「魔界塔士Sa・Ga」は1989年12月15日にスクウェアから発売されたゲームボーイソフト。
携帯ゲーム機初のRPGにして、スクウェア初のミリオンヒット作品でもある。
平成時代一年目に発売し、新時代を飾る名作となった。
当時としてはゲームボーイでRPGという発想がなく、今作のヒットを受けて田尻智氏は「ゲームボーイでもRPG出来ちゃうのか!」と感銘を受けたとのこと。ここからヒントを得て田尻氏が産んだ作品が、後にゲームボーイで発売した名作「ポケットモンスター」縮めて「ポケモン」である。こうして時代の発明はバトンタッチされて行く。素晴らしい。
今は平成が終わりたての令和一年目。
このタイミングでゲーム番組「勇者ああああ」では、平成の名作を振り返る企画を行っていた。ゲストが名作の名をたくさん上げる中の一つに、この「魔界塔士Sa・Ga」の名前もあった。
そう言えば、Sa・Gaシリーズの「2」「3」はやったことがあるけど、一作目はやったことがないと思い出した。私はやったことがないけど、私のお兄ちゃんがやっていたのでソフトも攻略本も我が家にある。じゃあやってよう。攻略本の絵、ちょっとエッチだな。
そんな流れで、令和元年になった今から振り返って30年前の世界、つまりは平成元年にヒットした今作をプレイすることになった。レトロゲーマーの血が沸騰しそうだぜ。
久しぶりにゲームボーイソフトをプレイしたけど、画面真っ白やな。そう言えば初期ゲームボーイソフトは画面が白黒だった。懐かしすぎる。
そういう訳で、楽しくプレイしたこのゲームの感想を想うまま以下に書き殴っていくぜ。
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感想
世界の真ん中に、楽園へ続くといわれる塔がある。主人公達冒険者は楽園求めて塔の頂きを目指す。という物語。
昔はRPG特有の作業であるエンカウントにイラついて集中出来ない時期もあったが、成長して私も落ち着きを覚え、今ではむしろこの作業感が心地よい。
ゲーム音楽はファイルファンシリーズで才を発揮したあの植松伸夫氏が手がけている。ゲーム起動後すぐのメインメニュー画面で流れるテーマ曲は、温もりと安らぎと言いようのない懐かしさに包み込まれた名曲。「2」と「3」でも流れる名曲なのでずっと覚えている。良い音楽のおかげてプレイも快適。
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この楽曲について、私のお兄ちゃんは遠い目をして「魂があの日に返る」とコメントしていた。
先日プレイした「邪聖剣ネクロマンサー」と比べると敵の強さ、物の値段、金の集めやすさなどのゲーム設定は比較的ライトなもの。ネクロマンサーと比べると簡単すぎるくらい。その上しっかり面白いソフトである。
ゲームもボーイ初RPGということで、ゲーム設定に特殊な試みが見られる。
まずキャラには従来RPGのようなレベルの概念がない。
使用キャラは4名までで、人間の男女、エスパーの男女、あとは魔物の中から選ぶ。主人公には「おおはさみムシ」を選んだ。なんだその種族?と気になったので選んだ。
人間属性は店でアイテムを買ってパワーアップする。エスパーは戦闘の中で強くなり、エンカウント終了後にステータスが変化する。そして魔物は退治した魔物が落とした肉を食って強くなる。三者三様の強化方法がある。Sa・Gaシリーズと言えば肉を食って変身するのが特徴で、何に変身するか楽しみに肉を食うのが定番。
装備武器には使用回数があり、限度を越えると武器はなくなる。据え置きではないのでその都度補充しないといけない。
武器は剣や弓、魔導書などのファンタジー特有のものだけに留まらず、打撃技や核爆弾、バルカン砲、波動砲、チェーンソーなど物騒なものからファンタジーの域を脱した危ない化学兵器まで様々なものがある。
ゲームボーイRPG初期といこともあってか、大変甘い作りとなっている。それと言うのがバグが多いこと。キャラのステータスをドーピング出来たり、急に他所の街にワープしたり、終わったはずのイベントが何回も起きたりする。次に進むために必須な重要アイテムなのに簡単に捨てられるので、うっかり捨てるとゲームが詰んでしまうこともある。普通のゲームなら「それは捨てられない」的なメッセージが出るところがこのゲームにはない。
プレイする上で特別問題ないバグなら良いのだが、もうどうにもならないバグもあった。私がファーストプレイで体験したことだが、海洋世界で海底に行ってボスの青龍を討伐した後、渦潮に乗って地上に戻れなくなるバグがあった。浮島が渦潮の上に乗ったまま全く動かず、海底に閉じ込められてしまった。色々調べたけど脱出不可能ぽかったのでスタートからやり直した。そこまでのやり戻し作業がダルかった。たまに詰むというミスもあるので手強い。
塔は果てしなく高く何階もあるが、主に旅する階層は4つに別れる。大陸世界、海洋世界、空中世界、都市世界があり、各階層は玄武、青龍、白虎、朱雀の四天王が支配している。コイツらをぶっ倒すと大ボスのアシュラと戦うことになる。
