こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

オタクは皆メインヒロインを求めている「冴えない彼女の育てかた」

冴えない彼女の育てかた」は、2015年1月から3月にかけて放送された全13話のテレビアニメである。  

 

 約一年前に冴えカノファイナルとなる劇場版が公開された。

「これは見ないと死ねない、でも劇場に足を運ぶには色々と都合がアレなのでBDが出てからゆっくり見るか」と思っていたのが昨日のようだが、あれからしっかり一年が経って無事BDも発売された。一年前には、劇場版主題歌が収められた春奈るなのCDだけを先に聴いて楽しんでいた。時の流れが早すぎてBD発売までの約一年なんて懐かしむ間もなかった。それにしてもBD発売が加藤恵の誕生日である9月23日だったのはエモい。

 

 劇場版を直ちに視聴することが出来る状態ではあるが、長らく続いたシリーズのオチをこれから見るにかかるのに、それ以前のことをまあまあ忘れているのではないか。頭からの流れをしっかり把握してからオチの話を見る方が絶対にしっくり来るし、気持ちも高まるだろう。「だったら一話から全部見直そう」と考えると直ちに一話から再チェックすべく行動に出るのが私という真面目な人間である。

 

 劇場版の前に、改めて冴えカノをテレビアニメ一期から視聴した感想をダラダラと書き殴っていこう。

 

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お風呂回から入る変則的なスタートが良い 

 本放送を見た時から忘れもしないのが、第0話と銘打った本作第一回放送の存在である。いきなりのお風呂回でヒロインズのセクシーシーンがたっぷり。目の保養でしかない素晴らしき幕開けだった。

 実に景気の良い一発目を飛ばしたのだが、ヒロインが可愛くてお風呂シーンが神々しいということ以外はなんのこっちゃなアニメだった。良くも悪くも一発目にしてはインパクト大だったのは確かなことである。

 この0話はメインとなるストーリーの流れは無視して、とにかく盛り上げるための番外編となっている。BDのオーディオコメンタリーを聴いて分かったが、原作通りのスタートだと記念すべき一話目には地味なので、このような変則的な放送形態になったとのことだ。とてもよく考えられている。

 

 フジのノイタミナ枠で放送した作品であるが、今思えばノイタミナ枠でこのテイスト作品は異質な選出だったかもしれない。オタクがゲームを作ってラブコメるというのはこの枠では奇抜なものだった。

 フジテレビの作品は清いものであるという感じで売っていく意図からか、どこぞのスケベな作品のように不自然な湯気、光線で女人の局部をぼかすといういかにも我々はエッチなものをお届けしているという演出はやらないらしい。そんな訳で裸の時間であるヒロインのお風呂シーンは、不自然な隠しのエフェクトの介入を必要としない健全な範囲のセクシーを見せるよう色々工夫されている。そんな頑張りが見られる0話がとにかく良かった。

 

オタクの矜持を語るメインシナリオ

 お祭り騒ぎ状態で楽しいだけの導入となった0話の次の1話からが本当のストーリーの第一歩である。

 オタクの主人公少年の安芸倫也が、最高のギャルゲー(全年齢向け)を作るために奮闘する青春物語が展開する。最高のゲームを作るために最高のクリエイターを迎えてサークルを作り、そのサークル活動の中で展開する人間ドラマが楽しめる。

 消費者として自分は最高の作品をいくつも楽しんできた。であれば次には自分が他所様を感動させる作品を作りたい。このように素人がクリエイターへと転身する心理が語られるものであり、クリエイター熱も伝わるものになっている。

 主人公以外のサークルメンバーは皆超絶美少女であり、メンバーとのラブコメ展開は萌える要素として楽しめる。

 

 まず主人公の安芸倫也のオタク性が面白い。多くの場面が彼の自室で展開するが、この部屋がオタク要素満載で良い。よその作品から許可を取り、実際の作品をパロディでなくそのまま出しているのがオタク的に嬉しい。

 倫也の部屋を見ればSAOのフィギュアがあり、ラノベには「ハイスクールD×D」「生徒会の一存」、ポスターなら「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」なども見られる。ゲームソフトでは「俺たちに翼はない」などの名作が見られた。私が個人的に一番反応を示したのは、ゲームソフトの中に「車輪の国、向日葵の少女」も見られたこと。先日遊んだゲームだが、かなり面白くて大好きになったソフトだ。倫也も遊んでくれていたなんて嬉しいぜ。オタク愛をたっぷり感じる良い演出だった。

 

 言動の端々にオタッキーなものを感じる倫也だが、家でゲームをするばかりの閉ざされたオタクではない。新聞屋や喫茶店でバイトもするアクティブな面も持っている新時代のハイブリッドなオタクでもあるといえる。今時のポップなオタク象がここに見られる。

