こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

今、冒険が進化する「デジモンアドベンチャー」

デジモンアドベンチャー」は、1999年3月から2000年3月まで放送された全54話のテレビアニメ。

 

 その昔、子どもたちの間では、たまごっちかデジモンかで流行が二分されたことがあった。私は種類が様々あるたまごっちシリーズばかり楽しみ、携帯ゲーム機のデジモンは全くやっていなかった。でもお兄ちゃんはデジモンで遊んでいた。

 

デジモンアドベンチャー DVD-BOX

 

 90年代最後期にして、世紀末の名作となったデジモンアドベンチャーが、2020年にリブートしてお茶の間に帰ってきた。太一に、ヤマトに、ミミに、その他にまた会える。私は心弾ませて2020年版デジモンを楽しんでいたのだが、憎きコロナのせいで放送は早くも途切れてしまった。選ばれし7人の子供達の紹介も終わらない内にこれだから困る。

 

 きっかけはコロナでデジモンが見れなくなったからだった。新作が見れないなら、過去作を楽しもう。そう思い、私は記念すべき最初のデジモンをここ2週間程で全話視聴した。これが大変楽しく、時には胸を揺さぶる感動も運んでくれた。すばらしき作品だった。

   

 

 デジモンだから主役はやはりデジモンだと言える。しかし、この作品は登場する子供たちの成長に強くスポットを当てている点で、大人になった今見ても良いものだと思えた。幼児向けであってそうでもない、大人でも楽しめる仕掛けになっていた。

 

 選ばれし7人の子供達とそれぞれのパートナーとなるデジモンが、デジタルワールドを冒険する物語が展開する。

 主人公の子供達は、子供会のキャンプに参加した途中でデジタルワールドに召喚される。デジタルとかパソコンとかがテーマのものだが、子供たちは意外にも逞しいアウトドア軍団というのが健康的で良い。

 

 ポケモン同様、デジモンも進化して強くなる。様々形態を変えていくこの展開がワクワクする要素となる。そして子供たちも同じく心身共に強くなって行く。

 デジモンたちは言葉を発し、子供たちと心の交流を行うことが出来る。世界存亡をかけて戦う子供達とデジモンの間で育つ友情の物語が美しい。主と使い魔ではなく、対等な友人なのである。

 

 主人公の子供が7人、デジモンが7体。メインキャラが合わせて14。第一話からこの人数で来るから多すぎだと思った。人数が多いと、いくつかは空気になることが数々の作品の中であるあるとなっているが、この作品はちゃんと全部を主役に据えている。そう、主人公はメインで出てくる全員である。このスタンスを一貫することは簡単なことではない。簡単でないそれをクリアして最終回までダレることなくやりきったのが本作の評価できる点である。

 

 子供たちもデジモンも個性的で、彼らの冒険を見届けて行く中と、どれもの良さに気づいて好きになってしまう。

 

 まだ小学生の子供たちは、お気楽にゲームやキャンプをやるだけの命ではない。

 ストーリーが進む中で、両親の離婚などをはじめとした家庭問題を抱えていることも明らかとなる。子供達の暗い過去を抉っていく展開に深い人間ドラマを見た。

 

 ヤマトとタケルが兄弟なのに名字が違う事情、親に告げられる前から自分が養子だと気づいた光子郎の葛藤、家柄にそぐわない成長を迎えたことで親との関係に不和が生じた空の悩みなど、リアルな社会問題にも切り込んで行った展開は物珍しかった。

 

 タケルを守る兄であることに強い拘りとアイデンティティを抱くからこそ、心かき乱されて闇落ちしかけたヤマトのエピソードは重厚だった。すごく複雑な兄弟愛を描いている。私にも不肖が過ぎる兄がいるので、兄弟のエピソードとなると共感して見ることが出来る。

 男の子だけどタケルが可愛い。

 

 自分は養子だからということで親に遠慮する光子郎の心を思うと泣けてくる。チビなのに、チビがしなくて良い気遣いをするなんてストレスが溜まるだろうにと思った。中盤で親と全てを語り合い、より親子愛を強固にしたシーンは泣いてしまった。親を大事にしようと思った。