それぞれの階層で世界観が大きく変わる。物語展開が結構熱くて好きだった。
空中世界では、とある姉妹の絆が描かれる。妹想いの姉がおり、姉は敵から妹を守ろうとするが、妹の方はと来ると私欲から姉達を敵側に売っていた。そんなクソ女だった妹だが、最後には姉の優しさに触れて真っ当な人間に戻る。
特に印象的だったのが都市世界。それまでのファンタジー感が消えてアキバ、アメ横、原発の地が登場し、どうやら日本を模したと思われるマップが展開する。都市世界は荒廃した世界に描かれ、「北斗の拳」や「AKIRA」みたいな世紀末チックな終わった世界観になっていた。AKIRA感に拍車をかけるのがバイクに乗る暴走族がいる設定。主人公もバイクに乗って滑走する。
この都市世界を支配するボスの朱雀がノーマルエンカウントで何度となく登場し、強いくせに金を1ケロ(ケロはゲーム内通貨)も落とさない。ボスをも切り裂く神アイテムのチェーンソーがなかったら切り抜けが困難だった。
暴走族達と強力して敵を打倒する展開になるが、主人公達は暴走族を巻き込みたくなりからこっそり自分たちだけで出発しようとする。それに気づいた暴走族達は「水臭いぜ」的なことを言いつつ、主人公達の優しさと男気に魅せられてもっとやる気になる。その結果、暴走族の族長は常人なら立ち入り不可能な危険区域である殺人バリア地帯を生身で突破し、命と引き換えに主人公達の活路を開く。この暑苦しい展開が結構好きだった。
四天王を倒した後に出てくるボスのアシュラは、仲間になれば4つの世界の支配を任せると提案してくる。ドラクエの竜王のパターンだな。提案を受け入れたら隙をついて殺す算段だろうが、その手には乗らない。支配者の常套句を弄するこのクソ野郎は早々に撃退した。
これの更に後に出てくるのがなんと「神」。塔どころか、この世界自体を作り出した創造主。主人公達は「お前のために生きてるんじゃねぇ!」的なことを言って神にも食ってかかる。
ラスボスの神がなかなかイキった気に食わない奴で、自分が作った世界を楽しく傍観したいがために人々の運命を操ることを趣味にしていた。創造主とはいえ、人の命を軽んじてはいけない。己の運命を切開くためには神にも打って出る、それが人の性ということで、主人公達はラストの先を目指す。ラスト展開は熱いぜ。
チェーンソーが最強武器だと噂に聞いていた本作だが、試しにラスボスにも使ってみると一発で死んだ。普通に戦うと結構キツイラスボスも、設定ミスのためかチェーンソーで死ぬ。味気ないのでセーブ地点に戻ってズルなしでも戦ってみた。それにしても核爆弾を食らって平気な神がチェーンソーだったら一撃で死ぬとかウケる。
塔を上る途中で、クリアするのに関係があったのかどうか分からない「たかしくんの水つまり」のイベントがあった。このイベントの内容はというと、たかしくんが湖にゴミをつまらせたために水が抜けなくなって水浸しになった世界があり、主人公がゴミを取ってやるとその下にあるタコしかいない大地が干上がった世界に水が流れ落ちるというもの。タコ達が大変喜んで終わる話。
「なんなのコレ、必要?」と想ってネットで調べてみると、なんと製作スタッフの内輪ネタらしい。制作スタッフにもたかしくんがいて、その彼が会社の流しをつまらせたという事件をゲームイベントに落とし込んだものとのこと。愛がある作りのゲームだ。
このゲームの内容や作りには色々とツッコミたいことがあるけど、個人的に一番気になり、気に入ったのがキャラのセリフ回し。
主人公達4人には固定のセリフがあり、パーティーが男だろうが女だろうが魔物だろうが、パーティーのセリフは乱暴な男口調。
一番ツボったのは、物語序盤で盗賊のアジトに侵入した時の一連のやり取り。盗賊のボスが勝手に侵入した主人公達に対して「誰の許可を得て入った?」と聞くと「俺だ!」と返すやり取りは男気ありすぎてツボる。
男気たっぷりかと思えば、王様に対しては頼み事を聞いてやった代わりにしっかり見返しを求めたりもする。しかも悪代官に取り入るこずるい商人みたいな口調。
本作の後発ゲーム「ロマンシングサガ」でも見られるが、このゲームでは基本的にキャラの口が悪い。
店に入ると店員が「何のようだ!」と喧嘩口調の接客を始め、金が足りない時には「おい、銭がたんねーぞ」と言ってくる。これに対しては「接遇はどうした?」とツッコミたくなる。私も会社に入った時にはこれの研修をたっぷり受けたぞ。
てな具合に愛嬌たっぷりなクスリと笑える会話劇もこのシリーズの一つの魅力。
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このキャラの口が悪い問題について、私のお兄ちゃんは「チンピラに造詣が深い荒くれ者がセリフを書いている」と当たりをつけていた。真実は知らんけど。
集中してプレイし、4日くらいでクリア出来た。とても面白かった。
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