こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

黒歴史なんて言わせない「超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-」

超時空要塞マクロスⅡ -LOVERS AGAIN-」は1992年5月21日 から11月21日にかけて発表された全6話のOVA作品。

 

 マクロスシリーズ二作目にあたる作品。初代マクロス放送から10周年を記念して製作された。

 

 スタジオぬえが関与していないこと、河森正治が「マクロス続編はやらない」と言った中で製作されたことでファンからはマクロス黒歴史と言われていたりする。でも、普通に面白かったし、話も短くまとまって見やすかった。そしてヒロインのイシュタルは可愛かった。個人的にはアリな作品だった。

 

超時空要塞マクロスII Blu-ray Box (期間限定生産: 2015年7月24日迄)

 

 本作は、初代マクロスから約80年後の未来を描いている。

 男性芸能レポーターの神崎ヒビキ、軍所属のヴァルキリー隊エースパイロットのシルビー・ジーナ、そして異星人の娘イシュタルの三人をメインに据え、地球に敵対する新たな異星人マルドゥークとの戦いとその先の平和までを描く。

 

 男女三角形、歌姫、可変型戦闘機というマクロス要素を踏襲しつつ、新たな設定も取り入れられている。

 

 主人公男性ヒビキが軍のエースパイロットではなく報道関係者。一応ヴァルキリーの操作資格を持っているので乗るシーンはあるものの、主にヴァルキリーの戦闘シーンは女性のシルビーが担当。女性パイロットは斬新な設定だった。

 

 ミンメイアタックの知恵が地球側にあるので、それで敵に対抗するも、今回は敵のマルドゥークの方がより強力な歌の力を有している。敵側が歌を使って強化されるパターンも新しい。ゼントラーディを洗脳して操る点も印象的だった。

 

 ヒビキが報道関係の仕事をしているのはとってつけたおまけ設定ではなく、しっかりした職業人しての生き様も描かれている。

 ヒビキが、地球軍とマルドゥーク軍との戦闘記録を収めた映像を会社に提出すると、自軍が敗退した事実が民衆にバレることを恐れた地球軍が圧力をかけ、ニュースで流す映像を全然違うものに差し替える。それにヒビキは激しく怒る。

 このような圧力や忖度によって事実が曲げられることはしばしばあるのだろうけど、やっぱり良くないねとも想った。また、録画された映像の全体をちょちょいと切って貼ることで、事実とはまったく違う画が完成するという詐欺的編集トリックの恐ろしさも理解できた。

 いつの世も報道に足りない物と求める物は同じで、それというのがネタの「真実性」である。マクロスという銀河ロマンスに引っ掛けて報道界に一石を投じた演出にはキラリと光るものがある。私は本作が描いたこの点を非常に気に入ってる。

 

 30分で6話しかないからマクロスの三大要素をたっぷり感じられたかと言えばそうでもないのだが、それでも光るのは歌姫ヒロイン イシュタルの存在。演じた笠原弘子の美声がツボで、芝居声も歌声も好き。この人は役者よりも歌手のイメージの方が強い。

 地球文化に触れたイシュタルが、地球とマルドゥークとの戦いを止めようと奔走する姿は健気。擦れていない清純ヒロインで良かった。

 ヒビキの友人マッシュがおかまで、声が草尾毅なのが意外だった。このおかまの友人の見立てでイシュタルがロングヘアーからショートカットになるのだが、これがまた良い。髪を短くしたら「地獄先生ぬ~べ~」のゆきめみたいに見えた。

 

 三角関係のドロドロ感はなく最後は爽やかに終わる。

 ラストで地球を後にするイシュタルがシルビーにヒビキをよろしくと頼み、最後に「素敵なライバル」と声掛けて宇宙船に乗り込むところが好き過ぎる。このセリフで泣きそうになった。行為で察することが出来るものの、はっきりと好きだの嫌いだのを言い合う三角関係ではなかった。そこへ来てイシュタルのこのセリフを聴けば、ヒビキのことが好きだったとはっきり分かる。良きヒロインだった。

 

 作画スタッフが同じだったということから、近しい時期にテレビ放送していたアニメ「宇宙の騎士テッカマンブレード」の主人公Dボウイがモブキャラで登場している。テッカマンブレードも見応えある良きアニメだった。

 

 BDのキャスト・スタッフオーディオコメンタリーでは貴重な話が聴けた。

 イシュタルが戦場で歌う時に着る衣装は、「学園祭の女王」の異名を持つ杉本彩のステージ衣装をヒントにしているとのこと。杉本彩と言えば「ゴージャス」が名曲。

 当時は十分な出荷数を出し、ビデオセールスは好調だったけれど、同時期に発売したOVA機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」がもっと売れたので売上げランキング1位を取れないことがあったとも分かった。

 

 色々言われても、この作品がマクロスシリーズを後々の世まで繋げる初の続編になったことは事実。シリーズの幅を広げるために作られた重要なポジションの一作となった。

 

 

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