもなかなか良かった。コオロギは陽一のライバル堺一馬の助手として初期から登場していたが、どう見てもチビな男の子だったのだが、後に成長してはっきり女の子とわかる。章吉の方も登場回の最初は釣り人風な格好をして男のふりをしているのだが、後になって実は素敵な女の子とわかる。

 この男と見せかけて、実は女の子でしたというパターンは「オレは女だ」のセリフで有名な「うる星やつら」の藤波竜之介以来萌えてしまう。

 

 味皇の秘書的役割キャラの垂目さんの婚約者が意外にも可愛かったのも印象的だった。

 

・最終回について 

 楽しくてテンションが高い本作なのだが、最終回が意外にも静かに終わった。悪くないエンドであったと想うが、それまでの味っ子らしくない終わり方でもあった。

 

 旅行くばあさんの飯を食った味皇のじいさんが、その美味さに記憶を無くす。名だたる料理人達が、もっとうまいものを食わせれば記憶が戻ると張り切って味皇に飯を食わせにやって来る。だが、どれを食っても味皇の記憶は戻らない。味皇の記憶を取り戻せなかった者達は、真の美味さを求めて次々と旅立っていくという予想も出来ない展開だった。

 そんな事件の中で、丸山シェフが陽一の母にプロポーズして、イタリアに連れて行こうとする。そのことを知っていながら陽一に黙っていたしげるは、陽一にガチ切れされて、それきっかけで交通事故にあって死に掛ける。おまけに謎の人物「味頭巾」の正体が味皇と分かったことのショックで、一馬の幼き頃のトラウマが目覚める。という風にかなり暗くてシリアスな流れになる。でも味皇が料理を食って記憶を無くし、それを取り戻すにも料理を食わせるという、記憶喪失のきっかけとしても治療としてもどうなんだって展開が引っかかってギャグなのかシリアスなのか分かりづらい感もあった。

 結局ラストでは、料理には味もそうだが、食べてくれる人への愛情も大事的な良いことを言って綺麗にまとまった。うん、その通り。

 

・まとめ

 古いアニメだが、「食」に対する情熱を描いたことについては現在見ても、その熱の強さは色あせない作品である。

 裕福に慣れたことで「食」に対しての想いが希薄となった現代人にこそ見てほしいものだ。昨日私が行った定職屋では、新聞や漫画を読みながら飯を食っている中年小太リーマンがちらほら見られた。彼らにとって食事は娯楽ではなく、車の給油のごとく、ただ口に放り込むだけの栄養摂取になっているのではないか。なんとなしに「ながら」で食っていては、真の味がわからないであろう。

 私はかつて死ぬ程ひもじい思いをしたことがある。それも関係してのことだが、仮にそんな体験がなくとも私にとって「食」とはかけがえのない幸福な時間であったし、何より美味い物を食うことが心からの楽しみであった。

 私は、「食」に対してルネッサンスよろしくな情熱を注ぐこのアニメの存在を日本の誇りだと想う。私のこの手はいつも美味しい何かを探して燃えている。

 

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 OP曲とED曲も最高であった。

 

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