こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

牧場を守る優しきゾンビ達「ぞんびだいすき」

ぞんびだいすき」は、2011年に発売されたニンテンドーDSソフト。

 

 私の人生史上二本目にプレイしたDSソフトである。なかなか思い出深い一本になってしまった。

 

 2004年発のDSの中では随分後半の新しいソフトだ。まだ発売から10年と経っていない。発売後一桁年のゲームをするのもまあまあ珍しい。本作は私にとってとにかく新しく、そして大変おもしろかった。

 

 2020年を迎えるまでマジで全く知らないゲームだったけど、たまたまネットで見かけた時、あのチュンソフトが出しているゲームだという点に目を惹かれた。なにせこの私、チュンソフトさんの出したあれこれのノベルゲームや風来のシレンとかで大きくなったので、この会社の仕事には感謝し、信頼もしている。

 

 この心惹くタイトル「ぞんびだいすき」を見て、そう言えば私はゾンビが好きだったと思い出す。これまでも「ゾンビリベンジ」「ゾンビハンター」「ハウス・オブ・ザ・デッド」「グールパトロール」など、ざっくり言えば「死体が動いてなんかする」というジャンルの作品を好んでプレイしていた。この作品も私の中のゾンビ史の新たなる一本に加わった。と言っても9年も前のゲームだけど。

 

 パッケージ裏を見ると、ジャンル「ぞんびぞろぞろアクション」と表記されている。

 出たよ、このゲーム用に作ったとしか思えないオンリーワンの謎ジャンル。いつからだろうか、「DD.C.II 〜ダ・カーポII〜」を買ったらジャンル「こそばゆい学園恋愛アドベンチャー」とあった時くらいから謎の面白ジャンル表記が横行するようになったな。まぁいいんだけどね。どうせゲーム屋に持っていったら従来の数を絞ったジャンルのどれかにぶっこまれるのだろうけど。

 

  

 

ぞんびだいすき

 

 とある牧場に日々勤労する農民達がいた。

 ある時、荒くれ者達が牧場をめちゃめちゃにしてしまい、牧場の人々は死んでしまった。と思ったら、謎のボンベから漏れる謎のガスを吸ってしまった農民たちはゾンビになってしまった。

 ゾンビになった農民たちは、めちゃくちゃにされた牧場を元に戻したいと願い、大事なものを取り返すため人間たちに逆襲する。

 

 という分かりやすい導入が敷かれている。

 

 牧場は分かりやすくボッコボコにされている。ゾンビになっても牧場を大事に思う心は死んではいない。さまざまあるクエストをこなすことで、牧場復興を目指す内容となっている。

 こちらも人生で大変お世話になったゲーム「牧場物語」の感じもちょっとだけして良い。

 

 まずゾンビたちが可愛い。キャラの絵柄はかなりポップで、街並みの感じなどを見てもちょっと「Mother 2」感がある。スーパーマーケットで戦うステージなどを見れば、Motherにもこんなステージがあったと思い出した。懐かしい感じがして可愛いキャラデザが良い。そういや「Mother 2」にもゾンビがぞろぞろ出てくるところがあったな。

 

 ゾンビたちは基本良いヤツで、打倒するのは悪い市民達である。ゲームの敵キャラで「しみん」と表記されるのが何だか生々しい。

 悪しき市民、謎の博士の謎の試作ロボ、他には格闘家、ヒーロー、マジシャンをはじめとした各業界の猛者タレントなどを相手度ってゾンビ達が戦う。

 敵も個性的で各種ジャンルが揃っている。それだけにぶっ潰すのが楽しみになる。

 

 DS性能としては基本なのだろうが、DS素人の私から言ってこれがすごいというのが、タッチペンで画面をつついてゾンビを操作すること。前回遊んだ「New スーパーマリオブラザーズ」ではペンの厄介になることがほぼなかったのだが、これはペン操作が肝になっている。とにかくタッチパネルという技術が未だに新鮮なものであるという感覚の私からすると、ボタンを押さずしてゾンビをあちこちに動かせるこの仕掛が不思議で、それでいてとても楽しい。ちょっと前に寿司屋に行った時にもタッチパネルで寿司を注文するのに驚いて手間取ったくらいタッチパネル文化に疎いからこれは新鮮で楽しかった。

 

 ストーリーの本筋を追うメインクエスト、ちょっと変わった仕掛けのサブクエストを淡々とこなして牧場復活の道を行く。

 

 メインクエストの方が簡単で、これは分かりやすく力をぶつけて悪者をぶっ倒すというもので、別段手こずることはなかった。曲者なのはサブクエストの方である。こちらには勝利条件が様々ある。倒してはいけない相手がいたり、制限時間内にアイテム探しを行う、コンボ技をひたすら続けるなど、頭を使わないといけないことが多い。ステージ内の窓ガラスを全部割って帰ってくるクエストとかは地味にムズくて地味に楽しかった。同じゾンビを操るでも目的が様々あって面白い。

