こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

独立した三つの物語に魅せられた「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」は、2019年1月から3月にかけて3ヶ月連続で上映された三部作の劇場版アニメ。

 

 テレビシリーズの番外編的独立した三つの物語で構成されている。各話約1時間。

 

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 今年10月からスタートした「PSYCHO-PASS 3」を視聴しながら、無事パッケージ化が済んだこちらも視聴した。まだ数話しか放送していない「3」もなかなかの出来だが、こちらの「SS」もかなりの破壊力がある傑作だった。

 

 ここへ来て想うが、2012年に開始して今日まで続く息の長いシリーズになったものだ。

 

 畳み掛けるように3ヶ月連続で放ったこの劇場版三部作は大変完成度の高いもので、今作を見れたことはファンとして嬉しかった。別にファンでなくとも、これらを単体で見れば感動する出来だったと想う。シナリオ、映像、芝居、各話のゲスト声優、どれもこれもが良かった。

 

 三部作は、主要人物、時と場所も変えて展開する独立した物語になっている。テレビシリーズの「いつもの街」を離れた地が舞台になっているのが新鮮だった。各地はしっかりロケをしているらしく、背景画が素晴らしい。

 

 素人目に見ても各話の格闘シーンの完成度が高いことが分かる出来になっている。オーディオコメンタリーによれば、これらはアクション俳優に実際に演じてもらって撮影しているという。職人のこだわりが見られるのがすばらしい。

 

 各話共にスタートしていきなり印象づけてくる要素がOP映像の発色の良さ。大昔の淡い色合いのアニメや特撮を見返すことに慣れてしまっている私にとって、2019年に作られたアニメの発色の良さは目に入れてびっくりするものだった。

 

 では、全三話をそれぞれ振り返ろうと想う。

 

 

第1作「Case.1『罪と罰』」

 非凡人は凡人の信ずる道徳を超越しても良いという概念をテーマに含んだあの名作「罪と罰」をタイトルに持ってきている。

 悪さをする老婆を若者が殺すという本の内容にキャラクターが触れる箇所もある。ドストエフスキーの描く大長編傑作から引っ張ったテーマ性が奥深い。真の道徳を求めて迷走した末、人の道を踏み謝る人間の真実性と同時に愚かさも描かれる重厚なストーリーが展開した。シナリオはグッと引き込まれるものがあって良かった。

 

 霜月美佳と宜野座伸元の二人をメインに物語が展開する。

 

 脱走した潜在犯を捕まえて雪山の施設に送り返したところ、その施設の館長が黒い事件に手を染めていたと分かる。霜月、宜野座、六合塚の3人で悪者を黙らせる作戦が展開する。

 

 当初は収容されている潜在犯達からカリスマ的支持を集めていた館長が、実は潜在犯達を利用して危険できつくて汚い仕事をさせていたことが発覚する。

 利用した潜在犯達に対して施設長が吐いた「ゴミは磨いてもゴミ」という毒コメントが忘れられない。

 

 テレビシリーズでは、悪いけどけっこう無能な感じが出ていた霜月が、今回は大活躍して頼もしい。ただ銃をぶっ放すだけに終わらず、探偵のように悪者の悪の証拠をボイスレコーダーに録って提示するなど、頭の切れるところも見せた。

 人を動かすのは理屈ではなく心だと言い切った霜月は格好良かった。

 

 二、三失敗しても前に前に出ていく霜月のメンタルはなかなかのものだし、その観点からのびしろのある女だったのかもしれないと気づく。

 

 序盤は先輩の常守にくってかかるのがうざいし、宜野座にギャンギャンうるさいことを言うじゃじゃ馬ギャル感も出していたが、このエピソードの最後には一人前の監視官に成長したのではないかと思える。

 現在放送中のテレビシリーズ三期ではすっかり出世してリーダーにもなっている彼女の成長の記録が見れたのは良かった。あとは霜月のこととか抜きに、彼女を演じたあやねる(佐倉綾音)が好きなので声を聴けただけでごちそうさまでした。映像特典の舞台挨拶でのあやねるが美しかった。

 

