こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

異世界なのにチートで進まないのが面白い「この素晴らしい世界に祝福を!」

この素晴らしい世界に祝福を!」は、2016年1月~3月まで放送された全10話のTVアニメ。加えてOVAが一話ある。

 

 先日私のお兄ちゃんが「このすば」のスマホゲームをしていたことがあり、最近ではBS11で再放送も始まった。これを受けて、パッケージ化された劇場版の方もそろそろ見ようかなという気分になった。

 劇場版がかなり久しぶりの新作となるので、どうせなら最初から全部見ようということになり、懐かしのシリーズ第一作を全話オーディオコメンタリーも含めて3日くらいで視聴した。これがなかなか楽しかったので色々言いたい。

 

 本作は日本人がいつまでも好きなコンテンツの異世界転生ものに当てはまる。異世界ものは1個見つけたら他に30個あると思え、てな感じでゴキブリなみにポンポンと類似作が生まれがちだ。放送すればとりあえず全部チェックするけど、そこまで一生懸命は見ないし、それらを再び視聴することはまずない。大概の物は一回見ればお腹一杯になる。

 この手の作品はヒロインの強さ(魅力的な意味での)が視聴意欲に繋がる要素の全てとなり、異世界に行くという設定自体には特に惹きつけられるものがない。この作品はヒロインが良かった。それだけはリアルタイム放送からかなり時が流れた今でもしっかり覚えている。今作に限っては主人公のカズマも愛着が湧くもので良かった。

 

 作品タイトルオンリーでは異世界を感じないちょっと変わったタイトルが素敵で良いと想う。マジで関係ないけど、タイトルを見てすぐに名作ゲーム「この青空に約束を」を思い出した。これの作者ってあのゲームやったのかなぁ、と思いながら2016年当時は放送を見ていた。

 

この素晴らしい世界に祝福を!17 この冒険者たちに祝福を! (角川スニーカー文庫)

 

 我らが愛すべき本作の主人公カズマは、昨今ではさほど珍しくなく、そして褒められたものでもないヒキニートという設定が敷かれたキャラクターである。

 第一話冒頭でカズマは、ネット購入ではゲットできない店頭販売特典付きのゲームを買いに行く。ヒッキーの自分がどうしても店頭に出向かなければならない販売形態に対してグチグチと恨み言を言うのには共感する部分もあった。

 

 ヒキニートなんてものをすぐに外の世界に引っ張っていく手っ取り早い方法が、サクッと死んでもらって転生させること。日本人の主人公カズマは、一話早々に死んであの世に行く。この死に方がかなり変化球なもので想い出深い。

 ゲームを買った帰りに、トラクターに轢かれそうになった女子高生を助けてカズマは死ぬ。という風に思わせておいて、本当はトラクターは女子高生の前で停まるはずだったし、カズマは女子を突き飛ばして怪我をさせただけ。轢かれていないけど、トラクターの前に飛び出したことで死んだと思い込み、結果的にはショック死であの世に送られる。死体はショックで小便を漏らした状態で病院に運ばれ、医師やナースにも笑われた。という報告を死者の魂を導く女神アクアより爆笑されながら受ける。

 ギャグ作品だから許されるけど、人の死をここまで愉快に扱うのは魂への冒涜とも思える。

 

 死者をナビゲートする役目のアクアは、最初こそ徳のある女神様の雰囲気を出してカズマに接して来るが、あとはずっと「駄女神」として描かれる。久しぶりに見ると、アクアにもこんなに余裕たっぷりな時期があったのだと思った。

 カズマの悪知恵により、女神なのに冒険者と一緒に異世界に行くことになったアクアの運命も面白い。

 

 一応はアクアの指導の下でカズマが魔王を討伐しに行くという目的の物語が始まるのだが、最終回までずっと駆け出し冒険者の街にいて、冒険といった冒険をしない。

 多くの作品に見るチート展開もなく、魔王討伐や冒険云々の前に今日のメシを食うのに必死な主人公達が描かれる。

 転生したカズマの初期装備は汚いジャージで、ファンタジーな世界観では浮きまくった最弱装備でスタートする。両親の庇護の下で温々とヒッキーをかましていた前世と打って変わり、カズマはいきなり肉体労働者になり、馬小屋に寝泊まりすることになる。楽しい異世界のはずが日本よりも厳しい環境で生活することになるのが印象的だ。

 金のため仲間とクエストに出て資金集めをするが、結果借金を背負うことにもなる。そんな冴えない冒険者の暮らしがコミカルに描かれる。

 ヒキニートの割にはコミュ力が高く、社会的順応性も高いカズマは、実はステータスが高いのではないかとも思える。異世界に行ったことでヒキニートが更生していくという明るい変化をそれとなくお届けてしている点はポップで良い。

 

