こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

どんでん返しの中でも愛は不変「HELLO WORLD」

HELLO WORLD」は、 2019年9月20日に公開されたアニメ映画。

 

 配信された全3話のスピンオフアニメ「ANOTHER WORLD」を見ればもっと世界観を楽しむことが出来る。

 

 視聴した最初の感想は「めっちゃパソコン」ということ。それくらいに美しいCG技術を持ってして作られた作品である。またDOLBY ATMOSという、とにかく音が綺麗で大迫力に伝わる謎の新技術も搭載されたすごい作りになっていた。コロナのせいで最近は古いアニメを見ることが多かったが、ここへ来て最新の作りを見せられるとハッと目も覚めるもの。

 

「この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る――」をキャッチコピーに掲げる作品だけに、どんでん返しが待つ面白い作品だった。

 

HELLO WORLD

 

 物語の最初の舞台は2027年の京都。次に2037年、最後には2047年にまで突入して行く。一年前に見た「レイドバッカーズ」以来の京都ものだった。大文字焼きとかはその内見てみたいとも思う。

 

 主人公の堅書直実は、決断力と自発性に乏しい冴えない少年である。でも本をよく読む文学青年であるのは、同じく文学青年である私としては好感が持てる。序盤のシーンで決断力を身につけるハウツー本を読んでいるのはダサい。そんな直実も、物語が進むに連れて、自らの強い意志で行動する立派な男へと成長して行く。直実が大成していく点が一つの見どころとなる。

 

 2027年に生きる堅書直実の下に、10年後の自分がやって来て物語は大きく動き出す。2037年からやって来た堅書直実、通称先生の口から「お前は一行瑠璃と交際することになる」と告げられ、彼女は事故で意識不明の大怪我を追うことになっていることも明かされる。未来の自分に手伝ってもらい、堅物の一行瑠璃の攻略と彼女の未来に迫る危機を回避するため、堅書直実の戦いが始まる。

 序盤の展開だとSFを絡めたラブコメラノベみたいな感じもするが、中盤からはそうでもなくなってくる。

 

 序盤の段階で、ここは未来世界のコンピュータに記録された過去世界を再現したデータ空間に過ぎないということが先生の口から明かされる。直実が現実と信じて生きる世界は作り物だったというこの設定は「ゼーガペイン」を思い出すものだった。

 こうなれば先生がいた2037年の世界こそが現実世界だと思うが、それもミスリードで、真実はそこから更に先の2047年にあったことが最後で分かる。

 箱庭の中にまだ箱庭があるという不思議な世界を俯瞰しているような感覚を得る設定だった。

 

 この作品は凝ったシナリオが面白かったけど、一番良かったのはヒロインの一行瑠璃の存在にある。

 クールで攻略困難な感じがするヒロインだが、しっかり可愛い。こちらも主人公同様本が好きな文学少女であるのが良い。

 2027年にもなれば、委員会の連絡はスマホを介したLINEで行うようになっている。これだけ未来になっても、一行さんはスマホ操作に慣れず、結局直実に住所を寄越し、文通になるというのが古風で良かった。私もスマホを持っていないので、スマホ無しのアナログな連絡手段を使う男女に共感と好感を抱いた。

 

 スピンオフアニメ「ANOTHER WORLD」では、図書委員の仕事中に一行さんが「ガンバの冒険」のOP曲を歌っているシーンがあり、そこがすごく好きになった。ガンバの歌はとても楽しくなるアゲソンだ。

 

 主人公がヒロインに徐々に詰め寄って付き合うまでの展開を陰ながら見守るもう一人のヒロイン勘解由小路 三鈴(かでのこうじ みすず)も気になる。

 二人のことをよく知る人物ながら、途中で出てこなくなる。重要人物ではなかったのかと思ってネットで調べると、小説版では重要な働きをしたとあった。

 

 作品のキーアイテムとなったのが、グッドデザインというすごい武器。先生が直実に与えた未来世界のすごい力で、片手にはめるグローブの形状をしている。何もないところからイマジネーションの力を経てアイテムを生成する力がある。片手で触れることで幻想を壊す「とある魔術の禁書目録」の主人公 上条当麻と真逆の能力だなと思った。

 

 グッドデザインでは武器の生成も出来る。生成した武器までが本だったのは直実らしい。分厚い魔導書みたいな本にロープをつけて飛ばすことで敵を攻撃する戦闘スタイルは印象深いものだった。 

 

 不気味な狐面の敵を相手取って展開するバトルシーンも一つの見どころとなった。

 

 世界、時間軸が移り変わって行くどんでん返しの展開があったが、その中で一貫しているのは人の愛である。世界が変わっても直実が一途にヒロインの一行さんを愛し、一行さんもまた直実を想う。この不変のテーマ性が美しい良い作品だった。

 

「ANOTHER WORLD」の方もただのおまけアニメではなく、かなり楽しかった。

 大学時代の直実を描いたエピソードで登場する黒沢ともよ演じるうるさい女が良かった。面倒見が良い女で好きだった。

 

 

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