 ペーペーだった霜月を宜野座がしっかり認めることで二人のバディ感も強まっていく。この感じがよかった。

 宜野座が最後に言った「君たちふたりの猟犬でよかった」のセリフが忘れられない。常守だけでなく、霜月のことも認めたということが分かるこの流れが良かった。

 

 狡噛がペーペーだった頃の常守の面倒を見ていたように、こっちでは宜野座が良い面倒役になっている。宜野座もすっかり大人になったなと思え、彼の成長にも感動した。

 

 敵から助けた少年に宜野座が、かつて悩んでいる親友を助けることが出来なかったと明かす。ここは狡噛のことを言ってるのかと想うとジーンときた。

 

 一番熱かった展開は宜野座の戦闘シーン。

 名優小山力也演じるロン毛のおっさん傭兵とガチでやりあうところは凄かった。というか宜野座ってこんなに強かったんだと驚いた。

 義手を敵に打ち込んでまでギリギリの格闘を行う。向こうは殺戮マシンに乗ってくるけど宜野座は武力と知力をもってこれを駆逐する。

 

 谷に落ちそうになった宜野座を助けにきた六合塚のことが、宜野座には一瞬狡噛に見えたあのシーンもまた良かった。

 

 現在放送中のテレビシリーズ三期とこのエピソードを見て、それまではちょっとムカつくところもあった霜月が良い女に見えて好きになった。

 

 

第2作「Case.2『First Guardian』」

 物語の時間軸はテレビ一期よりも更に前。常守が合流する前のあの頃の懐かしいチームメンバーが登場する。

 

 意外にも今回の主役は須郷徹平。須藤はテレビ二期から出て来た執行官だが、無口で何を考えているか分からない不気味なところもあった。そんな彼の過去を描いたこのエピソードを見ると彼の本来の人となりが分かった。

 

 暗いイメージがあった須郷が国防軍に所属していた頃の話が展開し、最初の方だけは同僚達と楽しくバーベキューするなどして平和。しかしその後には軍のお偉いさんの悪巧みに巻き込まれたりして色相の悪化に繋がる運命を辿る。

 

 兵士を騙して毒ガスを撒き散らす作戦を展開した軍のおっさん共がマジで悪い。オチで悪さをしたおっさんは始末するが、須郷のかつての仲間は殺されて最後には自分一人になるという半分はバッドエンドとなる。

 

 須郷と共に活躍するのが現在お亡くなりになっている征陸智己と青柳璃彩の二人。

 

 今回は征陸のとっつぁんが格好良すぎた。実はこんなところで須郷と接点を持っていたとは意外だった。須郷が公安に合流するまでの道を開いたのは彼だった。

 

 普段はクールな征陸だが、妻子に手を出すという脅しにあえばお偉いさん相手でもキレるのが男らしい。「これは俺のヤマだ!」のセリフは勇ましくて惚れる。

 

 夕陽の中で征陸と須郷が会話を行う後半シーンは必見。

 正義に目覚めると病みつきになるという刑事の矜持を須郷に語って聞かせるところが格好良すぎた。

 

 懐かしのキャラの青柳も活躍する。すごく仕事が出来そうな色っぽくて美しいヒロインである。

 親父に向かってギャンギャン吠えるあの日のギノに注意する彼女の同級生感がなんか良かった。ギノは親父を大事にしろって想う。

 ちなみに私は、テレビ二期の青柳の退場の仕方について未だに納得のいかないものがある。青柳には生き残って欲しかった。

 

 青柳が征陸のことを大変高く買っていることを須郷に明かすところが良かった。年下からも尊敬される良き刑事、良き人間だったことが分かる。

 

 今回も格闘シーンの迫力があって凄かったし、ドローンを飛ばすシーンもリアルだった。

 

 須郷、征陸、青柳達の物語が展開する一方で、狡噛、宜野座、縢のチームの動きも描かれる。テレビ一期の懐かしのメンバーで仕事をしているのが見られて良かった。「SS」一話であれだけクールな大人になっているギノが、こちらではまだギャンギャンうるさい若造で出てくる。このギャップから、宜野座という男の歴史が辿れて良い。

 

 最初と最後に少しだけ出てくる気になるヒロインが花城フレデリカである。大変美しくてセクシーなヒロインなので気になっていたが詳しく触れずに終わった。しかし彼女はSS三作目で登場するので安心した。