 

 本作では主人公の他、一部のヒロインもオタクということで、とにかく共感出来るオタク心理が散らばっている。オタクこそに受ける作品だと思う。

 英梨々と倫也が、オタクであるが故に非オタとの壁を感じて一度は離別した幼少期のエピソードは一般的なオタクあるあるだと感じる。触れもせずににオタク文化を敬遠しにかかる、または中傷しにかかる非オタに対して、倫也や詩羽がそれは楽しい世界を自分からシャットアウトする損なことだと考えている点にも深く共感できる。この作品ではオタクの矜持が語られている。オタクは意外と意識が高いのだということをたっぷり伝えている。

 

 マジでオタクを極めた者であれば、もはや非オタの存在など眼中から消え、誰の介入も無視してオタク道を歩むことが出来る。そこら変が見て取れる展開が倫也達サークルメンバーの日常シーンにある。学校やファミレスなどの公共の場でも、周りの者はいないも同然の感じで堂々とオタク談義を展開する倫也達の姿が爽快に描かれている。オタクであることが格好悪いのではない。それをオープンにすることが恥ずかしい趣味であるという恥じらいを持っているその心こそが恥ずかしいのだ。倫也達のように堂々としているオタクは清く美しい者である。どこの誰に向けてもオープンオタクな私はそう思うのである。

 

 倫也と関係する人物のほとんどは女子キャラで、それらはどこをどう見ても可愛い。オタクが美少女とラブコメを展開するという前情報があれば「どうせ童貞が考えたようなファンタジックな痛い話なんでしょ?」と軽んじて投げるなんていう失礼極まりない者も幾人かいるだろう。しかしこの物語は、そんなヤワなものではない。ベースこそオタクがゲームを作って女子と楽しく青春を送るという甘々なものを敷いているが、中身は骨太でリアルな人間心理が交錯する上質な青春群像劇になっている。

 

 オタクだってアニメやゲームを見て「萌え~」とか言ってバカ丸出しで人生を無為に終える者が全てではない。倫也は人生の目標に向けて考え行動し、その先でクリエイターの苦悩を味わい、人間関係の複雑さも知ることになる。だがそれを越えて人間的に成長し、サークルメンバー同士の絆も強固なものにしていく。確かにヒロインズの可愛さにキュンキュンもするのが第一のお楽しみ要素だが、ちゃんとしたサクセスストーリーでもあるので、純粋にストーリーとキャラ同士の人間ドラマが面白い。高いコミュ力が飛び交ってが展開する軽快な会話劇もクスリと笑えるもので面白い。見応えはたっぷりであった。

 

  オタク部屋である倫也の自室に毎度とっかえひっかえで色んな女が上がり込んで宿泊もしていくのだが、これといって男女の問題が起きないので安心して見ることが出来る。女が自由に行き来する倫也の家にはいつだって親が不在というのがやや気にかかる。別に離婚した訳でもない普通の家庭らしいがいつもいないのである。倫也の人間関係を見ると、なんだかんだあるけど結果とても楽しそうだと思える。

 

ヒロインが強い! まずは先行するツインヒロインから

 極真面目な視点から作品の質の高さを語ったが、まぁなんだかんだ言っても一番食いついた部分はヒロインがマジで可愛いということである。ホント、なんでこんなに可愛いの?という話である。この作品はとにかくヒロインが強い。ヒロインズの思い出も語りたい。

 

 最高のクリエイターとして倫也がサークルに引き込んだのがイラストレーターの澤村・スペンサー・英梨々シナリオライター霞ヶ丘詩羽の二人である。まずこのツインヒロインが作品を牽引する強い要素だった。

 二人は互いに凄腕の作家で、学園の二大美女と設定されている。見た目の可愛さは言わずもがな、個性も突き抜けて際立つものを持っていて、どちらも名物ヒロインと言える。

 英梨々は倫也の幼馴染ヒロインにして金髪ツインテツンデレヒロインでもある。体型はちんちくりんでロリ枠を占めている。対して詩羽は巨乳のお色気お姉さんで黒髪ロングキャラである。

 英梨々はニーハイで絶対領域を作り、詩羽は絶妙なスケ具合がナイスとしか言いようがない黒ストッキングで決めて来る。なかなかフェチズムを刺激する良いものだった。

 対比するステータスがあり、どちらも倫也に好意を持っている点から毎度めちゃめちゃ喧嘩する組み合わせである。作中のトムジェリ枠でいつも喧嘩しているけど絶対に仲良しだとユーザーが分かるように見せている点が良く、ユリ萌えの私としては外せないカップリングがここ二人である。

 

