こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

水が美しいラブファンタジー「きみと、波にのれたら」

「きみと、波にのれたら」は、2019年6月21日に公開したアニメ映画。

 

 クセが強いアニメを作る印象がある湯浅政明監督作品である。

夜明け告げるルーのうた」以来の視聴となる湯浅作品だったが、今回は随分爽やかでポップな作風だった。総合的に言うと好きな作品である。令和時代最初期の良作アニメ映画となったのではなかろうか。

 

 タイトルを見て「彼女が水着にきがえたら」「波の数だけ抱きしめて」のホイチョイ三部作の内二作を思い出した。ヒロインのひな子がサーファーで海が舞台となるシーンが多いことも共通する。

 

きみと、波にのれたら

 
内容

 とある火事をきっかけに知り合った向水ひな子(むかいみず ひなこ)と雛罌粟港(ひなげし みなと)は恋人関係になる。愛を深めてラブラブになる二人だったが、港が事故死したことでひな子は塞ぎがちになる。

 そんなある時、二人の想い出の曲をひな子が歌えば、死んだはずの港が水の中に現れることが分かる。

 サーファーとして波に乗れても、私生活で人生の波に乗れないひな子が無事波に乗るその時までサポートし、その役目が終わると今度こそ港は成仏して消える。

 人を助ける仕事をすると決意したひな子は最終的にライフセーバーを目指す。

 ひな子という一人の女が、人生における幸福の絶頂とそこから急降下した絶望を味わい、最後には再起を果たすという物語が展開する。

 

感想

 前情報無しで見たので、港が急に死んだことにはびっくりした。

 それまでのシーンがラブラブ過ぎたのでこの急降下は意外。ひな子と港がイチャつくシーンは見ていて恥ずかしい。これを劇場で見ていたらどんな感じなんだろうと思った。

 飯の時にも港と手を繋ぎたいからということで、左手で飯を食べる練習をしてくるひな子には恥ずかしいけど可愛いので萌えた。

 

 水中に港を召喚する例の歌が劇中で何度も歌われる。ひな子と港の二人で歌って、デートシーンを流すところは特に恥ずかしいラブラブ感が出ていた。歌唱の途中に二人の笑いを入れたり「せーの」の掛け声を入れたりするのはリアルな男女デート感があって良かった。ただし重ねて言うが見ているとどうしても恥ずかしくなる。

 

 金の鍵をかける恋のジンクスはどこかで聞いたことがあるやつだと想った。ここで紙にカップルの名前を書くシーンがある。視聴者全員が想ったであろうが、港の名字の「雛罌粟(ひなげし)」の字が見慣れない上に難しく、そして画数が多いので覚えられない。そんなわけで恋人のひな子も彼氏の名前を紙に書くことが出来ない。これを受けて港が「自分の名字なのに何で書けない」的な文句をボソリと言う。思うにこれは、このまま行けば結婚してひな子の名字も「雛罌粟」になるのだから書けるようになっておけということを指摘したのだろう。分かるとちょっと萌えたシーンだった。

 

 卵からかえったウミガメの赤ちゃんが一生懸命海を目指すシーンは可愛かった。その頑張りにエールをもらった港の感受性も豊かで良い。

 なんでも卒なくこなすことで飲み込みが良い青年に見える港が、影ではとても努力していたと妹の口から語られるシーンがある。港が良いヤツで好きになる設定だった。

 

 港が死んでからは水に話しかけるようになるひな子が周りから見るとやはり異常。港を小さな水筒に入れて散歩するのを見ると「南くんの恋人」みたいだと想った。イルカのビニル人形に港が入ってデートするのはちょっと面白かった。しかし、これらを目撃した山葵がマジで心配しに来る気持ちはよく分かる。

 水があればどこでも召喚可能な港を花屋のトイレにまで召喚するのは止めてあげて欲しい。

 

 半分くらい見たところでは、港の死を受け入れられないひな子が奇行に走っているように見えなくもないのだが、それで終わらず、最後には港の死を乗り越えて人生の波に乗るひな子の人生が描かれて良かった。見る者の背中を押してくれる作風だったと思う。

 

 ひな子も可愛かったが、かなり険のある港の妹の陽子も良かった。序盤の陽子は恋なんてアホのすることだと言うが、山葵に恋したラストでは恋しないのがアホだと全く逆のことを言う。恋すれば世界観が180度変わって見える体験をレポートしてくれた良きキャラだった。

 

 1月の寒い時期に見たけどキラキラ光る海や明るい街並み、消防隊の訓練シーンなどを見ればしっかり夏を感じる。画がとても綺麗。

 

 消防士達の訓練を見れば、学校の社会科見学で消防署に行ったことを思い出す。ホースのオスとメスの金具はしっかり固定すること、放水中にうっかり手を放してホースが暴れないようしっかり握ることを注意点して習った。最初の方で若い隊員の山葵がやらかすのを見て、あの教えを強く思い出した。

 

 海の波や死後に港が登場するシーンでの水の描写がとても綺麗だった。後半の火事のシーンで港が操る水の塊がビルを登っていくシーンは不思議な美しさがあった。その後、ひな子がサーフィンしながらビルを降りてくるシーンは本作最大の盛り上がりポイントとなる美しいシーンだった。

 

 水もそうだが、消防士の仕事をテーマにしたことから火もしっかり描かれる。冒頭と後半で2回も火事が起きる。花火などの火の描写も美しい。 

 2回の火事を起こしたのが同じ不良連中で、廃墟で無断で花火をしたのが出火原因だった。ただのチンピラにしては羽振りが良く、スーパーのしょぼいのと違ってしっかりした打ち上げ花火を上げている。打ち上げ花火はプロ資格がない者が打ち上げると違法で捕まると一回目の火事で消防隊が注意していた。こいつらはその辺の知識を「あの花」で勉強しなかったのかと想った。二回目はご丁寧に職人を呼んでから廃墟に不法侵入して火事を起こしている。爽やかで良い映画だったが、この派手好きでアホなチンピラ達は嫌いだった。

 

 ヒロインのひな子が元気で明るくて可愛い。髪を結んだり下ろしたりして魅せ方も種類があって良かった。

 

 オムライスがラブなキーアイテムとなる作品で、ひな子が卵料理が出来ないのに対し、恋人の港はオムライスを上手に仕上げるという対照的な点が描かれている。そんな二人だが、ラブな想いが惹かれ合うのは関係ないと来ている。

 オムライスがすごく美味しそうに描かれていた。小道具も印象的で、港がキャンプセットで料理し、コーヒーを淹れるシーンは物珍しかった。コーヒーの豆が膨らむのは炭酸ガスが出ているからという港の口から聴けるうんちくも印象的。

 

 他にも印象的な食い物が登場するのが特徴だった。ひな子と港がデートで食うデカイハンバーガー、たくさん種類がある喫茶店のコーヒー、真ん中をくり抜いてコーヒーを流し込んで食べるケーキなどがそうだった。以外と飯テロ要素も入れ込んだ作品になっていた。

 BDの特典ディスクには、キャストが名店のオムライスを実際に食いに行く映像が入っていて、どれもすごく美味そうだった。

 

きみと、波にのれたら Blu-ray通常版

きみと、波にのれたら Blu-ray通常版

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: Blu-ray
 

 

 私も現在丘にいながら人生の波に乗っています。

 

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