こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

姦通事件から破滅へ「ボヴァリー夫人」

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 フローベール作「ボヴァリー夫人」を読んだ。

 不倫、浮気を取り扱いながらも、滑らかな文体と卓越したワードセンスによって文学作品として高い地位を得ている作品である。

 二十才は越えていないと、忍耐的に読めないであろうと想った。

 かなりの長編である。

 この話を魂込めて描いたフローベールは「ボヴァリー夫人は私だ」という、そのへんの事情を詳しく知らない人が聞いたら謎としか想わない名言を残してる。

 

 この本がどういう話かというと、田舎医者シャルル・ボヴァリーの嫁エンマが夫の目を盗んで二人の男と肉体関係を持ち、その過程で莫大な借金を作り、そのあげく服毒死するというものである。身内で起こると洒落にならない事件である。

 あれだけ長い小説だが、まとめるとこんな感じ。内容を数文字で簡単に書けるものだから、上記の内容全てが裏表紙に書かれていた。ネタばれもいいところであった。

 

 読む前からオチまでわかっているのだが、その上で読んでもなかなか味わい深い一冊だった。筋よりも主人公でありヒロインでもあるエンマの心理状況を辿っていくのが個人的に楽しめる要素であった。

 

 タイトルのボヴァリー夫人はエンマを指す。エンマはシャルルの二番目の嫁で、初代ボヴァリー夫人は最初の30ページくらいで死ぬ。

 ヒロインエンマは、世間知らずの夢見すぎ女である。結婚前には寄宿生の神学校に通い、あとは父親の元でのんびり暮らしていた。シャルルの一人目の嫁が死んで程なくしてエンマと恋仲になる。

 若きエンマは小説の世界に没頭し、恋愛や結婚にかなり夢を見ている。現実を知らないお嬢様が理想を膨らませ過ぎ、いざ結婚生活を始めると単調な暮らしに早々に飽き飽きする。一度貴族のパーティーに参加すると、その煌びやかな世界に魅せられる。あれと比べて自分の毎日は何なんだ、と失望する。

 こんなはずではなかったとあれこれと考える内に結婚生活どころか夫への愛も冷め、新たな恋に走ろうとする。

 この辺りで既に好感はもてない女であると想った。

 

 エンマは最初にレオンという男と引かれあうが男女関係には至らず、後にレオンは仕事のために遠くに越していく。次に出会うロドルフとは完璧なる不倫関係になる。この時にエンマが品物を貢ぐわ貢ぐわで、完全に貢ぎ女になっていた。いつも愛の言葉を欲しがる面倒臭い一面を見せる。エンマが意外と重い女だと分かった。

 シャルルを捨てて駆け落ちをしようとロドルフに提案するが、エンマを面倒臭がったロドルフは当日になって約束をすっぽかして姿を暗ます。ロドルフに見捨てられたショックでエンマは寝込んでしまう。

 ショックが引いた時くらいにレオンと再会して今度はレオンと関係を結ぶ。

 

 シャルルはずっとエンマを愛しているのに、エンマは早い段階からシャルルを嫌悪し軽蔑している。シャルルが可哀想だと想った。しかしエンマの浮気に気づかないシャルルも間抜けだと想う。

 エンマが夫に冷めて、別の愛を求めていくが、その先でも結果幸福になれないし、いつも満足していないように思えた。こういう他人に依存しないと幸福を得られない夢見すぎな女性は面倒臭いと想った。仕事もせずに家で暇しているから色々と理想を膨らまし、結果不貞をはたらくことになるんだなと想った。差別的意見かもしれないが、暇をもてあました人妻は碌なことを考えないとも思ってしまった。

 

 エンマは借金を返すために奔走するが、額が膨らみすぎて無理であった。結果家は差し押さえになった。エンマが金を使いまくっていることを知らないシャルルは、エンマの死後に責任を取らないといけないからたまったものではないと想う。エンマの死後、シャルルも心を病んで死んでしまう。ラスト数行にあっさり書かれているが、その後一人残った子供のベルトは親戚中をたらいまわしにされて苦労多き人生を歩んだとあった。

 ただただ破滅の道を辿り、悲しい最後だった。

 

 それと話のところどころでずっと出てくる薬剤師のオメーがうざかった。

 

 それにしても不倫ものでは人の心の弱さや愚かさがよく分かる。また愛なんてものの確実性について色々と考えさせられる。愛も幻想も同じことなのか、それともはっきりと区別ができるのか、それは個人で全く見解が異なるであろう。愛はラビリンスとはよく言ったものである。簡単には紐解けない。

 

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

 

  

 表紙絵が何かエロくて良いよね。