こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

スポ根テニスものの傑作「エースをねらえ!」

エースをねらえ!」は1973年10月から1974年3月にかけて放送された全26話のテレビアニメ。

 

 日本漫画界と、少年少女達のテニス魂を大いに盛り上げた一作である。私の母も本作の漫画を読んで青春時代を楽しんでいたそうな。

 最近なら「テニスの王子様」あたりがテニス競技人口増加に貢献したテニス作品だろうが、それより前の時代だとコレだな。

 少女漫画誌週刊マーガレット」掲載作品にしては熱量が豊富ないわゆるスポ根漫画だった。ゆとり世代で育てるには難しい熱き闘志と不屈の精神を、か弱き乙女の主人公岡ひろみが身につけて行く姿には時に涙する。

 

 その昔BSで流れていたのをちょろちょろっとチェックしたことがあるし、上戸彩主演の実写ドラマ版も楽しんだので、大まかな話は知っている。それにしてもドラマの上戸彩は可愛かった。

 

 アニメ界屈指の名作ということなので、今回改めて全話チェックしたわけだが、これが大変面白く、感動する点も多々あったのでその辺のことを綴りたい。

  

エースをねらえ!Blu-ray BOX(5枚組)

 

内容

 県立西高校に入学した岡ひろみは、超高校級テニスプレイヤーのお蝶夫人(本名は竜崎麗香)に憧れてテニス部に入部する。

 

 入部したてでペーペーの素人のひろみは、名コーチ宗方仁によってレギュラー選手に選ばれ、早くも大会試合に出場するようになる。

 テニス王国西高のレギュラー選手が競技を始めたばかりの素人であることに怒りと嫉妬心を燃やすテニス部員達は、ひろみに多くの嫌がらせを行う。

 

 部員からの嫌がらせ、宗方のハードな特訓、色恋沙汰など、青春のあれこれを経て、ひろみはテニスが好きになり、その分実力も伸ばして行く。

 やがてひろみは、憧れだったお蝶夫人と本気でぶつかり合うようになる。

 

感想

 まずはOP曲。これが良い。アニメを知らずとも、この歌だけは知っているという人も多いはず。大杉久美子の伸びやかなボーカルがお耳に心地よい。OPとはかなり雰囲気を異にするED曲も味わい深い。

 

 演出は出崎統。この人の関わる作品はクセのある表現技法が用いられることで印象的。

 

 やがては暑苦しい展開になるスポ根ものの本作だが、記念すべき第一話には実に少女漫画らしい表現が見られた。一話冒頭の岡ひろみ作中最初のセリフは、乙女のポエムちっくなモノローグに始まる。その内容が「りんごは絶対青い方が好き」「誰もいない秋の海も好き」というもので、いかにも10代乙女って感じのものだった。ここの入りはとても好き。でも、りんごは赤の方がいいだろうとは思った。

 

 本作はなんだかんだあっても高みへとステージを上げていく岡ひろみのシンデレラストーリーになっている。

 

 新人でいきなり大会デビュー出来たひろみだが、順風満帆にはいかない。

 

 テニス王国西高を前年まで盛り上げて来たのは、別格選手のお蝶夫人と、4人の四天王。それまでのテニス大会のレギュラーはこの5人で、ひろみの登場により四天王の一人音羽京子がレギュラーを落とされる。そして復讐に燃えるこの音羽を筆頭にして、テニス部員達はひろみに嫌がらせ行為をするようになる。

 

 最初の内は音羽のひろみイビリがひどく、マジでクソ女に描かれている。負の衝動とは言え、音羽の行動力はすごい。女の嫉妬心は行動力にブーストをかけることになる。 

 音羽のいやがらせは、ひろみのラケットを隠す、敵選手にひろみの情報を流す、普通に悪口を言うなどにはじまり、「ガラスの仮面」にも見られた靴に画鋲を入れるという古の嫌がらせもやってみせる。

 

 これに対して宗方コーチが特に何も言わないのも問題。肝心のテニスの指導においても言葉は最低限に済ませる人で、現代の教育的視点で言うと、テニス以外においても生徒の指導はある程度行うべきだと想う。

 

