こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

男の意地と美しい親子関係を描く「人生の特等席」

「人生の特等席」は、2012年に公開されたアメリカ映画。

 

 チビの頃からBSをつければ何かと会うことが多かった俳優クリント・イーストウッド主演作品である。

 

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 プロ野球のスカウトマンが主役の物語である。

 イーストウッド演じるスカウトマンのガスは、長年業界で活躍してきたが、高齢のため仲間たちから軽く引退を勧められる。それでも老いに屈服せず、ガスはスカウトの旅に出る。業界に居座る古参の意地を見る作品である。

 そんな父を心配をして疎遠状態が続いた娘もスカウトの旅に同行する。ガスの意地とプライドをかけたお仕事ドラマと共に、親子の絆が復活する愛の物語も展開する。

 

 アメリカ人は日本人以上にバットを振りたがり、グローブ片手にボールを投げたがる。それだけにアメリカの野球もの作品は多くある。「フィールド・オブ・ドリームス」やとんねるずのタカさんも参戦した「メジャーリーグ」など、あげればわんさかと例がある。選手に目を向けたものばかり見てきたが、今回は野球関係作品の中でも珍しいスカウトマンにスポットを当てたものだった。業界の裏方のスカウトマンの事情は知らないので、新鮮な想いで見れた。

 

 野球作品は実写でもアニメでもよく見るが、リアルのことはよく知らない。作中ではメジャーリーグあるあるネタとかクイズとかが出てくるけど全く分からない。野球が詳しい人間が見ればこういったネタも楽しめるのだと想う。

 

 3年程前に見た「グラン・トリノ」でもイーストウッドは頑固で難しい爺さんの役で出ていた。今作でもそこは同じようなものだった。

 

 年老いて視力が落ちたガスは、机にぶつかったり転ぶようになる。車庫入れでも車をぶつけ、最終的には車で事故を起こすようにもなる。キレやすくなり、小便の出も悪くなって、早くに失った妻の墓の前で愚痴るなんてシーンもある。徐々にだが、確実に老いて行ってるのが分かる。これらは自然な老いの過程なのだろうが、こうなると想うと怖くもなる。

 

 会社には、高齢のガスが居座ることをよく思わない世代もいる。引退を勧められてもガスは頑として譲らない。老いを受け入れずに第一線に居座ろうとするジジイのことを「老害」なんて言うことがあるが、最初はそれなのかなとも思ってしまった。だが、後半では視力に頼らずとも一流の判断が出来るというスカウトマンの矜持を示して格好良かった。

 

 家庭を省みずに仕事ばかりやっていたガスと娘の絆が復活する物語は美しい。弁護士としてバリバリ働く娘が格好良くて美しい。野球バカの父の横で大きくなったことで、娘も野球にはとても詳しい。

 

 娘とバーで飲んだ時、娘に絡む男に必要以上にキレるガスの動向がおかしいと思ったが、その謎は後で分かる。娘は幼い時に幼児好きの変態男に襲われかけた過去があり、ガスは変態をボコって撃退している。娘はそれを覚えていないが、父のガスは覚えているので、娘が大きくなってもそこに反応したのだ。こういうのはやられた娘がトラウマを覚えるものだが、父の方も別の角度でトラウマを持つのに納得できる。爽やかに親子愛を描くものだが、ちょっと暗い一面も持っている。

 

 父に認められるために娘が一生懸命頑張るのが良い。それぞれが想い合ってはいるものの、不器用だから想いが擦れ違っている。後に話し合うことで親子仲が確かなものになる関係性は美しい。やはり親子であってもしっかり言葉を語り合わないと勘違いを起こすなどして分かり合うことが難しいという家庭問題にも切り込んでいた。ためになる。

 

 学生野球チャンピオンの通称ビッグ・ボーをスカウトするかしないかで、スカウトマン達の意見が割れる。

 ボーは強いけど仲間や敵を見下す性格に難ありのまあまあなクソ野郎だった。ムカつくけど、ちょっとだけベビーフェイスだから憎めない顔つきでもある。

 皆がボーに期待する中、ガスだけは「手元が泳ぐ」というその道に詳しい者の評価を下し、ボーがプロでは通用しないと見抜く。これは速球に対応出来ても変化球を捉えるのがダメということだった。

 

 後半では、ボーが見下していた一人である球場のピーナツ売り少年、通称ピーナツボーイがピッチャーとして覚醒する。ピーナツボーイの速球とカーブが一級品と見抜いたのはガスの娘。血は争えない。

 

 それまで馬鹿にされていたピーナツボーイがカーブでボーをねじ伏せる展開が爽快。

 

 親子揃ってスカウトマンとしての才覚を見せ、親子仲も戻って良いエンドとなった。

 

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