 

 間抜けな点も目立つ城戸丈が好きだった。太一や空よりも先輩だけど弱っちい感じが否めないキャラである。丈の伸びしろ具合もなかなかで、後半では熱い男の一面も魅せ、一番はまったキャラかもしれない。

 エリートな医者の家系の末裔ゆえに、進路で悩むシーンがある。医者を継ごうにも丈は血を見るだけで倒れる体質だから無理となる。優しい丈の兄が、医者に拘らず最良の進路を探せとアドバイスしてくれるシーンが好きだった。

 

 太刀川ミミが一押しのヒロインだった。メリー・ポピンズみたいなおしゃれな帽子が目立つ可愛いヒロインだ。お嬢様感があり、一番面倒くさいキャラでもあるが、それゆえ愛しいキャラだった。第15話ではミミのお風呂シーンが見れる。

 ミミの両親も曲者夫婦で面白かった。

 

 最初はデジタルワールド、中盤では東京に帰り、そして最終決戦のため再びデジタルワールドへという三段階構成となった。

 

 子供たちが東京に帰った後、デジモンが人間界にやってくる展開が面白かった。ここからは実はまだいた8人目の子供とデジモン捜索の流れになる。太一の妹ヒロイン ヒカリとテイルモンが合流する展開も熱い。

 

 東京に帰ってから、全ての始まりは光が丘にあったことが分かる。光が丘爆弾テロの更なる伏線回収は、劇場版一作で見ることが出来る。伏線を張ったシナリオもなかなか凝っていて面白かった。

 

 悪いデジモンが東京に攻め込んできて、最も激戦となったバトルはフジテレビで展開した。ヴァンデモンの捕虜となった人々の中には、フジの住人であるガチャピン、ムック、Pちゃんがいて、彼らは戦いにも参戦する。このネタ枠は嬉しかった。

 激戦の中、フジテレビの球体が落ちる事件も発生する。東京での戦いは熱かった。

 

 子供たちが電車に乗ってお台場まで帰るシーンがあったのだが、路線がものすごく複雑で難しそうだった。東京には行ったことがない私からすれば、これは大人でも迷子になりそうだと思った。

 

 電車と言えば、子供たちとデジモンがお別れする最終回シーンでも、子供達は電車に乗り込む。電車に乗ってお別れする最終回は思わず泣いてしまう。ミミの帽子が風で飛んだところで、通常よりもゆっくりなバージョンの「Butter-Fly」が流れる演出には参った。

 最後まで爽やかに終わる良い作品だった。

 

 太一役の藤田淑子、空役の水谷優子らはじめ今ではもう聴くことが出来ない名優たちの懐かしい声が20年前の作品には残っている。声優好きとしても楽しめた。

 

 様々いるモンスターのデザイン性はバラエティ豊かで、格好良いもの、可愛いもの、ギャグに走った間抜けなものなどが見られた。スカモンとかヌメモン、ナニモンあたりはハズレだよな。

 

 ポケモンに興奮した時もそうだったけど、「なんか色んなのがいっぱいいる」という要素があればワクワクする。個人的には、グロテスクな中に確かな格好良さがあるカブテリモンあたりがストライクだった。

 メタルガルルモンやムゲンドラモンまでメカ感が出ると、もはやゾイドではないかと思えた。

 ミミの相棒のトゲモンを見ると、モンスターレースでもこんなのがいたと思い出した。

 

 不死蝶のシンガー和田光司が歌う名曲「Butter-Fly」がOPで流れ、景気よくアニメがスタートする。

 デジモンが進化する時に流れる「brave heart」は、イントロのギターがギュイーンと鳴る段階からでもアゲアゲになる。

 太刀川ミミを演じた前田愛が担当する2曲のEDソングも懐かしい。後期EDの「keep on」は、TM NETWORK木根尚登がプロデュースしている。この点がすごい。

 楽曲面でも熱い仕上がりになっていた。

 

 毎話のナレーションは平田広明が担当している。毎話の次回予告も彼が担当しているが、これが迫力があって良い。次回への視聴意欲が湧く熱っぽい平田広明のナレーションも良い作品だった。

 

 

スポンサードリンク