「ぼくらの七日間戦争」は、1988年公開の日本映画。
本作の原作小説は児童文学として、または児童を抜け出て大きくなったものが過去を振り返ってちょっとした気づきを得るに丁度良い一作としてなかなかの地位にある有名作品である。
さすがにこれの原作は読んだ。そして映画主題歌になっているTM NETWORKの伝説の名曲「SEVEN DAYS WAR」は未だに聴いている。アイドル3Mの一角(他二人は言うまでもないだろう)を担う宮沢りえが出演することでも有名ということももちろん知っていた。まだ未視聴だが、昨今劇場アニメ化もされたことで再び注目したい一作となっている。だが実写映画は今回初視聴となった。前々から見たいと思っていたので、今回縁があって視聴出来て良かった。
それにしても中学生役で出ている宮沢りえが当然だが若い。まるっきりガキというには色っぽさもあるヒロイン役だったが、年齢で言えばガキであることは変わりない。これが後に例の「Santa Fe」の件で世を揺るがすムーブメントを起こすことになるとは……人の進化というのは先がどうなるか分からないものである。
宮沢りえはこれが女優デビューだったというので当然のように初々しさがある。先日放送した「TOKIOカケル」にゲスト出演した菅田の将暉(菅田将暉)が、会った時のオーラの強さやられた俳優として宮沢りえの名を上げていた。あの日の少女も30年間もあれば後輩をビビらせるオーラを持つ女優にまで成長するということが分かる。素晴らしい。
30年前の元気な日本、そしてそこに暮らす元気な子供たちが描かれる古き良き名作となっていてかなり楽しかった。
内容は、大人によって抑圧された学校社会からの脱却を願う子供たちの反乱を描く、というものになっている。
まず映画で描かれる学校の先生達が怖いしムカつく。
一昔前の教育界のやり口が怖いし荒い。今だったらアウト、こんな先生いないという表現も見られる。普通に蹴る殴るの荒い指導にも打って出ている。
学校の荷物検査なんてのは抜き打ちで行うのが常套、余計な物を持ち込む者が悪い。それは分かるけど、全校集会中の空っぽになった教室で先生が勝手に始めるのは上手いようで卑怯な感じもする。アイテムを隠したり、言い訳を練る余地もないのがきつい。生徒達が「大人のくせに泥棒じみたことをするのかよ」と指摘するのも分かるというもの。
髪にパーマをあてた疑惑がある生徒は、頭をひっつかんで水道で頭を濡らして違反を見抜くというのは過激。たるんだボディとたるんだ精神を持つ肥満児は、まるで仕置のようにして体育の時間に鉄棒にぶら下げておく。ここらの表現は過激だけどちょっと笑える。
料理が上手な肥満の生徒が、懸垂が出来なくて鉄棒関係の仕置をうけているのは印象的。私は摂生したボディを持ち、懸垂はもちろん、そこからの逆上がりだってお茶の子さいさいだったのでコイツみたくお仕置きは受けなかっただろう。そんなことを思ったため、このシーンはニヤリと笑って見ていた。
そんな肥満の彼が、後の玉ねぎを切るシーンで「玉ねぎは半身ずらして切れば目に染みない」といううんちくを披露してくれた時には「へぇ、そうなんだ」と思った。良き教えをもらった。
登場する教師は複数人いるが、かわいいマドンナ先生以外は、タイプは違えど皆揃って嫌な先生だった。角度を変えての陰険な大人像を映している点が面白い。
あくまで芝居上での話だが、特に目立って怖いというか、良い意味で「気持ち悪い」のが、この手の芝居に定評がある佐野史郎演じる教師だ。彼は他作品でも気持ち悪いというか、ともすればサイコパスな役を見せているので、やっはり怖い。しかし彼の役と芝居は好きだった。
そんな感じで大人たちが色々悪い。
子供たちは大人達への反逆の証として、夏休みならまだしも、授業中の時期に家出して廃工場に立てこもる。これは大人への不満を伝える表現として決して褒められたものではないが、それは別にしてやはり楽しそう。「立てこもる」といえばかなり上位に思い出すのが本作。この要素が一番強い。やったら後でとんでもない目にあうのだろうけど、原作を読んだ時からこれを行うことにちょっとの興味や憧れも持つ。
オタク的にちょっと気になったのが、子供たちがまだ家で生活している時にファミコンの「コナミワイワイワールド」を遊んでいること。古い作品だけに、出てくるゲームもまた古い。ポップな感じに見せておいて結構難しいゲームだったなと思い出す。そして設計図を書くインテリ少年がドラクエの城を書いてるのも印象的。
廃工場に立てこもった後にも子供たち同士で友情を育み、喧嘩し、後から女子も呼んでパーティーしたりして楽しそう。
秘密基地感たっぷりな工場の雰囲気も良かった。住みやすいところなので、野良生活の先人であるおっさんホームレスが住んでいて、これとも仲良くやって行く。
酒を持ち込んでいるヤツもいるし、最後はガキだけで花火を打ち上げて子供達もかなりやり放題だった。未成年の酒はもちろんダメだし、花火は国家資格がないと打ち上げてはいけないとアニメ「あのはな」で学んだ。
学校に戻れと説得してくる大人達を派手に追い返し、そこから騒ぎはもっと大きくなり、最終的には警察、機動隊の国家権力も動くことになる。
廃工場で偶然にも発見した戦車に乗り込み、運転して暴れる子供達も描いていた。色々とツッコミどころ満載なだけに楽しい。未成年の戦車の運転もやはり大きな罪になりそう。戦車の専用免許ってあるのかなとか思った。
廃工場を舞台に大捕物が展開する後半シーンは見どころだ。工場に突入してきた大人達に様々なトラップを仕掛けて撃退する様は爽快だった。巨大な福助が落ちて佐野史郎が下敷きになるのはいい気味だった。
いろいろあったけど、みんな揃って花火を見る後半シーンではなんだかしみじみときて、結果的にええ話しやったなぁの雰囲気に持っていかれる。
その後、子供たちは「次の狙いは国会議事堂だ」とかほざいて終わっている。反省とかはないみたい。
大人もそうだけど、子供達のお返しも色々悪い。とりあえずここまでの騒ぎになったからにはコイツら皆少年院送りで良いと思う。
その昔は地方のガキに過ぎなかった私だが、今となっては子供と大人を自由に行き来できるようになった。どちらの目線でもこの物語を楽しむことが出来る。
大人に不満がある子供ならではの気持ちは誰しも経験したことだろう。大人になってから本作を見ると色々と刺さるものがあったりなかったりする。そんなちょっとした気づきが得られる本作だが、まぁ単純に面白おかしい青春を見て笑えば良いというだけの映画であるとも言える。とにかく良い一作だった。
自分の生きる場所を守りたければ戦うのみ!
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