 人々から崇められて当然の女神アクアも、左官として働き、仕事上がりにはガチムチのおっさん達と酒を飲んでは吐くという生活に直ちに慣れていく。

 可愛いアクアと馬小屋の藁の上で二人して寝るカズマだが、アクアにはヒロイン性を感じないということで欲情はしない。 

 

 アクアの普通にスタイルが良い点は魅力的で、いつ見えてもおかしくないけど一生見えない絶妙なスカート丈には不覚にもドキドキする。カズマからアクアへの愛が冷めた夫婦関係みたく雑な扱いと、本人の中味が諸々残念なためにそこのところが麻痺しがちだが、総合的に見るとレベルの高いヒロインである。

 

 情緒が怪しいと思えるくらいにテンションのフリ幅が広いのがアクアの面白い点で、落ち着いた女神様の感じは極序盤でしか見せない。あとはカズマに捨てられたら終わりだから色々一生懸命で、基本的には面倒事を運んで来て、借金を膨らます原因となるとんでもない女として描かれる。カエルやワニに食われそうになって泣き叫ぶという、女神様には見られない醜態もしばしば見られる。

 バカだから基本的に使えないけど、結局はすごい女で、いざという時にはとんでもないパワーも発揮するおいしいポジションのヒロインだった。

 たまに使う必殺技のゴッドブロー発動時の作画が無駄に良いのが印象的。効果説明で「食らった者は死ぬ」と言うが、誰も殺したことがないポンコツ技である。他には酒場のおっさん達を喜ばせる宴会芸魔法の花鳥風月を操るが、これも戦闘には全く使えなくて面白い。

 

 泣いて笑って叫ぶアクアを演じた雨宮天の演技のフリ幅もすごいものがあり、変な役をしていると簡単に見えるようでも、アクアの芝居は役者としてかなり経験値アップに繋がったのではないかと思える。雨宮天が「東京喰種」でとんでもなく荒くれ者で口が悪いヒロインをやった時にも化けるなぁと思ったが、当時の彼女がアクアのこの感じを定番の芝居にしていたことはなかったので、かなり新鮮に見えた。

 

 

 駄女神アクアに次いでカズマのパーティに半ば強引に参加するのが、本作3大ヒロインの内で私が最も推しているめぐみんである。

 フザケた名前なのは一族皆共通で、父ひょいざぶろーと母ゆいゆいの愛娘である。色んな魔法を使えるはずなのだが、歪んだ美学の下に爆裂魔法オンリーしか使わない、覚えないという歪んだステータスを持つ魔法使いで面白い。

 チビの貧乳ロリ枠で、そっち趣味のお客さんのニーズをしっかり満たす良いポジションを担っている。

 プリキュアではもっとまともな魔法使いの役をやらせてもらった高橋李依のボーイッシュなボイスが良く合っている。

 

 めぐみんもかなりのネタキャラで見る程に面白可愛くて好きになる。

 パーティーの中では最大火力の大技エクスプロージョンの使い手で、これしか使えないのだけど、これを使ったら全部が終わる。一日一発限定の技で使ったら体力を消耗してもう動けない。誰かがおんぶして連れて帰らないといけないという使えない迷惑なキャラな点も愛らしい。

 一日一発爆裂魔法を打ち込まないと死ぬ体質を自称しており、迷惑なことに人の城にもドカンドカンと打ち込んでくる。そのため城の主のデュラハンから恨まれて戦うことになる。カズマが「デュラハンの人」と呼ぶのが面白い。

 デュラハンからは毎日爆裂魔法を打ち込んでくる頭のおかしい魔法使い扱いを受けていて、後には街の皆からもそう認識される。残念な扱いが面白いヒロインである。

 

 本作のキャラデザはやんわりとしたもので、すごくイケメン、すごく美女に仕上げ来るわけではないが、その分他で作画が本領を発揮している。内の一つが魔法発動時の作画で、エフェクトも凝っている。本作の画の見せ所がめぐみんの爆裂魔法発動シーンである。魔法陣から爆発まで、綺麗で迫力のあるものに描かれるのが良い。普段はバカばかりやっているめぐみんも魔法を使う時には格好良い。

 魔法を使う時にはなにやら長々とした詠唱を行なっているが、これは毎度違っていて別にいらないらしい。雰囲気でやってるっぽい。

 

 カズマ達が住む屋敷に幽霊が現れる回で、めぐみんが小便を我慢しながら逃げ回るエピソードが一番好きだった。

 

 OVAで初めて登場する巨乳のゆんゆんとは同郷のよしみで喧嘩仲間である。育ちすぎたゆんゆんのおっぱいにビンタを食らわせるめぐみんが面白い。二人がなんだかんだで仲良しなのはユリ萌にとって目の保養になる。ゆんゆんも強力なヒロインで侮れない。