 

 クエストに出て牧場に帰ってくると、牧場の畑で作物を育てることが出来る。それをゾンビに食わせて強化を計ることが出来る。出来る作物はマジで色々で、こいつら本当に何でも食うんだなと思える。むしろゴミでは?というものも育つが、ゾンビ達は綺麗に全部食ってくれるので気持ち良い。

 牧場の復興を続ける過程で可愛い牛さんもゲットして育てることが出来る。こうなるといよいよ「牧場物語」を感じる。

 

 ギャクめいたテンションの演出も愛しいもので良い。

 メインクエストをクリアするごとにニュース番組が流れ、その中に映る人間たちがなかなか楽しい掛け合いでゲームを盛り上げてくれる。アメコミ風なキャラ達も楽しい。ゲームの進行状況を実況するようなこういった演出といえば、「ジェットセットラジオ」のゲーム中のラジオ番組を思い出すよな。

 

 ゾンビ達は同じような見た目をしていても人間の頃からの名前がついている。一人一人のプロフィールがあり、それぞれが人間時代には個性的な連中だったとわかる。皆のプロフィールを呼んで行くのも地味に楽しかった。

 

 操作できるゾンビはステージをクリアするごとにちょっとずつ増えてくる。たくさんになるとその分ゾンビの後進に迫力が増し、画として楽しい。全ゾンビで市民に突っ込み、ゾンビの渦の中でタコ殴りにするのが最高にストレス発散となって良い。

 

 1ステージ10分もかからずサクサク進めるのでかなりストレスが少ないゲームだと思う。そんな中、本作で一番ムカつく要素が市民に混じって登場する「カメラ小僧」の存在。

 このカメラ小僧に録画された状態でしばらく経過すると、機動隊がヘリでやって来る。機動隊はアホ程強いので、ヘリが到着したらほぼ「オワタ」と思った方が良い。

 録画からの機動隊到着を阻止するならカメラ小僧にとどめをさせば良いのだが、コイツが無駄にスピーディでなかなか捕まらない。ゾンビ達を突っ込ませてもワープのごとくすばやくかわしてしまう。そして倒したとしても市民と違ってしばらく時間をおいたら復活する。常にカメラ小僧の存在を気にして進める慎重さが必要。このムカつく要素があるから面白いゲームバランスが取れているのだろうけど、やっぱりあいつは腹が立つ。

 

 おまかせバトルモードが便利で、この機能には大変助けられる。時にはゾンビ操作を休みたくもなるものだ。

 放っておけば、ステージのあちこちにゾンビが分散され、それぞれの場所で市民をぶっ倒す仕事をきっちり行ってくれる。

 自分が上から見ている内に、街のあちこちで戦闘が起きている。この感じが「シムシティ」で上から見ている間に街が出来きてくる感じと似ていて楽しい。

 

 エンディングの語りにドキリとくるものがあった。実はプレイヤーであるこの私に向けられた言葉だったという粋な計らいが見られた。さらっと流しているようで、深みのあるメッセージ性がこめられているのではと思えるラストでもあった。

 

 死してなお農民として生きているゾンビ達は充実の時を送っている。ゾンビになっていない現在生きているあなたは、作中のゾンビ達のように充実した生きた時間を過ごしているのか?みたいな挑戦的メッセージだった。死人と違って生のあるプレイヤーへのエールにちょっとの皮肉もこめられたような小粋なメッセージが良い。

 

 パッケージやタイトルからはゲームの中身がどんなだがいまいち予想出来なかった。

 しかしやってみるとコレがマジで面白く、病みつきになる。

 

 

 晩に一度布団に入ってもゾンビ達の「う~」や「あ~」の叫びが忘れられず、皆で囲んで悪い市民をフルボッコにするあの素敵な感覚を味わいたくて深夜に目が覚めて朝まで遊んじゃうなんてこともあった。何なんだろうこれ、洗脳とかなのか?とにかくハマる。

 

 こんなに手放しで「オモロイ!」と言えるのも久しい。私とは大変相性の良い一作だった。世界観、キャラデザもポップで子供でも楽しめると思う。しかし、決してヌルい難易度ではなかった。だからこそ皆が楽しめる良いバランスのゲームだった。

 

 申し訳ないが、プレイ前にジャケットを見た段階では名作感がまるでないと感じていた。今となっては失礼な先入観を抱いたことに「ごめん」を言いたい。

 

ぞんびだいすき

ぞんびだいすき

  • 発売日: 2011/01/20
  • メディア: Video Game
 

 

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