エドガー・アラン・ポー作の短編「アッシャー家の崩壊」と「黄金虫」を読んだ。
大きくなって落ち着きを得た最近の私は、長編をじっくり読むのを好むようになったが、サクッと読めてなおかつ中身が濃厚なものは忙しい日々の中で楽しむには打って付け。最近色々と忙しいけど活字に触れたく仕方ないので短編集を手にとった。
タイトルの二作はポーと言えばの代表作なので名前は知っていたけどまだ読んだことがなかった。なかなか味わい深い二作であった。
アッシャー家の崩壊
物語の語り手は、長らく会っていなかった旧友ロデリック・アッシャーから手紙を受け、体を病んだアッシャーを見舞いに行く。没落したアッシャー家にはロデリックとその妹マデラインが住んでいて、マデラインはもっと体調が悪く、謎の病にかかって死ぬのを待つばかり。
語り手は数日アッシャー家に滞在し、その間は神経衰弱したロデリックを慰めるために本を読んであげたり話し相手になったりしてあげる。その内にマデラインは死んでしまい、二人は亡骸を棺桶に入れる。
それからまた数日の間にロデリックはどんどん神経を病み、ついには幻聴が聞こえはじめ、それは妹が棺桶が出てこちらに歩いてくる音だと言い、実はまだ息がある内に妹を棺桶に詰めたと告白する。
棺桶から這い出たマデラインはロデリックの上に倒れ、二人は揃って絶命する。あまりの恐怖に語り手はアッシャーを脱出する。
簡単にまとめるとこのように気味が悪いだけの話。
ぶっちゃけ、一回読んだだけでは何がなんだかよく分からない。
アッシャー家の兄妹がそろって神経衰弱状態にあり、ページをめくるたびに鬱屈とした雰囲気が伝わる。
作中には語り手とロデリックが読んだ本の中の詩が表記される。
ロデリックが生きた状態の妹をなぜ棺桶に入れたのか謎。
ゴシック・ホラーというジャンルの作品で、推理ものを書くイメージの強かったポーがこういうのも書くんだと意外に想った。
語り手は久しぶりに旧友と再会して酷い目にも会っているから困った話だ。久しぶりに届く旧友からの便りには何かあると疑った方が良い。
黄金虫
こちらも物語の語り手が旧友を訪ねる内容のもの。
没落した名家の出の旧友ウィリアム・ルグランは隠遁生活をしていて、そこで珍しい黄金虫を見つける。ルグランは黄金虫を捕まえたのをきっかけに海賊の埋蔵金の在り処を知る。ルグランと召使いのジュピター、そして語り手の三人で埋蔵金を掘り起こす物語。
こちらはアッシャー家と比べるとかなりライトで楽しく読めた。
海賊が残した暗号をルグランが解読して埋蔵金の在り処に辿り着く過程はポーお得意の推理もの要素が入っていた。森に分け入ってお宝を発見するまでの流れは冒険もののようでワクワクもした。
前半は暗号解読に没頭するルグランをまるで狂人のように見せ、召使いのジュピターもそれを心配している。読んでいる側としてもルグランが精神を病んでおかしくなったのかと想ってしまった。この仕掛けにはやられた。
後半ではルグランがしっかりした頭で語り手に暗号の秘密を披露してくれるので安心した。
ジュピターがまるで道化のポジションでちょっとおもしろい。右と左もいまいち分かっていないおバカな所があるせいで埋蔵金が埋まっているポイントをミスすることもあった。
キャラ分けされた三人の一攫千金話で良かった。
スポンサードリンク