こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

生命や人生について考えさせられる名作「ガイア幻想紀」

ガイア幻想紀」は1993年11月27日に発売されたスーパーファミコンソフト。

 

 先日、お盆ということで実家に帰って自室押し入れを整理していたら、次々と出てくる出てくるレトロゲームの山!

 いつ買ったのか、何で買ったのか、当時の衝動にまかせての購入だったので我が家に眠っていた経緯が謎のゲームも色々あった。その中の一本がコレだった。と言ってもこのゲーム、4年ほど前にも一度機動チェックくらいのプレイはしたことがあったがクリアはしていない。そんな訳で残暑を乗り切るお供にしようと思い、今週の頭から数日かけてプレイし、無事クリア出来た。

 

 これがなかなか味わい深い一作だったのでつらつらと感想を書いて行こうと思う。

 

ガイア幻想紀

 

内容

 彗星が迫る地球で、主人公少年テムは遺跡調査の途中で行方不明になった父を探すため、そして運命に導かれたため、世界中の遺跡を冒険する。テムは闇の戦士の力を使って遺跡を攻略し、6体のミステリードールを集め、世界と生命の真実に辿り着く。

 

感想

 ジャンルは楽しいアクションRPGで、「聖剣伝説」みたいな感じ。

 万里の長城アンコールワット、ピラミッド、バベルの塔などの遺跡を巡る冒険にはワクワクする。私がオカルト好きなものだから、そこは更にワクワクする。

 

 キャラクターネームをプレイヤーが決められる場合には、100%デフォルトを無視したオリジナルネームを考案する私だが、本作はプレイヤーキャラネームは固定でいじれない。

 

 主人公テムはちょっとだけ「クロノ・トリガー」の主人公クロノぽく見える。

 この手のゲームにしては珍しく主人公の語りがあり、セリフもしっかり喋る。これで思い出したけど、いつだか私のお兄ちゃんが「主人公がベラベラ喋るゲームは好きくない」と言ってた。テムはベラベラとは喋らない。優しくて感じやすい気質を持ち、嫌味のない純粋な少年に描かれていて私は好き。

 

 人類からは光の戦士と闇の戦士が生み出されるとされ、主人公のテムは闇の戦士の力を持ち、ヒロインのカレンが光の戦士となっている。最初に思ったのが主人公が光ではなく闇属性なんだってこと。

 

 テムの武器は笛で、物語の途中には曲を覚えて演奏することで進めるイベントがある。笛を吹くシーンはそこまで多くないけど、この点は「ゼルダの伝説」的要素が見られる。

 

 力を持つテムしか入れない「闇の空間」の入り口が各所にあり、そこに入ってセーブや回復が出来る。闇の空間の主ガイアが一見悪者に見える。先日プレイした「邪聖剣ネクロマンサー」のOPで喋るデカイ顔の語り手みたく見えた。

 ガイアの顔がなめらかに動くアニメーション技術は良し。

 この空間で少年テムは、闇の戦士フリーダン、究極の生命体シャドウに変身出来る。遺跡では敵を蹴散らすのもちろん、ちょっとした謎解きもしないといけない。テム、フリーダン、シャドウと姿を換え、三者三様が備える能力を駆使してゲームを解き進めるのが味噌であり楽しい点。

 

 シナリオの都合上、テムは街から街へと勝手に移動し、多くのRPGのような街から街への移動マップがない。だから迷子なく進めて良かった。

 後半のアンコールワットの敵は少しきつかったけど、全体的には優しい作りで、難易度低めのゲームだった。

 

 

 普通に遊んで楽しいゲームだったけど、記憶に残るのは少し重めのエピソード達。

 キャラクターは可愛らしいグラフィックで、メインで登場するキャラクター達はまだ子供。そんな子供の目線で現実の厳しさ、世界と生命の奥深さを捉えていく重厚なシナリオは評価できる。

 

 最初のステージ「ラライの崖」では、死してなお夫への愛を貫く王女様のエピソードがある。テムが出会った王女様は実は幽霊で、本当はとっくに死んで白骨化していたのは切なかった。

 

 旅の途中、テムとカレンが二人きりで海で遭難するエピソードがある。3週間も海で遭難すれば飢えを凌ぐために漁でもするしかない。テムがイカダの上から魚を獲ろうとすると、カレンはひどいことをしているとテムを叱責する。それでも食わないとマジで死ぬので、テムが説得して最後にはカレンに魚を食わせる。ここでカレンは、それまで意識もしなかった生命を、この場合は魚を殺して自分が生きる糧にしたことを深く受け止めて考える。何らかの生命の死の上に、自らの生があると世間知らずのお姫様に分からせる教訓あるエピソードだった。

