こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

訃報を受け、国民的お父さんの声「藤原啓治」を振り返る

 名優藤原啓治の死去を昨日知った。まだ55歳でこの世を去るとは、才能があっただけに勿体ない。

 

 ガキの頃からさっきまで、視力が死んでもおかしくないくらいアニメを見てきた。名作を山程見ていれば、その中で名優と出会うのは必然のこと。その内の一人に藤原啓治の姿があった。向こうはこっちのことなど知らないだろうが、こっちはテレビを通して彼の人生を知っている。彼の芝居には思い出があり、愛着も湧いているので、会ったことがない人間であれど、死んだと知れば心が動かないはずがない。

 

 今日はしみじみと彼を振り返ろう。

 

 藤原啓治といえば、子供たちにとっては「ひろしの声」で覚えられいるだろう。

 俳優の中には、役者本人の名前よりも、ヒット作で演じた役名で呼ばれるものがいる。これは不名誉ではなく役者冥利に尽きる成果だろう。

 

 冴えない中年サラリーマンを四半世紀もの間演じた藤原啓治の声は、国民的お父さんボイスにまでなった。多大なプレッシャーの中でこれを引き継いだ森川智之も既にレジェンド級の声優だと言えよう。

 

 野原ひろしの熱血なところ、間抜けなところ、家族想いの優しいところを伝えたのは、藤原啓治魂の芝居による力が大きい。

 

 ひろし一番の名場面は、劇場版作品「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」で見られた。

 

 この映画の前半で、ひろしは敵に洗脳され「ひろしSUN」として嫁の「魔法少女みさりん(みさえその人)」と共に子供達を襲ってくる。

 

 後半でまともな状態に戻った状態のひろしと、敵組織「イエスタディ・ワンスモア」のリーダー ケンが言葉を交わすシーンがある。

 ケンはひろしの人生をつまらないものだと言うが、それに対してひろしは「俺の人生はつまらなくなんかない」と返す。家族がいる幸せを噛み締めて放ったおじさんの一声に私は深く感動した。

 この作品はしんちゃんシリーズ、アニメ映画というくくりを脱して、広く映画として名作だと言える。

 

 ひろしが代名詞となった藤原啓治だが、その一方では角度を変えまくった意外な役も演じていた。

 

 ひろしのイメージがガラリと変わったのが、「機動戦士ガンダムダブルオー」に登場した名物キャラのアリー・アル・サーシェスである。作中屈指の凶悪キャラで、我々視聴者には軽くトラウマを与えた。藤原啓治の芝居で最も衝撃を食らったのがコイツだ。

 

 恐怖の傭兵として活躍したサーシェスは、多くの人物を殺してワルぶりを発揮した。沙慈・クロスロードの姉を殺したところなんてかなり怖かった。

 

 金曜日には野原家の優しい父をやり、土曜日には殺し屋をやる。放送日の関係で、藤原啓治のスケジュールはコレ、という意識が我々オタクの間に根付いていった。

 

 病気休業から復活した後は「荒野のコトブキ飛行隊」で活躍を見せたのが印象的だ。こちらでは隊の冴えない副官ポジションで出てくる。ここよりも偉い組織の女ボスは、しんちゃんを演じていた矢島晶子が担当した。この時分には二人共しんちゃんを降板していたので、しんちゃん以来の共演ではなかろうか、と我々オタクを歓喜させたものだ。

 

 去年末に放送した「グランブルーファンタジー」二期ではオイゲン役で出ていたので、回復に向かっているのかと思ったら今回の訃報だったのでショックを受けた。コロナ問題の先に放送予定だったリゼロ二期でも彼の演じるキャラがいた。

 

 最近は声優の訃報がラッシュな気がする。我々アニメ好きの青春のメモリーに刻まれるのはアニメ画だけではなく、音も一緒になっている。名優の声もしっかり記憶しているので、また一人この世からいなくなると寂しい。

 

 4月18日放送のしんちゃんの最後には藤原啓治追悼字幕が出た。そして藤原啓治の「しんのすけ~」の声が流れた。あれにはさすがに泣けた。森川バージョンも絶対に良いけど、長く聞いたこっちの声がやはり好き。テレビの新作で彼の声が流れるのはこれがラストかと思うと、悲しいがありがとうの気持ちがこみ上げる。

 

 ありがとう藤原啓治。我々は彼の声を忘れない。

 

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