こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

空虚な都会生活「太陽はひとりぼっち」

「太陽はひとりぼっち」は1962年公開のイタリア・フランス合作映画である。

 

太陽はひとりぼっち Blu-ray

 

内容

 婚約者と別れたヴィットリアは、友人達とはしゃいだりして気分転換を計るがそれでもどうゆうわけか気分が晴れない。投資家の母は投資活動に夢中で話相手にもならない。そんな時に証券取引所で働く青年ピエロと会って新しい恋を始めようとするのだが、それでもどこか心に穴があいたように鬱屈とした感じがする。どこまでいってもひとりぼっちの寂しさを持つ困った人間の心理を描く。そんな感じのお話。

 

感想

 物悲しいピアノ演奏がOPにかかり、その他のシーンでも流れる。この寂しい感じのするBGMが印象的なものとなっており、孤独感を演出している。恋愛の不毛さ、都会生活の空虚感、孤独感を描いた作品ということである。BGMの他、閑静な街の風景を多めに流すことで更にテーマ性が引き立つこととなった。作品全体として寂しい感じがする。

 ヴィットリアが逃げ出した友人の犬を探しに行った時、街に立つ柱が風で揺れてガタガタいってるシーンが挟まれる。ここを不自然に長く写したのが何だか不気味だった。自然の音が大きく聞こえることで、個人の孤独感を煽ったという演出なのかもしれない。そういった点ではラストの締め方が一番気になる。ヴィットリアとピエロの恋がハッピーエンドに終わったとは描かず、ラスト数分はただただ街の人々や建物を写して終わる。何だこの不思議な終わり方はと想った。かなり印象的なものだった。ラストでも悲しい感じのするピアノ演奏が流れてとにかく寂しい。そんな終わりだった。

 

 アラン・ドロンは始まってからも長いこと出てこない。

 主役はヒロインのヴィットリアの方。彼女は冒頭場面で恋人と別れ話をする。このシーンからかなり静か。

 冒頭シーンで気になる点はヴィットリアの元恋人の家から見える風景。先っぽに円盤が刺さったような奇抜なデザインのタワーが見える。これだけ古い作品だが近未来感漂うスゴイ建物が出てくるなと想って目を奪われた。

 

 投資家のヴィットリアの母は証券取引所に日頃から出入りしていて、アラン・ドロン演じるピエロはそこで働いている。全体的に静かなこの作品の中で大変やかましい場面がこの証券取引所のシーン。株を売るだ買うだの話で客と業者が皆やかましい。数分で何億もの金が動くというヤバイ業界なので、皆すごい活気付いていて目がマジ。すごいうるさい中で業界の有名人のなんとかって人が死んだという知らせが場内アナウンスされ、そこからは喧しかったヤツらが皆黙って一分間の黙祷を捧げる。しっかり一分映して黙祷が終わったら再び場内がうるさくなる。このシーンは印象的だった。この業界を知らないから、こんな現場が日本にもあるのかと不思議に想った。

 

 ヴィットリアの女友達がとにかくケニアは良い場所と紹介してくるのも印象的だった。

 

 この作品のテーマ性は根が深いもので、見終わって「あ~楽しかった」という軽い感想は浮かばず、とにかく色々と考えさせられた。

 友人がいて恋人がいてもヴィットリアは心の隙間を塞ぐことができない。だったら人ってのは一体何を持ってして心が満たされる生き物なのか、哲学的な問いをしてしまうそんな作品であった。

 

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 わたしは隙間なく心が埋まっています。人生楽しいです。

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