 ちなみにOVAはヒロインのサービスカットが多めで、カズマが最もバカで下品でスケベに描かれていて好きな回だった。

 

 アクア、めぐみんに次ぐ3大ヒロイン最後の一人がダクネスである。金髪ポニテ巨乳の鎧騎士で金持ち令嬢の美少女、そして声が皆大好き茅野愛衣。ここまでは大したものだが、ステータスがクソで攻撃が全く当たらないという大きすぎる難点を抱えている。そして困ったことに破滅願望持ちの行き過ぎた変化球ドMド変態というすごいキャラ性を持っている。これを茅野愛衣にやらせたというのがこの作品の功績の一つかもしれない。彼女が変態を演じることには多くの者が度肝を抜かれたのはないだろうか。ちなみに私のお兄ちゃんもこの役をやった茅野愛衣はすごいと褒めていた。

 

 M性癖という世界観の広さをダクネスから学べる。MはMでも既存のM性癖とはまた違った変化球な快楽を追求するダクネスの性の美学の境地には色々とビックリさせられる。面白すぎるキャラだった。他の二人のヒロインもおかしいので、演じた女優のレベルアップになったと想うが、特におかしいダクネスの芝居は女優茅野愛衣を大きく成長させたと想う。

 

 これだけ可愛いヒロインに囲まれていてもカズマの言動には冷めた部分もあり、決して従来のハーレム感はない。というかカズマのヒロインの扱いが雑で、ややDV夫感も見られる。何にせよ各ヒロインとの息のあったやり取りはコミカルで楽しい。

 

魔法陣グルグル」の主人公ニケも旅の途中で勇者以外に盗賊のスキルがあったと判明したが、今作のカズマも勇者でなく盗賊として目覚める。カズマの必殺スキルのスティールは、女子の衣服を脱がすこと無く、もっと言えば触れもしないのに、パンツのみを瞬間移動させて我が手に収めるというものである。これは男子的にはナイスアイデア、女子的には女の敵といってもよい所業である。面白い。

 

 一行がたまに取り組むクエストも、パーティーメンバーがポンコツなためにイマイチ危機感に掛ける変わったものが多い。

 面白いのがキャベツの収穫クエストで、ここだけはやや「牧場物語」要素を感じる。そのキャベツというのが群れをなして空を飛んでくるので思いっきりファンタジー。ちょっと可愛くもある。キャベツの体当たりには結構なパワーがあり、やや危険な仕事である。キャベツの声が金田朋子なのもナイスな点だった。たまにレタスも混ざっていて、こちらはキャベツよりも売値が安いという設定になっていた。こんな具合に間抜けなクエストも面白い。

 

 脇のキャラクターだけどしょっちゅう出てくる「荒くれ者」というおっさんキャラがいる。こいつになぜか愛着が湧く。荒くれ者を演じるのに定評がある稲田徹が荒々しく演じているのも良い。ガタイの良さからジョブは木こりか盗賊かと思いきや、その正体は機織り職人という意外すぎるものだった。

 

 カズマ達が暮らす街の隠れた名スポットがサキュバスの経営するムフフなお店で、ここのシーンだけは「異種族レビュアーズ」の匂いがする。三石琴乃の演じるサキュバスのお姉さんが本当に無駄にエロいのが強く記憶に残る。

 

「機動要塞デストロイヤー」を破壊する最終回は迫力があって楽しかった。それまでの回で名前のみはでていたものが、まさかの伏線となっていて最終回ボスとして現れる。蜘蛛のような長い足がついた要塞が歩いてくるシーンをCGで描いたのが良かった。

 デストロイヤー討伐のためにウィズとめぐみんがダブルでエクスプロージョンをぶっ放すシーンは格好良かった。

 

 こんな感じでギャグ要素をたっぷりにし、王道の異世界冒険ものスタイルで来ないのが「このすば」の良い点だった。

 

 本作とは近い時期に放送していた異世界ものヒット作「リゼロ」のシリアスで厳しい世界観と比べて「このすば」はかなり内容が緩く、ストーリー性もあってないようなまったり見れる楽しいものだった。対比してこれだけ違うからこそ、十把一絡げの名の下に忘却の彼方へと去りがちな「異世界もの」の中でも埋もれず記憶に残るものとなった。ざっくりな感想を言えば「なんか変な話だった」で終わらせても問題ない緩い内容だったけど、ゆえに良いとも言える。結果的にこの手のジャンルの中では成功した作品になったと言えよう。

 

 なんだかんだ言っても世間の評価なんて知ったこっちゃない。私の信ずる「良い」がこの作品にあるのだからこれはきっと良い作品なのだ。私はこのすばが好きです。めぐみんを推します。

 

この素晴らしい世界に祝福を! Blu-ray BOX
 

 

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