「時をかける少女」は、1983年に公開した日本映画。
かなり前に見たことがあるけど、細部の設定の記憶が抜け落ちていて「結局どんな話だっけ?」と思っていた時にBSで放送していたからチェックした。これにより抜け落ちた記憶の補完となったが、それもいつまた抜け落ちるのか分からない。そうなったらそれこそ時をかけてまたこれを見ようじゃないか。
ロケ地が尾道で尾美としのりが出ている点が共通しているため、映画「転校生」とかぶってどっちがどっちかあやふやになっていたが、そこもはっきりと記憶の整理分けが出来た。何でも定期的に整理整頓が必要だなと思った。
筒井康隆原作作品である。本作が1983年の作品で、今年になっても筒井作品の「富豪刑事」がアニメ化している。これを思うと筒井康隆は息の長い作家だと言える。私も図書館に置いているいくつかの筒井作品に世話になったので、わが青春を楽しませてくれたことにありがとうと言いたい。
原田知世演じる女子高生主人公 芳山和子が、時間の巻戻り現象に巻き込まれ、その中でクラスメイトの深町一夫、堀川吾朗らとの青春ストーリーが描かれる。SFと青春ものの合わせ技の爽やかな作品となっている。
テレポート、タイムリープ、タイムパラドックス、未来人などの設定を扱い、昨今では結構あるこの手のジャンルの古の成功例がここに見られる。タイムリープ関係だと00年代最後の問題作とも言われた「エンドレスエイト」の先輩作品とも言えよう。
土曜日の放課後に理科実験室を訪れたことで、和子は時間変異現象と接点を持つことになる。これを見ると、土曜日に学校がなかったゆとり世代なら成立しない導入だなと思えた。古き学校体制を見た。
昼食がない土曜昼に和子が倒れたことについて、腹が減ってたんだろうと呑気に返す吾郎のリアクションが面白い。吾郎を演じた尾美としのりのザ・田舎の学生感が良い。不思議と親近感が湧く。
メインキャラに女子一人、男子二人な点から青春の恋の予感がする。
吾郎、一夫共に結構いいところのお坊ちゃまな点が意外。どちらも良いステータスだ。
吾郎の実家が醤油屋で、休みの日に仕込みを一生懸命しているのは学校で全く見せない顔でギャップ萌えである。
一夫の家も温室があるし、庭で紅茶を飲んでる老夫婦がいるので裕福。立派な家だった。一夫が学校を休んで植物採集に行くとか言うけど、個人の用事で学校を休んだらダメだろって思った。
吾郎から借りたハンカチを家まで返しに来た和子が「醤油の良い匂いがした」と言うのはちょっとポエミーな感じがしてキュンと来る。醤油の香りを上書きした和子の匂いを感じてか、吾郎がハンカチを顔に乗っけるシーンが印象的。青春のワンプレイだった。
テーマにSFを扱っているため、SF展開となると特殊効果を使い、やや特撮チックな箇所も見られる。なんといってもものが古いため、今見ると演出に懐かしの違和感があったりもする。フィルムの発色と明度が控え目な80年代前半作品特有のこの感じも愛しい。
和子の部屋の和人形が動き出すシーンがあるが、部屋に置いておくにはアレは怖すぎるだろうと思った。
物語の筋とは別にロケ地尾道の美しき風景も楽しめる。作品を見て強く印象に残るのがロケ地風景だった。一度も行ったことがない所なのに、どういうわけか郷愁にかられる。とにかく良い所だなと思える。日本人の心の記憶をノックする風景を捉えた点も評価できる作品だった。
一夫が世話になっていた老夫婦は、事故で息子夫婦を亡くし、最後には孫も一緒に亡くなっていたと分かる。いもしない孫にあれこれの品を買っていたおばあさんの事情が分かり、おばあさんがアップで映る後半シーンでウルリと来た。おばあさんを演じた女優が良い顔で映っていた。
本編11年後の1994年の世界で、未来に帰った一夫と和子が大学で再会するラストで物語は幕を閉じる。
公開当時から11年後の1994年が既にとっくの前の世界になっていることを思うと、改めて古い作品なのだなと思う。時をかける少女だけに、時が過ぎゆくことについても色々と考えてしまった。
映画と共にヒットした主題歌の「時をかける少女」もやはり良い。個人的にはユーミンのセルフカバーバージョンの方をたくさん聞いたが、原田知世の若々しい感じが出た歌唱もまた良い。改めて良い曲だ。
PV風なED映像も楽しめた。
主演の原田知世もそうだけど、岸部一徳もこの時にはマジで若いと思えた。
久しぶりに見たけど、爽やかな青春もので懐かしい気分にも浸れて楽しめた。
スポンサードリンク