 癖の強い作家ヒロインの二人だが、どちらも強かな女であることは確かなことであり、可愛いだけの女には終わらない。

 倫也の一番になると誓って一生懸命イラストを仕上げる英梨々には感動した。

 普段はかなり強気に倫也に攻め込んでくる詩羽が、倫也とホテルに宿泊する時にはドキマギするところも見せた点には萌える。詩羽とのホテルお泊り回はドキドキが止まらなかった。ここ一番で攻め切れないややヘタレなところも見せるお姉さんヒロインで良い。

 

 キャスティングも非常に良い作品だと思う。英梨々を演じるのは現在私が大変推している大西沙織である。しかしこれを見ていた当時には薄っすら名前を記憶しているくらいで声や芝居については記憶していなかった。今見てみるとやっぱり英梨々の芝居が可愛い。大西沙織ツンデレのチビ感が出たこういう演技も珍しい気がする。

 詩羽を演じた茅野愛衣の芝居も当時は斬新なものに感じたと記憶している。やはりメンマの女優というイメージが強かったので可愛らしく清純なヒロインをするので慣れていた。しかしそこへ来て詩羽ときたら最初こそクールビューティーで売っていたが早々にキャラ崩壊してエッチな面白ネタ女になるから茅野愛衣のこの感じの芝居はなかなか衝撃的なものだった。詩羽のエッチな芝居にはドキドキした。女優として魅せ方が様々だなと感心した。

 役者の腕もあって光った名物キャラクター達だった。 

 

究極ヒロイン加藤恵の歪なヒロイン性

 英梨々と詩羽、ぶっちゃけ言えば初っ端からここまで強烈な二人が出てくれば、後は何が出てくるのさとあまり期待にせずに待っていたところに投入されたのが究極のヒロイン加藤恵である。このヒロインがすごいのである。

 

 加藤は文句無しに可愛いのだが、序盤に倫也が指摘する通り「個性が死んでいる」ヒロインなのである。感情の起伏が激しくはないが無感情ではないから綾波レイのポジションは取れない。地味キャラで売るにしては華が残るから地味というある種強いキャラ性は勝ち取れない。では何キャラになるのか?倫也も我々視聴者も「よく分からん女」の扱いになるのだ。

 これまで数多のアニメを視聴してきて、数多のヒロイン属性に触れたが、それらどれにも当てはまらないザ・新ジャンルヒロインとなったのが加藤恵だった。この点で冴えないヒロインなのだろう。これまで腐る程アニメが放送されてきたのに、ここへ来てまだ新たなヒロインジャンルがあったのかと衝撃を受けた出会いであった。

 

 おかしいのが、こんなどの枠にも収まらない加藤こそに自分の考える最高のメインヒロイン象を見た倫也の想いである。

 坂道で女子の落した帽子を拾うことで運命的な出会いを果たした倫也が、美少女ゲームならこれは最高のイベントだと感動する。シチュエーションに感動するばかりで帽子の少女のことは放ったらかしにしていた倫也が、その少女が地味なクラスメイトの加藤と後で知ることで物語は大きく変わっていく。最高に上がるイベントを共にした相手に実は前から会っていて、それが自分にとってはモブキャラだったという点も面白い。関係ないけどヒロインの帽子を拾って運命的な出会いというこの導入から「きまぐれオレンジロード」の鮎川の麦わら帽子をキャッチした春日くんの構図を思い出した。先日作者がお亡くなりになったとニュースを見てきまぐれオレンジロードのことも懐かしく思い出したぜ。

 

 これまでモブに過ぎなかった加藤だが、磨けばメインヒロインになれるだけのものがあると倫也は信じ、「メインヒロイン」というともすれば痛々しいオタクの妄想が産んだ謎の枠で加藤をサークルに引き込むことになる。倫也が加藤の歪なヒロイン性に触れたことで始まるこの謎展開こそが物語の面白い点となった。

 

  倫也からメインヒロインと信じられた加藤が、序盤には見切れていたり、セリフも少なかったりと、アニメーション技術として意図的に雑な扱いを受けている点も一つの工夫として楽しめる。

 

 それにしても伝説の坂道シーンの加藤恵の衣装が可愛すぎる。序盤こそ一部の客層から「ステルスモモの再来」と評されたステルス系女だった加藤だが、実はおしゃれさんで本編中では様々なファッションで登場し、そのどれもがキュンキュンする当たりなもので萌えまくってシンドイ。

 特に思い出に残るのは第3話で伝説の坂道に再び戻って加藤がメインヒロインのお芝居をするところ。マジ可愛くてすごかった。よく見るとパンチラもしていて神々しいものだった。

 

