こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

節度ある都会の暴れ者「アーバンチャンピオン」

 

 

 1984年発売のファミコン初の対戦格闘ゲームである。

 名作格闘ゲームの「ストリートファイター」のようにマジな格闘家達が鎬(しのぎ)を削るストリートファイトも華と夢があって良いが、本来ストリートファイトとは一歩街に踏み込めば遭遇するような何ともローカルなお祭りであって知らぬ間に極身近で繰り広げられていたりするものなのだ。何を隠そうこの私だってうらびれた田舎の路地裏でそれはもう日々あくせくとファイトしたものだ。一体何人の血の気豊富な人の皮を被ったケダモノ共を硬く冷たいコンクリート上に沈めてきたかわからない。 

 

 urban(アーバン)とは都会的という意味でこの作品は都会で血をたぎらせた若者がストリートファイトするというどこかの誰かさんの青春をそのまま映し出したようなゲームなのだ。格闘に通ずる私から言えば格闘はプロの華麗なる技よりも素人の型にはまらないどこまでも法則性の無い故にどこまでも危険な戦闘スタイルを見るのがおもしろいのである。昔から言うが喧嘩にルールは無い。

 

 対戦格闘ゲームの本作は一対一で殴りあい、敵を画面端に追い詰めてゆく。相手を画面から消えるまでに追い詰めると1ラウンド取ったことになる。そして次のラウンドが始まる。これを続けて行き3ラウンドを取られると敗北者はマンホールにぶち込まれるという酷い終わり方になる。強弱のパンチを使いわけ防御と回避の行動も駆使することが勝利の鍵となる。

 闘いを征した者は勝利の美酒に酔いしれ、そして惨めな敗北者はマンホールの内で無念の涙を呑む。ストリートファイトは強い、弱いを簡単に決められる単純明快でありながら残酷な競技なのである。

 

 都会が舞台なので我々が嗜んだ田舎のストリートファイトと違って住人に簡単に目撃されるのである。お店の前でプレイヤー達はやり合っているので、そこに住んでいる住民が顔を出して鉢植えを落としてくるという闘いの横槍も入ることがある。鉢植えを人の頭目掛けて落とす凶行に及ぶ住民が登場するのは名作ゲーム「クレイジークライマー」でも見られるケースである。

 都会ならではの仕掛けとして警邏警官に遭遇する可能性が高いということを反映したゲームシステムになっている。田舎ならパトカーを見るのも珍しい。治安の悪い都会ではパトカーによる警官のパトロールが徹底している。プレイヤー達が殴り合っていると前をパトカーが通るのだがこの際は両者離れてそれぞれ画面端まで移動して「何もなかったですよ」みたいな顔をして一旦バトルがストップする。パトカーが通り過ぎて見えなくなったら再びバトルを開始する。それまでこちらが攻め勝っていても負けていても仕切りなおしで端からやり直しになるのでパトカーが来る直前にこちらが攻め勝っていたらちょっと腹が立つ。

 都会の暴れ者は田舎以上に警察が、そして法律が身近にあるのでそれなりに節度ある暴れ者のようだ。テーマが野蛮なゲームなのでマナーの良い任天堂側で一応は法令順守を呼びかけて組み込まれたシステムなのかもしれないと私独自に考えている。公共での暴力行為は犯罪であるということをくれぐれも忘れずにプレイして欲しい。

 

 地元の路地裏に置いてきたはずのファイターの血が騒ぎ出す我が青春の格闘ゲームである。そんな私はカントリーチャンピオンであった。

 

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