こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

アラン・ドロンの美しき犯行手口「太陽がいっぱい」

太陽がいっぱい」といえば光GENJIのヒット曲を思い出すが、今回取り上げる「太陽がいっぱい」はアラン・ドロン主演の映画の方。1960年公開、イタリアとフランスの合作映画である。

 

 う~ん、古い。古いけどなかなか魅力たっぷりな作品なので次の世紀にも残していきたい。

 

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内容

 アラン・ドロン演じる貧しい青年トム・リプリーは、アメリカからローマに行って放蕩生活をしている金持ち息子のフィリップを家に連れ帰るよう、フィリップの父から依頼を受ける。

 トムが迎えに行ってもフィリップの放蕩生活は終わるらない。家に帰る気のないフィリップはトムを迷惑がりながらもやりたい放題の生活を続ける。

 銀行で大金を降ろしては好き勝手するフィリップ、対してトムはフィリップを連れ帰ってフィリップの父から報酬をもらわないと貧しいままである。

 フィリップの傍若無人ぶりに怒りを覚えたトムはフィリップを殺し、巧妙な手口でフィリップのふりをして彼の金をものにする。金を手にした後も上手いこと警察の目を掻い潜り、フィリップの女だったマルジュをものにする。

 鮮やかな手口で逃げ切ったと想ったその時、トムの身に追っ手の最後の手が迫る。

 そこで終わるという内容。

 

感想

 犯罪ものだけど、犯罪者のアラン・ドロンの顔と犯行手口が鮮やかにして美しい。そういうわけで嫌悪感なくみることが出来た。実際にテレビニュースでこの人が犯人ですといった顔写真が出たら、申し訳ないけれども「この顔で犯罪したことあるって言われたら、まぁやってそうだなと想うわな~」と納得してしまうパターンがほとんど、しかしこの映画は綺麗なアラン・ドロンが金持ち息子とその友人のデブ男の二人を殺る。このミスマッチ感が良い。

 

 物語序盤で、トムとフィリップが街で遊ぶシーンでは、盲者から杖を買い取って、フィリップが盲者のふりをしてマダムに打つかってナンパするという類を見ない上に不謹慎極まりないナンパ術が描かれた。あれは真似してはいけない。しかしよく思いついたなとも想う。

 

 フィリップが自分勝手で嫌なヤツなのでまぁ殺されても仕方なかったなと想う。貧乏なトムを馬鹿にし、恋人のマルジュまで見下している。マルジュから態度の悪さを指摘されたら、とりあえず抱いてから愛の言葉を囁いて黙らせるというフィリップの作戦はいただけない。

 

 中盤で三人でヨット旅に出た時は、小型ボートにトムを乗せてヨットに戻れなくして「島流しごっこだ」とか言ってた。フィリップのあの態度はひどい。それでトムを島流しにしている間はマルジュと情事に耽り、トムの回収が遅れたためにトムは背中にひどい火傷を追うことになる。あれはトムが殺意を抱くのも分かる。

 

 トムがフォークを使って飯を食う姿を見て、金持ちのフィリップは貧乏人が頑張ってらぁ的な嘲りの意味をこめて「そもそも上品ぶるのが下品だ」と言う。このセリフは印象的だった。

 

 トムがフィリップの銀行口座の情報を握って、いよいよ自分を殺して金を持ち逃げようとしていることに気づいてからの二人の腹の探り合いが印象的だった。ボートの件で自分に殺意を持っただろとフィリップが言うと、トムはもっと前から殺意を抱いていたと返す。ここらへんの冗談なのか、マジなのか牽制しあってる所は何だかおしゃれだった。

 フィリップが意外にも冷静で、自分を殺してもすぐ足がつく、金をやるから帰れとトムを説得にかかる。それに対してトムは冗談調にこれをこうすればいける、と説明して返す。穏やかなトーンでかなり危険な会話のやり取りを行っているのが不気味だった。

 

 トムがフィリップの死体を布でくるんで沈めるまでのシーンが結構長くて、ここは真に迫るものがあって良かった。死体に布をかけてワイヤーで縛る途中、慌てたトムが一回海に落ちるのだが、別にあそこで落ちなくとも話の進行には問題は生じないのにあえて落ちたというのがリアルだった。

 

 フィリップを殺した後の手口が鮮やか。パスポートの判は粘度で型を取り、フィリップのサインをスクリーンに拡大させて練習して真似る。フィリップの喋りも真似して電話でフィリップのフリをして巧みに情報操作もやってのけた。頭良いんだな。

 

 邦題「太陽がいっぱい」の通り、ずっと天気が良くて太陽を感じる。ヨット旅のシーンでは太陽に照らされた海が綺麗だった。トムがボートの上で背中を火傷するくらい太陽に照らされることや、最後のビーチのシーンでも太陽というワードがセリフに出てくる。そんなことから太陽いっぱいな映画だったなと想った。

 

 トムの完全犯罪で終わると想いきや、最後に手落ちがあった。フィリップのヨットを売りに出す審査の時に、しっかりフィリップの死体を海に沈めてなかったからヨットにワイヤーが絡まって死体も陸揚げされてしまう。

 ラストが印象的で、ビーチで羽を伸ばすトムに警察の手が迫り、おそらくこの後で逮捕されたんだなと予想させておいてそこまでは描かずに終わる。あえて最後を見せないこの気持ち悪い感じが後引くので忘れられない作品となった。

 

 こうして感想を書いてる今でも光GENJIの方の「太陽がいっぱい」が頭に流れて離れない。あれも良い歌だからな。

 

 

 この夏に太陽がいっぱい

 

 

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