こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

エマの青春「エマ」

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「エマ」ジェーン・オースティン作の長編小説。1814年に発表された作品である。岩波文庫の上下巻を読んだが確かに長かった。忙しい生活の合間を縫って上下二冊を読むのに約一ヶ月かかった。ジェーン・オースティンの作品ならかなり前に「高慢と偏見」というのを読んだことがある。あれ以来久しぶりのジェーン・オースティンとなった。

 

 お話の舞台はハイベリーというどこだか知らない地。だいたいここで話が展開する。主人公エマは機知に富み、自己肯定と自己愛強き屈強な乙女。美人で年齢は21歳。裕福なお家のお嬢様。

 エマ視点から村で起こるあれこれの出来事を辿って行き、その中でエマの心の成長を描いている。気高き乙女の心理小説といったところだろう。まぁそこら辺の受け取り方は人それぞれだろうけども。

 

 まず主人公のエマだが、バカな男程苦手にするタイプだと想う。だって彼女、頭が良いのだから。現代日本にはいないような理知的な乙女だと想う。それでもある程度は自信家で、人が諭そうとしてもそれには従わない厄介な所もある。本のあとがきを読むと、当時の文壇ではエマのキャラクター性はレディとしてどうよ?となったらしく、結構ディスられたとか。しかし私はこういう賢く強い女性が嫌いでなく、むしろ良いと想う。総合的にはヒロインのエマに共感できる。

 本作主人公エマについて、作者は「私のほかには誰も好きになれそうにない女主人公」と評している。それだけ攻略しにくい女であり、攻略する気にもなりにくい難しい女がエマなのである。

 

 彼女のクセの強いところが、他人の縁結びをやりがちなこと。恋のキューピットとなるのはいいことなのだがそのせいで振り回される人もいる。

 エマは父と二人で暮らしている。姉のイザベラは結婚して家を出て、母は亡くなっている。エマを育てた家庭教師のミス・テイラーも物語序盤で結婚してエマの家を出ていく。テイラーとその夫ミスターウェストンをくっつけたのはエマの手柄となっている。これに味をしめたエマは、次には親しき仲の年下女性ハリエットの縁結びも行うとする。

 エマはハリエットに淑女的教えを授け、ハリエットのお姉さま的ポジを取る。このハリエットが可憐で健気な感じがして私は好きだった。序盤で農夫のロバート・マーティンがハリエットに求婚するが、エマにはこの縁談が気に食わない。ハリエットにあれこれと言ってマーティンと結婚させないようにする。余計な口出しをしたことをミスター・ナイトリーから責められるがエマは間違ったことはしていないと言い切る。

 その後は牧師のミスター・エルトンとハリエットをくっつけようとするが、エルトンはエマを好きになりエマはそれを結構派手に振る。その後エルトンはうざい女と結婚する。これがミセス・エルトンだが、この女は中盤から後半までエマやエマの友人ジェーンに絡んで来てとにかくうざい。

 次にはミスターウェストンの息子のフランク・チャーチルとハリエットをくっつけようとするが、これも失敗。フランクはジェーンと結婚してしまう。

 ハリエットはミスター・ナイトリーが好きになり、それをエマに告白する。エマに遠慮なく意見できる対等な立場に立つ唯一の男がミスター・ナイトリー。ハリエットからそれを聞いてからエマは自分もナイトリーが好きと気づく。結果、エマとミスター・ナイトリーが結婚する。またハリエットが可哀想なことになる。

 最終的にハリエットは、最初に求婚してきたロバート・マーティンの再求婚を受けて彼と結婚する。

 こんな感じでエマが余計なことをしたせいでハリエットの恋が遠回りになっている。最初の求婚で一緒になっておけば良かったものをと思う。

 エマに悪気はないが、結果がこれだし、ハリエットからナイトリーを取ったみたいで、ハリエット的にエマはどう見えてるのよ?ってなる。まぁそんなエマの暴走も嫌いじゃなかったけど。

 

 エマは裕福なお嬢様で身分が高い。だったらミセス・エルトンが開く社交の場にも足を運ばないといけない。この手の階級がどうのこうのとうるさい時代の話で良く見られるのが、義務的に社交場で上手くやり過ごさないといけない流れ。これを見るとストレス溜まりそうだし面倒臭そうだといつも想う。

 

 エマの父親のミスター・ウッドハウスがなかなか哀愁漂うキャラをしている。いつも屈託ある鬱な老人で、結婚した女を見れば「かわいそうに」と言いがち。長女のイザベラや住み込み家庭教師だったテイラーが結婚して家を出ていけば、なんだかんだ言ってもこの地に住むのが一番なのだからよそに移り住めば苦労が増えて不幸とか言ってる。いつも元気がなくて根暗な老人なので、このお父さんとふたり暮らしするとかエマも大変そうと想う。私なら嫌だ。

 

 登場キャラそれぞれが結構深く掘り下げられていて魅力的に描かれている。社交場でそれらのキャラが入り乱れて関わりを持っていく群像劇の形も取っている。

 登場人物の名前表記が本名でなく、ミスターなんとか、ミスなんとか、ミセスなんとかとなっていることが多いので、どれが誰のことを指しているのか混乱することがあった。人物関係を整理して読まないといけない。

 

エマ〈上〉 (岩波文庫)

エマ〈上〉 (岩波文庫)

 
エマ〈下〉 (岩波文庫)

エマ〈下〉 (岩波文庫)