こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

アホすぎる冒険がとても面白い「ドン・キホーテ(前篇)」

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 「ドン・キホーテ」はスペインの作家セルバンテスが描いたとんでもなく長い冒険もの小説である。

 

 「ドン・キホーテ」なんていう激安ショップがあるが、小説の「ドン・キホーテ」を知る奴は一体何人いるのだろうか。

 

 この物語は前篇だけで文庫本3冊分、後篇も同じくで合わせて6冊もある。

 

 長い長いこの物語の内容は、機知に富む遍歴の騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャが、世の不正を正し、おまけに愛しのお姫様ドゥルシネーア・デル・トボーソの美しさを世に知らしめるために旅に出るというものである。

 しかし詳しいことを言うと、この筋は嘘になるの。それというのがドン・キホーテの本名はアロンソ・キハーノといい、騎士ではなく騎士道物語オタクの50歳過ぎの郷士なのである。

 初老のおっさんキハーノは騎士道を題材にした本を引く程に読み込み、それに憧れ、いつしか自分も騎士と思い込んで愛馬ロシナンテに跨って冒険の旅に出るのである。現代ではこれを行き過ぎた中二病と言うのであろう。登場人物は皆ドン・キホーテのことを狂人や気違い扱いして笑うか引くかのどちらかの態度をとる。

 

 冒険のお供として旅に同行するおっさんのサンチョ・パンサドン・キホーテ程ではないものの、ドン・キホーテと旅を共にすることで毒されて中二病の症状が進んでしまう。

 

 ドン・キホーテの想い人のドゥルシネーアは彼が百姓娘をヒントに作り出したあくまで空想の超絶美女である。やたらと名前が出るが架空の人物である。

 

 ドン・キホーテ中二病は徹底的に磨き上げられたもので、風車小屋を怪物と間違って突っ込んだり、遠くに見える二つの羊の群れを二つの軍が戦闘をしていると想って突っ込んだりと、とにかくイカれている。そして、その先でほぼ痛い目にあう。

 床屋から強奪した金タライをマンブリーノの兜と言いはるのは病気だと想った。

 

 主人に痛めつけられる少年をドン・キホーテが中途半端に助けたため、少年はかえって主人からの逆襲を受けることになる。この事でドン・キホーテは少年に恨みを言われるという冴えない結果に終わる。 

 泊まった宿を城と言い張り、おまけに騎士は宿泊代を払わないと言い張るものだからドン・キホーテもお供のサンチョも酷い目にあったりする。

 縄で繋がれた罪人を可哀想と思い、罪人を解放したところ、逃がしてやった罪人に酷い目に合わされ、政府からは逃亡をの手引きをしたお尋ね者扱いされるはめになる。ドン・キホーテはやがて追っ手に迫られるが「狂人を捕らえても裁けない」という結果になり、捕まることは避けることができた。

 あとは、商人にボコボコにされるなどなど特に何の功績もあげず、日々中二病をこじらせるばかりで、確実に世の皆さんと身内に迷惑をかけている。

 

 これだけ長い小説の中でドン・キホーテとサンチョがずっとバカをやっている愉快な物語である。

 キャラクター、語り手による一文が長い独特な言い周しの語りも印象的であった。そして登場人物は何れも饒舌で、紙なのに「こいつらうるさい」と想ってしまう始末である。

 これだけ豊かな文章表現を用いて作品の題材が陳腐というかコミカルすぎるので、そのギャップも面白い。

 メタ・フィクションもありまくりな作品である。

 正直下らない話なのにドン・キホーテのキャラクター性と、それを更に際立たせる語りの上手さに面白みを感じて読みふけってしまった。

  

 主役はドン・キホーテだが、途中で登場する人物の長い身の上話に、宿で見つけた物語と関係ない作中作「愚かな物好きの話」を司祭が朗読するなど挿話も多々挟んで、結局何なんだこれはと想わせるすごい話になっていた。

 

 この「愚かな物好きの話」は結構面白かった。

 妻がどこまで貞淑かを確かめるために、夫が家を留守にして代わりに親友の男性を家に住ませる。そこで妻と親友の間に何も起こらなければ妻の貞淑さの証明になるという、やろうと想った心理が謎な実験話を描いている。

 結果、嫁と親友が出来てしまい、駆け落ちしてしまう。後に三人とも体調をくずして早くに死ぬという話だった。これといって教訓を得られた話でもないが、三角関係とか不倫をテーマにしたものが好きなので楽しめた。

 

 クセがありすぎる冒険小説だった。

 現代には特に何も起こらない日常ギャグライトノベルなんかが結構あるけど、それの大昔の先輩作品がこれだと想う。取りあえず前篇を読み終えて、ドン・キホーテは旅先でコミカルな事件を起こしてはボコられて中二病の症状を重くしただけであった。

 

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

 

  

ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)

 

 

ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)

 

 

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