「邪聖剣ネクロマンサー」は1988年に発売されたPCエンジンソフト。
クソゲーの要素を持ちつつも、個人的優しい解釈では良ゲーと呼べる出来のもので、かなり広い心とそれなりの時間的余裕を持っていないと楽しめないと想う。
本作は約30年前のRPG。発売当時には昭和エンドのカウトダウンが聞こえる人には聞こえていたはず。
平成も終わった今になってなぜこんなカビでも生えそうな前時代のゲームを引っ張り出して遊んだのかを明記しよう。
クソ記事率が高いけど軽い気分で世間のあれこれが探れるということでついつい覗いてしまうのがYahoo!ニュース。ちょっと前に出た記事で、とうとうPCエンジンも「mini」のやつが出ると知った。この情報を知ると何だかPCエンジンで遊びたくなった。
そこで、やるなら「ラストハルマゲドン」と本作「邪聖剣ネクロマンサー」のどっちかにしようと候補が絞られた。
実はこの「邪聖剣ネクロマンサー」、随分前に一回プレイしていて、早々にギブアップしたソフトなのだ。なにせムズい。マジで10分くらいで投げた。
先日遊んだGBAソフト「オリエンタルブルー」も以前ギブアップしたから再チャレンジしたので、今回もあの頃の弱かった自分とあの頃から今日までずっと強いこのゲームに打ち勝つための挑戦を行うことにした。そんな訳で「ラストハルマゲドン」には再び押入れに帰ってもらい、「邪聖剣ネクロマンサー」を久しぶりに陽のあたる場所に出した。
令和時代の私はかなりアクティブ。
未だに「令和」で一発変換出来ないのがちょっと面倒。
いざスタート
久しぶりににネクロマンサーをスタートさせる。第一印象は不気味、これで間違いないゲームだ。
何だか陰鬱なBGMをバックにでっかい顔が出てくる。そういやいたわコイツ。
このでっかい顔が物語の語り手で、こいつが言うことはこうである。
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その昔神々のいる「天界」と悪魔がいる「魔空界」があり、二つの世界は飽きもせずに日々ドンパチしていたらしい。そこで神々は武器を作り、それで魔空界を黙らせた。その伝説の剣が「邪聖剣ネクロマンサー」。悪魔共を黙らせた後、神々は二つの世界の間にもう一つの世界「人間界」を作った。
邪なのか、聖なるものなのかどっちか分からんネーミングの剣だな。
主人公の勇者はこの伝説の剣ネクロマンサーを探し出し、世にのさばる悪の帝王アザートスを討つ。ゲーム内容はこんな感じの神話的伝説譚で、とっかかりから大変面白そうと想ったのだが、その旅路は過酷過ぎた。
まずは王様おすすめの人材の中から勇者のお供を二人選ぶ。五人の中から二人を選ぶのだが、私はカオスとロミナを選んだ。
魔術師のカオスは、その名前が私がとうとう倒せなかった初代ファイファンのラスボスと同じだったので、今回は味方にすれば心強いと想って選んだ。
女性のロミナに関しては単純にパーティーに華が欲しいので声をかけたのだが、自己紹介で自分はこれといった特技はないとか言うので逆に気になった。悪の帝王を討伐しにいく勇者のお供候補として選ばれた猛者五人の中に入りながらも、自分のアピールポイントがないとか一周して興味が湧く。のびしろが謎な事に期待して選んだ。
この三人でいざ出発。
ムズい上に不親切なのが挑戦者魂に火を点ける
このゲーム、はっきり言って激ムズ。昔のゲームは「これで本当に子供が遊ぶ内容かよ!」と想うくらいにバカムズいのが少なくない。
私はこれまで色々なゲームを1000本はプレイして来た。その中でもかなり手こずった難しいゲームといえば一番に思いつくのが「ファイアーエムブレム トラキア776」。これに匹敵するくらい、ネクロマンサークリアには時間と労力がかかった。
これなら職業が「挑戦者」のケイスケ・ホンダもきっと満足するはず。この私にも、厚い壁程ぶっ壊した時に気持ち良いと感じる挑戦者的快楽思考がある。私は、果てに待つ快楽のため、襲いかかる苦痛に耐えてこのゲームをクリアしたのである。
いきなりムズかった。文句を書いて行こう
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スタートしてすぐ想うのがお供の二人弱っ。攻撃が当たらないとか、当たっても微々たるダメージしか与えることが出来ない。
あとは鈍いから敵から逃げられない。私は基本的にRPGでは「逃げる」を選択しないのだが、このゲームでは逃げたくもなる。何せエンカウント率が鬼高い。でもこっちがのろまだからほとんど逃げずに戦うことになる。
それから敵が強い。マップを移動して敵の生息圏が変わると一気に敵が強くなる。街から街へ移動する度にレベル上げが必要。昔のゲームはバランス調整がバカになっているから一度も逃げずにエンカウントをこなしていても、それとは別にレベル上げ作業が必須なのが多い。このゲームは中でもそれがひどく、ワンプレイ中イベントが一つも進まずずっとレベル上げをしていることもあった。
ドラクエ、ファイファン、Motherなどでも敵がいきなり強くなって必死にレベル上げをすることがあった。このゲームはそれに一番時間がかかった。なかなかレベルが上がらない。必要なレベルアップ経験値に対して敵がくれる経験値が少ない気がする。
ネクロマンサーをゲットしてからは主人公が笑えるくらい強くなるので、後半のわずかな間はストレスから解放される。
全体攻撃が出来るアイテム「バーンのつえ」がないとどうなっていたか分からない。初期で入手して最後まで世話になったアイテムだ。
