こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

男女の愛欲を紡ぎし二編「だまされた女 / すげかえられた首」

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 トーマス・マン作の二編の中編小説を読んだ。

「だまされた女」は1953年、「すげかえられた首」は1940年に発行された。

 二作共に男女の愛欲、肉欲をディープに掘っている。ライトな読み物ではない。

 

・だまされた女 

「だまされた女」では初老の未亡人テュムラー夫人が、息子の家庭教師青年ケン・キートンに恋をし、年老いた身に久しく恋の炎を宿すという内容が描かれている。

 主な登場人物はテュムラー夫人、その娘アンナ、息子のエードゥアルト、そしてケン・キートン

 娘のアンナは足が不自由。アンナは色恋に対して大変厳しい見方をし、母の恋に関しても口を挟む。この時の母と娘の恋愛観のぶつけ合い場面が熱い。

 テュムラー夫人、アンナは共に饒舌。一文が長いセリフを実にペラペラと喋る。

 一文が長いとか、ところどころ表現が分かりにくい所もあるので、全体として読みにくい感じもした。

 テュムラー夫人は体を病み、最後は癌で死んでしまう。命の終わりを迎える間際に女としての性が蘇る。人の命の、そして愛欲の破壊と再生を綴った的な話だった。  

 

 

・すげかえられた首

「すげかえられた首」はインドを舞台に、二人の夫、一人の嫁という歪な男女三角関係が描かれる。

 頭脳の優れるシュリーダマン、逞しき体を持つナンダ、仲良しの青年二人は、美しい腰を持つ女性シーターと出会う。二人はたまたま水浴びをするシーターを見てしまい、シュリーダマンはシーターに一目惚れし、死を呼ぶレベルの恋患いにかかる。ナンダは友人のために奔走し、シュリーダマンとシーターを結婚させる。

 結婚してしばらくすると、シュリーダマン、シーター夫婦の関係が冷める。シーターは筋骨たくましいナンダの体に魅力を感じるようになる。

 そんな時に三人はシーターの実家を訪れる度に出て、その道中でお堂に寄る。そこでシュリーダマンはお祈りを捧げる。しかし幻想の世界でも見てとち狂ったか、剣で自分の首を落とす。それを目撃したナンダもまた、親友と命を共にすると誓っていたので同じく首を落とす。

 一人残されたシーターに神が話しかけ、二人が落とした首と体を繋げて復活させてやると言う。シーターは二つの死骸の首と体を組み合わせるのだが、そこで組み合わせを間違ってしまい、二人の首と体があべこべになってしまう。

 二人は復活するが、シュリーダマンとナンダの首が入れ替わってまい、ここで問題となるのは、シーターの夫はどっちだという話。

 首を主に考えればシュリーダマンの顔が乗った方、体を主に考えると今となってはナンダの体となった方。考え方によればどちらも夫の体、どちらも友人の体となる。

 三人して混乱し、森の賢者に決めてもらうことになる。

 賢者はシュリーダマンの首がある方が夫だと言う。そうして体だけはナンダになったシュリーダマンはシーターと共に家に帰り、ナンダは賢者のように森で修行することで浮世を離れることとなる。

 ナンダの逞しい体に抱かれたかったシーターは、ナンダの体を有した夫のシュリーダマンに満足するようになるが、それも長く続かずまた倦怠期が来る。

 シーターは夫の留守中に子供を連れてナンダの元を訪ねる。そこにシュリーダマンもやって来て、三人で話し合った結果、三人揃って死ぬことになる。二人の夫は互いに心臓を刺しあって死に、シーターは二人と共に生きたまま火葬された。

 

 こういう流れの話だが、中身は割と長く、ヒンドゥー教信仰者達の話のため、その手の専門用語が出てきて分かりにくい箇所もある。

 メインで登場する三人はいずれも饒舌。よく喋る。

 お堂でお祈りをしている間におかしな精神状態になって首を落とすシュリーダマンだが、なんでそうなったんだとツッコミたくもなる。

 頭と体、どちらを主に考えて人を判断するのか。考えたこともないことがテーマに含まれていた。確かにシーターにとってはどっちも夫と言える。そんな訳でシーターはどちらとも体を重ねている。シーターにあまり良いイメージがなくて、ナンダの体になった後のシュリーダマンと散々お楽しみになってからもまた夫婦仲が冷めるのを見ると、元々男に飽きっぽい女なのか、とも想ってしまう。

 

 違う人のようで同じ人でもあるみたいなシュリーダマンとナンダを見ると、何だか不思議な感覚に陥る話だった。

 

だまされた女/すげかえられた首 (光文社古典新訳文庫)

だまされた女/すげかえられた首 (光文社古典新訳文庫)

 

  

 男女関係は複雑で難しく、理屈では解析しきれない。二作品を読んでそんなことを想った。

 

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