こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

飛行機乗り青年の偉大な挑戦「翼よ! あれが巴里の灯だ」

「翼よ! あれが巴里の灯だ」は、1957年に公開された映画。

 

 ジェームズ・スチュワート主演作品は大体面白いという先人の教えから、彼主演のこの作品をこれといった前情報無しに見てみたら大変素晴らしかった。その感想を殴り書いて行こう。

 

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 主役の飛行機乗り青年リンド・バーグが、飛行機「セントルイス魂号」で大西洋横断を成し遂げる物語を追た約2時間半の映画。

 1927年を舞台に、ニューヨークからパリまでの長距離を一人乗り飛行機で無着陸で渡る大冒険ものだった。

 その昔、裕次郎が船で太平洋を渡る「太平洋ひとりぼっち」という映画があったが、あれの空版みたいで良かった。しかし同じ旅でも海と空では色々勝手が違う。

 

 これまで誰も成し遂げたことがない偉業へのチャレンジ精神を濃く描いた青春もので胸が熱くなった。1927年当時だと、今のように安心お手軽にスイスイ飛ぶ程飛行機技術が発展していなくて、飛行機作りから実際に長距離を飛ばすまで全てが挑戦だった。確立されていない技術、可能性の中で前向きに歩を進めるプロジェクト関係者達の青春に胸が熱くなる。

 

 冒頭の感想は速記ライターの仕事がうるさいこと。これから飛び立つリンド・バーグが休憩している下の部屋で記者たちがカタカタとタイプを打ち込む音が響き渡る。大きな挑戦を前にした主人公の思いも描かれる。

 

 リンド・バーグが電車の中で遭遇したサスペンダーのセールスマンオヤジはコミカルで面白かった。

 

 まずは途中離陸せずとも空を行くことが可能な新しい飛行機を得るところから始まる。飛行機を飛ばすだけでなく、会社に掛け合って発注するまでの手順もリンド・バーグが頑張って行う。このガッツがすごい。

 

 飛行機を作る過程も細かく見せてくれる演出が良い。お仕事情報を発信する教育番組みたいだった。ここの展開はリアルで良かった。リンド・バーグが初めて飛行機工場を訪れると、職人が仕事道具のバーナーでカレイを焼いているのがなんとも愛らしい場面だった。しかもあんまりおいしくなかったらしい。

 

 完成したセントルイス魂号にはめこむ最後の部品に、犬も含めた工場の人間全てのサインを記すシーンが良かった。皆の魂が籠もった作品だと思うと感動する。

 

 誰が一番に記録的飛行をするのか、飛行機乗りの間でも偉業を成し遂げるのも競争になっていると分かる。失敗すればもちろんただでは済まず、賭けた金は消え、最悪の場合飛行機乗りの命も消える。当時大空を目指すことはそれだけ危険なことだったのだと分かる。

 

 途中で着陸は出来ず、燃料や食料を積むため、神経質のようにとにかく機体を軽くしたリンド・バーグの都合が描かれる。重たい鏡はダメだからということで、野次馬の女性からもらった手鏡を使うアイデアは印象的。

 

 大空を飛ぶシーンは美しい。なかなか迫力のあるワンシーンが描かれる。

 長い空の旅の間に流れるリンド・バーグの回想シーンも見どころ。曲芸飛行、軍隊での飛行、飛行機郵便、神父に飛行機操縦をレクチャーするなど、とにかく空に関する仕事ばかりをやっていた男だと分かる。

 空でサーカスをするのがすごかった。絶対怖いと思う。でたらめな操縦をしてリンド・バーグを困らせた明るい神父さんのエピソードも面白かった。神父がくれたお守りをさりげなくリンド・バーグのサンドイッチの袋に入れた友人のアクションもナイスだった。

 神は触れぬものだからと言ってあまり信用していないリンド・バーグに対して神父が神が人々に触れると返すスピリチュアルなメッセージのやり取りも印象的だった。とにかく神父が面白い。

 最初は神のことを信じていなかったリンド・バーグが、最後に着陸する時には神父の教えを思い出して神に祈りを捧げるシーンも良かった。

 

 マシンが良いだけでは、空の戦いには生き残れないと分かる。長旅で操縦を交代する仲間もいない以上、リンド・バーグは眠ってはいけない状態にある。しかし疲れからうとうとしてしまい、そのため墜落しそうになるピンチも描かれた。寝たら死ぬという雪山遭難のごとく、睡魔との戦いでもあったすごい挑戦だった。

 

 寒い地域を飛ぶと翼が凍り、プロペラの回転数も落ちて墜落する危険があると分かるシーンもあった。本当に色々な条件をクリアしないと長い距離は安全に飛べないのだと分かる。マジで怖い。

 

 そんな中、飛行機に入り込んだハエと一時だけは仲良く旅をするというちょっぴりファンタジー感がある可愛いエピソードもあって良かった。

 

 最後の空港のシーンは感動した。

 多くの人達の働きによって作られたセントルイス魂号が、多くの困難を乗り越えた末タイトルにあるパリの灯を見るラストを見れば、胸から熱き想いがこみ上げてくる。

 それまでただの男に過ぎなかったリンド・バーグが、多くの人に囲まれて英雄扱いされるシーンを見れば、ここまで国民が揃って熱狂する記録だったのだと分かる。

 爽やかなエンドを迎える飛行機乗りの青春が面白い一作だった。

 

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  • 発売日: 2012/01/30
  • メディア: DVD
 

 

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