こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

光と影を行ったり来たりの危ない青春「エデンの東」

 「エデンの東」は夭折のスーパースタージェームズ・ディーンが主演した1955年公開のアメリカ映画。

 この時代の映画は色々と味わいがあって良い。

 

エデンの東 (字幕版)

 

 第一次世界大戦下である1917年のアメリカが舞台の映画。T型フォード車の流行、レタスの冷凍保存への挑戦がなされることから、色々と手探りして新たな文明を築いていた時代だと分かる。

 

 主人公の青年キャルを中心として牧場を営む父親アダムと兄のアーロンの家族関係を描いている。

 キャルとアーロンは、自分たちの母親は子供を産んで間もなくして死んだと父に聞かされていた。しかしあるきっかけでキャルは、母が生きていて酒場を経営していると知る。冒頭は母と思わしき人物を黙って尾行するキャルの不気味な一面が見られた。最初のシーンではキャルが不気味で何か危なかっしい感じがした。母親の方でも息子と知らないなら、あれは気味悪がるわけだと納得がいく。

 

 最初の内はキャルが何を考えているかワケがわからず、兄のアーロンとその彼女のアブラが氷室でイチャついているのを覗き見して、その後は父親の商売道具である氷を割りまくるという奇行に走った。

 キャルの街への移動手段が走行中の貨物列車に飛び乗るというワイルドな物だったのは印象的だった。

 

 アブラは最初こそキャルを気味悪く想っていたが、後にはキャルが気になりだして、兄から弟に乗り換える的な流れになっていた。お祭りでキャルとアブラが観覧車に乗るシーンはちょっとドキドキした。

 

 父親がレタスの冷凍出荷を行ったが、途中で運ぶ列車がトラブルに会って走れなくなりレタスは溶けてくさってしまう。この時の溶けた氷が水となって貨物から派手に流れまくるシーンは印象的だった。なんかすごい画だった。

 レタスの冷凍出荷に失敗したアダムはかなりの損害を被ることになり、父を心配したキャルは先物取引で大豆を売って一山当てることに成功する。父の損害を取り戻したキャルは父の誕生日に儲けた金を渡すのだが、その儲けは戦争のおかげで物価が動いて成功したものなので戦争で儲けた金など受け取れないと言ってキャルの想いを蹴ってしまう。

 父に愛されていないということを悩んでいたキャルが、愛を持って精一杯父に寄り添ったのにそれを袖にされてしまった。続いてアーロンからも「お前は不良のろくでなし」「アブラに近づくな」的な内容の罵倒を浴びたキャルはプッツンキレてしまう。

 そして家族には秘密にしておかないといけない禁を破ってアーロンを母に会わせにいく。アーロンは天使のように優しいと想像していた母が、酒場経営という軽蔑すべき仕事をしていたことに絶望する。そして発狂して暴れまわり、その日の内にあれほど戦争に反対していたのに自ら徴兵に取られに行った。そして狂ったままに兵隊を送る列車に乗って旅だってしまう。

 それを知った父のアダムはショックで倒れてしまう。ショックが強すぎてアダムは脳卒中になり、まともに動けないし喋れなくなる。

 後半が急転直下の絶望展開になる。

 

 

 キャルが愛に飢えた危ない精神状態だったのはよく分かるが、アーロンもまた安全な状態ではなかったと想うことをアブラがキャルに話している。知らないゆえに母親を神格化していたアーロンはその理想をアブラにかぶせて見ているのではないか的なことをアブラが言っている。アーロンもまた母を恋しく想っていたために精神の穴が出来ていたと分かる。それに戦争に反対するアーロンは戦争が激しいものになって行くのを知ってからは、段々悩ましげな一面を見せるようになっていた。心中穏やかでになかったのであろう。

 

 徴兵を担当する役人が家にやって来て、アダムは仕事の人手が足りなくなるから息子二人を兵隊にはやれないと断るシーンがある。平和な日本だから私生活では見ることのないやり取りだが、これは怖いと想った。こんな役人が家に来て行きたくもない戦争に連れて行かれると想うと、怖いよりも腹が立つ。

 

 まだ若い兄弟は他者から愛を受けるか受けないかで、善になるか悪になるかの光と影を行ったり来たりの敏感な状態だったと想う。あそこで父がキャルを跳ねのけなければ未来は変わっていたのもかもしれない。

 父親に愛を受け入れてもらえなかった時にキャルが言った「パパの愛を買おうとした。でももうパパの愛はいらない」のセリフは印象的だった。

 

 兄のアーロンを戦争に行かす原因を作ったキャルに対して保安官が兄弟殺し話として有名なカインとアベルの一節を暗唱してみせる。あの一言は印象的だし、あれを言われたら心に重いのを食らうことになるだろうなと想った。

 

 最後には寝たきりの父を看病するとことになった青年キャルの暗い青春物語だった。

 ハッピーエンドではないが若者の感情の機微を描いた素晴らしい作品だと想った。

 

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