 倫也が見出した可能性の塊である加藤のことは、英梨々や詩羽もコーディネイトして皆で上に上げていく。多くの視聴者にとって3番手の女だった加藤が、徐々にメインヒロインの輝きを増して行くのが実感出来る物語構成には光るものがある。

 何もない大地に種がまかれ、作物が実って収穫できて食べた時、人々は最高に喜びを感じるのである。加藤の成長物語を追うのにもこれと同じ面白みと喜びがある。

 

 最初こそ強いツインヒロインに注目してそちらに気持ちを持っていかれるのだが、段々と加藤も気になって来て、気づくとズッポリハマっているという仕掛けが素晴らしいものだった。

 

 キャラをつけようということで加藤が唐突にポニテにする展開が用意されている。いつぞやの涼宮ハルヒいきなりポニテ事件のごとき衝撃的萌えを食らった展開であった。大方の男の子が巨人大鵬卵焼きに次いでポニテが好きなのである。加藤のポニテは反則的に良いものだった。

 

 加藤を演じた安野希世乃とはここでお初だった。メインヒロインのくせして覇気が死にかけた眠そうな喋りが特徴的なキャラクターで、ガッツリ芝居をしにかかるとキャラ性を崩しかねない。そんな訳で演じるなら難しい役どころだったのではないかと思える。安野希世乃のなんだか和む優しい声がクセになる。後にソロシンガーデビューもしたくらいだからキャラソンを聴いても歌が上手いと分かる。歌声も良い女優だった。

 

広く見ると5ヒロイン性である

 多くはサークルの初期メンバーである3人のヒロインをとっかえひっかえでメインシナリオが展開するので、実質トリプルヒロイン性だったと思う。しかし広義の目で見ると、ここに波島 出海と氷堂 美智留を加えた5ヒロイン性で攻めた作品だった。この二人はそもそも合流が遅い上にその後もダンチで出番が少ない。作中のキャラ同士でもこの点はネタにされている。だが忘れられない良いヒロインでもあったのも確かなことだ。アニメ作品に触れればもちろんシナリオを重視するのは当然だが、私はヒロイン評論が趣味なのでここ二人も良かったと振り返りたい。

 

 5人のヒロインの属性はもちろんそれぞれが輝くよう別個のものとして散らしている。

 出海は一番年少の中3だけどおっぱいはすごいという可能性たっぷりのロリ巨乳キャラとして描かれる。言動が諸々あざとく、その点の表現に定評のある赤﨑千夏の芝居がハマっていた。英梨々とは同じイラストレーターとしてライバル関係にある。思えば英梨々は全ヒロインに噛み付く癖があり、英梨々と各ヒロインの絡みも楽しかった。

 

 どこのラブコメにも無意味に脱ぐ困ったお色気キャラがいるが本作でいうとその枠が美智留だった。倫也と同じ年同じ日生まれの従姉妹ヒロインという美味しい設定がある。倫也の幼馴染であることがアイデンティティだった英梨々だが、産院からの付き合いという究極の幼馴染だった美智留の登場を迎えてからは完全にお株を持っていかれてしまう。そんな英梨々が詩羽から「パチもん幼馴染」と揶揄される展開は笑えた。

 非オタでバンド女子だった美智留だが、バンドを組んでいる他メンバーは皆オタク女子だったことがあとで分かる。そんなわけで、知らない内に仲間からアニソンをたくさん聞かされて歌わされ、すっかり洗脳が終わっていたと分かる展開が面白い。アニソンばかり聴いて作曲もアニソン曲調寄りというわけで、倫也のサークルのゲーム音楽担当になる。

 かなり後半の登場となったが美智留の物語は楽しかった。美智留のバンドメンバー女子も可愛い。

 

 美智留を演じた矢作紗友里の声がやっぱり良い。バンドボーカルの役だから劇中で歌唱も披露してくれて嬉しかった。これのちょっと前にも「さんかれあ」で主人公の従姉妹ヒロインを演じていたのが良かったので今回も良質な従姉妹ヒロイン役が光っていた。

 

まとめ

 冴えカノは如何にもオタク受けする要素を前面に出しているが、掘っていけば上質な人間ドラマであり、非オタでも楽しめるものだと私は信じている。それくらいに良いものだった。そしてヒロインが可愛すぎるので楽しい。久しぶりに視聴したきっかけでヒロインのフィギュアとかが欲しくなった。

 

 OP曲の「君色シグナル」、ED曲の「カラフル」も未だに聴いて楽しんでいる良曲である。おすすめだ。

 あとはWEB公開となっていた毎回の次回予告がネタ多めな上にうるさくてウケる。

 

 オタクには人生のモチベーションを上げるヒロインが必要なのである。そのことがよく分かった。

 

 誰もが誰かにとっての加藤恵なのである。あれ、これは違うか。

 

 

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