 

 征陸を演じた有本欽隆の芝居が見れる最後の作品がこれだった。

 オーディオコメンタリーやBD特典映像の舞台イベントでもスタッフ、キャストが亡くなった有本欽隆のことに触れている。改めて良い役者だったと想う。出演作の内、世に出したラストがこの芝居なら有終の美を飾ったと言えよう。

 

 

第3作「Case.3『恩讐の彼方に__』」

 殺人者と復讐者がクリアな人間として復活するまでを描いた菊池寛の短編小説「恩讐の彼方に」の内容をテーマに引っ張り、広大なチベットの地で狡噛慎也の物語が展開する。

 政治を絡めた悪巧みをする連中を狡噛達が討伐する正義の物語だった。

 遂に真打狡噛登場ということで大変興奮して物語を辿った。

 

 今回はまず美麗に描かれるチベットの景色が素晴らしいと言えよう。チベットの地に張り巡らされた旗の揺れ具合の描き方が凄かった。余談だが、あれを見ると運動会の万国旗を思い出し、同時に運動会が嫌いなのにアレの準備係だったことも思い出してちょっと萎えた。

 

 傭兵稼業をしている狡噛の鬱屈とした人生に光を与えた美しきヒロインのテンジンのことが好きになる。そしてヒロインといえばもうひとり、テンジンよりもずっとアダルトな魅力を出して画面に華を添えた花城フレデリカの活躍も良かった。

 

 テンジン、花城フレデリカの両ヒロインがお風呂に入るシーンは美しかった。ここを描く時には男の職人にやらせると余計にエロ要素が働くからということで、女性の職人で仕事にかかったという。オーディオコメンタリーではこのようなためになるお話が聞けた。

 この入浴シーンについては確かに「エロ < 美」の関係性が成り立っていて大変目の保養になったといえる。

「Case.1『罪と罰』」では負傷したギノが服を脱いで包帯を巻くシーンで乳首が解禁となっているが、こちらでは入浴シーンで花城フレデリカのそれが解禁となっている。うん、良かった。

 

 フレデリカがとにかくエロくて美しい。しかも強くて、ロングライフルで敵を狙撃することもやってのける。銃を構える美女、これには萌える。そして演じた本田貴子の声が美声でエロい。テンジンも含めた二人のヒロインの評価は大変高い(個人的に)。

 

 心理学の心得があるフレデリカが、ヘビースモーカーの狡噛を見て、ヘビースモーカーになる人間の心理を説く会話シーンは印象的だった。「美しくて強い上に頭も良いのか!」とフレデリカのヒロイン性の強さに驚いた。ちなみに私はタバコをまったくやらないのでヘビースモーカーの心理など全く分からない。

 

 テンジンに武術指南する狡噛の良き監督者ぶりと良きお父さん感が印象的だった。女性陣に料理を振る舞い、テンジンに「歯を磨いて寝ろ」と指摘する狡噛の家庭的な一面が見れたのはギャップ萌えだった。序盤でばあさんを助けてお礼に宝石をもらっても「助けたいから助けただけ」と言ってそれを受け取らない狡噛の男前ぶりにも惚れるものがあった。

 

 高木渉演じるおっさんが狡噛に話して聞かせた「雨の中で踊る男の話」がププッと笑える間抜けな内容で忘れられない。「雨に唄えば」のワンシーンを思い出した。

 

  本作のキーワードにもなったテンジンが読んでいる本の「恩讐の彼方に」は二年半程前に読んでいたので勉強済だった。テンジンが読んでいたのは古いもので、まだ表紙がない古の時代の岩波文庫版だったのかな?とか思った。

 

 走行中の列車上での激戦を描いた後半シーンは圧巻の出来だった。やはり昔から興奮するシチュの一つが、走る列車の上でガチバトルするというコレ。

 

 格闘シーン、銃撃戦シーンは迫力があった。加えてバトルマシンも投入してメカ戦も展開された。

 

 最後には狡噛が日本に帰ろうと決心して終わる。

 テレビ三期では、日本に帰った狡噛が本編にがっつり絡んで欲しい。

 

 

 

 私の色相はクリアです。

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