 しかし音羽はただのクソ女では終わらない。心からテニスを愛するからこそレギュラー選手にこだわり、ひろみを陥れるためには何でも行ってきた。そして手首を痛めているにも関わらず、テニス部を辞めたくないために症状が悪化するまで誰にも言わずに苦しみの中にいた。

 宗方コーチの言葉で改心した音羽は、その後ひろみを教え導く良き先輩役に回る。クソみたいなイビリをしていたこともあったけど、腕は確かなもので、ひろみに足りないものをきっちり教えることもした。

 音羽はテニスプレイヤーとしての最後の試合でひろみとダブルスを組む。痛みの中でもテニスを楽しむ音羽の魂に惚れた。かなり好きなキャラだった。

 

 ひろみのテニス人生の壁は、嫌がらせに加え、宗方コーチのかなりハードは特訓にもある。部員からの嫌がらせだけでも、並のハートの持ち主だったらもう逃げたくなるものだけど、ひろみはかなり打たれ強く、なによりもテニスが好きなのでなかなか退部しない。

 

 練習の後にはひろみの実家の自室シーンに入る。そこでは、学校であった良い事も悪いことも含めて、猫のゴエモンに語ることで心のカウセリングとしているようだ。ひろみが純粋でいい子なんだよな。このシーンを見れば、ハム太郎の毎回の終わりでロコちゃんが日記を書いてハム太郎に語りかけているシーンを思い出す。誰にでも、何でも語れば、それで精神が安らぐものだ。

 ゴエモンの寝るバスケットに「ゴエモン領」と書いているのが可愛らしい。

 

 ひろみと同格で物語の中心となるのがお蝶夫人。このお蝶夫人がとても良いキャラ。やはり気品があり美しい。お嬢様然とした金髪のくるくるヘアーも映える。ここについては、テニス部を離れた一学生としても別格のお嬢様。他のテニス部員は皆白いウェアなのに対し、お蝶夫人だけは紫のウェアで練習に来る。

 ひろみよりも作品の看板キャラだと想う。私のお兄ちゃんも「エースをねらえ」の内容は全然知らないけどお蝶夫人の存在だけは知っていると言う。

 お蝶夫人を演じた池田昌子の気品と色気と母性が混ざったボイスがとても良い。

 

 お蝶夫人が、多くの言葉を持ちいらずとも表情だけで物を言わせる流れが印象的。

 ひろみに対しては最初こそ可愛い後輩として接していたが、ひろみが本気で自分を目指すなら同じ選手として叩き潰すという気持ちを顔だけでもひろみと視聴者に伝えていた。見た目は綺麗なお嬢様でも、内には熱き闘志を燃やしている。

 

 お蝶夫人がひろみに対して「私かテニスかどちらかを選べ」と迫るところは盛り上がるポイントだった。

 ひろみはこのことが原因で一度はテニスラケットに穴を開けて退部することを考えるのだが、あれだけしごかれても自分はテニスが好きで、それを捨てられないと決心する。

 ひろみが一度は捨てたラケットを友人マキが拾って来て「このH.Oのラケットは誰のものなの!」と問い、ひろみがそれは自分ので自分はテニスが好きと叫ぶところが泣ける。マキが面倒見の良いすごく良い子。

 後輩を追い込んだが、お蝶夫人は確実にひろみを鍛えている。

 

 弾丸サーブが武器の「加賀のお蘭」とお蝶夫人との対決がすごかった。お蘭の強烈な打球でお蝶夫人のラケットが折れるのだが、お蝶夫人はそこで戦意喪失せず、ラケットの柄で打ち返してマッチポイントを勝ち取る。ピンチを前にしても不屈の闘志を燃やすプレイスタイルは素晴らしい。

 

 ラストでは強化合宿の中でひろみが憧れのお蝶夫人とガチ対決する。

 ラケットを握りすぎたひろみは腕から出血する。でも腕とラケットを包帯でぐるぐる巻に固定して試合を続ける。火花散らす二人の乙女のガチ対決は手に汗を握る展開だった。

 男子部員の藤堂さんとの恋愛をお預けにしても特訓に打ち込んだ末、ひろみは遂にお蝶夫人に一勝する。

 お蝶夫人がひろみを強者と認めて握手する最終回は、そんじょそこらの少女漫画の熱量ではなかった。

 

 強化合宿を終えた先の話は続編アニメで描かれる。そちらも視聴してこようと想う。

 

 

 

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