ふしぎの海のナディア」でもこんなことがあった。ナディアとジャンが食料が制限された状態で島暮らしをした時、ジャンが菜食主義のナディアに野菜がないから肉を食うよう説得するシーンを思い出した。

 メインヒロインのカレンが見た目ではちょっと可愛さが足りないのだけど、神経が図太い面もあり、逆にある部分では繊細なところも見せる感じやすい少女に描かれているのが良かった。

 

 テムの父親同様に行方不明だった友人ロブの父親を旅の途中で見つけるのだが、精神的ショックを受けたためにロブの父はおっさんなのに幼児退行しているというショッキングなことになっていた。ロブは父を介護するために旅のお供から脱退する。でも、その時にはヒロインのリリィを口説いて彼女も共に脱退。

 慣れない恋の感情に悩んだロブの愛の告白シーンが良かった。早口言葉よりも言うのが難しい言葉として「好き」の言葉をリリィに送る。ここはちょっと胸キュンだった。

 

 テムと一緒に旅した仲間のモリスとは海で遭難して別れてしまう。後に、モリスは海でリヴァイアサンに食われ、そしていつの間にか自分もリヴァイアサンになってしまったと分かる。リヴァイアサンとして生きるのも悪くないと想い、モリスは魂は同じままにリヴァイアサンに姿を変えて海で生きる道を行く。そして旅のお供から抜ける。

 これに対してロブの受け入れ対応が素早く、人間の体で満足しているのは案外人間だけかもしれないという子供らしくない深いことを言って割り切る。モリスは今まで一緒に旅した仲間で、幼馴染でもあるのにそんなに簡単に割り切って先に進むんだと思ってしまった。魂の器として人間の体に執着することに違和感を抱く者も少なからずいるのかと深く考えてしまうエピソードだった。そんなモリスはラストのバベルの塔では人間でもリヴァイアサンでもないただの魂だけの存在となって再登場する。

 

 子供向けではない奴隷貿易カニバリズムの要素が物語に盛り込まれている。

 奴隷を買う店があり、そこにはテム達と歳が変わらない少年奴隷もいる。店のおっさんが、同じ歳でもこういう悲惨な運命を辿る者もいるのだと語るのが印象的だった。

 女奴隷が40年間一つの編み物をするという話もあり、娘の頃に取り掛かって終わった時にはもうおばさんになると想定される。

 こういうエピソードを見ると、私達は実に危機感のない平和な生活を送れていると分かる。

 

 地域で食うものが取れないからやむなく食人行為を行う先住民が登場し、テム達は捕まってステーキにされそうになる。そこでカレンのペットの豚のペギーが自ら炎に飛び込んで焼豚になる。自分を食物として捧げることで、先住民達に主のカレンを開放させる覚悟ある行動だった。可愛い豚のペギーがあんな姿になってその後はおいしく食べられてしまうイベントがかなりトラウマだった。

 

 表現はやんわり目だけど、伝えている内容は残酷で悲惨なものだった。そしてこれらはフィクションではなくよその国で実際にあることだから、それだけに強いメッセージとして心に残った。

 

 テムが挑むロシアングラス大会もなかなか印象深いエピソードだった。酒を注いだグラスがたくさんあって、その内ひとつだけには毒が入っている。この状態でロシアンルーレットを行う。毒入りを避けて生き残った者には大金が入るという闇のゲームである。

 テムと勝負した男は、ラスト一杯で毒確定でも命を賭けた以上は飲み干すと言って毒を飲んで絶命する。

 後に男が残した遺書を読むと、その内容が重々しくて少し鬱要素があった。

 

 ラストのバベルの塔では、テムの両親と同じく肉体を失って魂だけになった者が登場する。その一人に話しかけると、肉体を失い生死の概念がなくなった不老不死状態で生きて何が面白いのか、これなら死に怯えて生きる人間の体の時の方が充実していたと言う。この言葉は印象深く、ただ生きるといっても、人として充実した実感が伴わないと意味がないと思えるものだった。

 

 旅の途中でテムとカレンは少しずつ惹かれ合う。ラスボス撃退後の地球に戻る前のテムとカレンの会話が良い。新しい世界へと変わった地球に帰ると、二人は互いを忘れてしまう。それでもテムは、100年かかっても1000年かかってもカレンを探し出すと誓う。このやり取りはジーンと来た。

 

 赤い宝石はクリア時には30個しか集めることが出来ず、宝石商ジェムの秘密が明かされるための50個には遠く及ばなかった。

 取りこぼしがないように注意したつもりが20個も取り損ねているとは……。ジェムのことは気になったのであとからネットで調べてみた。ネットて便利。ジェムの秘密が知れて良かった。

 

ガイア幻想紀

ガイア幻想紀

 

 

 

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