死んだ時の始末がだるい。教会で高い金を払って仲間を復活させても、体力が1の死んでいないだけで生きている感も少ない状態の復活となる。その後また金を払って体力を回復しないといけない。
宿屋と別に病院があり、宿屋に泊まってもステータスが完全回復せず、ここではパスワードを教えてもらうだけ。病院で全回復できる。回復屋は一つにまとめろやと想う。
このゲームは装備武器や防具がステータスに大きく関わるので、鍛えまくって昔のザコ武器で行くとかは無理。その都度強い装備品を買わないといけないのだが、ここでもバランスがおかしい。次の街に移る度にどんどん物価が高くなり、装備品が買えない。レベル上げのためでもあるが、資金集めのためにもザコ狩りをする時間を多く取らないといけない。
マップ自体がかなり広いのに、それに対してエンカウント率がバカになってるから街から街が遠くて仕方ない。昔やった「じゅうべえくえすと」で、街が見えているのに敵が出すぎてなかなか到着できない時に感じたあのイライラを思い出した。辛抱のない私のお兄ちゃんならソフトを折っていたと想う。おまけにパーティーの歩く速度も遅っ。
プレイヤーに不親切なのはそれだけに留まらない。物語を進める上でのヒントが少ない。これは攻略本かサイトでも見ないと二年かかってもクリア出来ないと想う。
まずはスタートした街からもう躓いた。最初の街で民に話かけると西の街に行って装備を整えるように言われる。その通り街から西に進むとどこまで行っても街がない。しかも出る敵がいきなり強くなり、明らかに現在のレベルで行ってはいけない敵生息圏に入ったと分かる。
いきなりネットで調べると、西と言えば西なのだが、まずは東に進んでぐるりと海を周ったところにある街だということだった。
なんだそりゃ、4分の3はガセ情報じゃねえか。と想って情報をくれた民を呪った。
抜け道、隠し通路を通過しないとクリア出来ないのだが、これもヒントがあってないようなもので、私には全然分からなかった。これをさっさと分かる人はまずいないだろう。
ネクロマンサーは3つの聖杯とエギスの書がないと復活できない。最後の聖杯は泉の近くに落ちているとジジイから聞いたのだが、「一体どこの泉よ?」と想って探し回った結果分からなかったのでネットで調べた。
本当に不親切なゲームだわ~。これは私だけが想うことではなかろう。
たくさん文句を言ったけど、それも愛ゆえ。
異質なゲーム世界観
OP画面で謎のでかい顔が出てくるあたりから独特の世界観がある作品だと分かる。
ゲームのキャッチコピーが「夜、一人では遊ばないでください」だっただけに、ある種の怖さや不気味さがある。
まず敵なのだが、大方がキモイ。
最初の街を出て初めて遭遇した敵が臓物の飛び出た上半身と見るからに人に害をなしそうな蛾。シルエットだけで例えると、ドラクエで言う所のスライムとドラキーがこいつらだな。
敵にはぐちょぐちょした臓物系や、とにかくキモくてグロいのがいくつかいる。
敵は軽いアニメっぽく動いている。倒すと血しぶきを上げて死ぬ。当時としてはかなり画面が綺麗で発色も良いと想う。そんなのだから余計にリアルに見えてキモイ。
そんな訳で夜にやるとちょっと不気味かもしれない。女神転生とかも夜にやったら不気味だったな。
地下や洞窟に潜ることが多く、その時には周りが真っ暗でキャラの一歩先くらいしか見えない。ダンジョンの見通しが悪すぎる。アイテムのたいまつや魔法で辺りを照らすことは出来るが、それでも画面の半分くらいはまだ暗くてダンジョンの全面は見えない。こうして見通しが悪いダンジョンのように、この作品の世界感も暗いものだとイメージ出来る。
ラスボスも何か色々とグロくてキモかった。まった無しで人間にとっての害悪だと判断出来る見てくれだった。
ゲームを進めると、とある洞窟の入り口に女性が立っていて、中に子供が入って迷子になったから探してと頼んでくる。頼みを聞いてダンジョン奥の子供に話しかけたらそいつの正体は実は化物でパーティーを襲ってくる。ぶっ倒して入り口に戻ると母親はいなくてそれっきりイベントは終わり。母も子も勇者をはめるために派遣されて敵だったようだ。このイベントを考えた奴は性格悪いな。夜にやったらゾッとしたシナリオだった。
エンディングもまた余計にドラマ性をもたせている。
勇者はラスボスを倒して英雄となり皆からの信頼を得る。ネクロマンサーを帯びて国の王にならないかと勧められるが、主人公は地位や名誉を欲さず、その話を蹴ってただの旅人に戻る。また、ネクロマンサーのような力は人類には過ぎたるものだと判断した彼は最後にはネクロマンサーを埋めて再度封印する。
これで終わったら綺麗なエンドだったのだが……。それでも人は争いの有無に関係なく力を欲するもの。
OPのでっかい顔の語り手がラストでも登場して語り出す。土を掘り返す音が聞こえると語り手が言って物語は終わる。ということは、力を求めた誰かがネクロマンサーをまた掘り起こしたということだろうか。何だか後味の悪い終わりだった。
ゲーム主人公が最後に伝えたことは、幸福のために真に欲するものは地位や名誉ではなく平和ということ。良いこと言ってる。
クリアまでは過酷な旅となったが、それでも実に楽しい旅であった。今はジョジョ三部ラストのジョセフ・ジョースターと同じ気持ちだ。
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