こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

青春の立てこもりがアニメで復活「ぼくらの7日間戦争」

ぼくらの7日間戦争」は、2019年12月に公開されて劇場版アニメ。

 

 宮沢りえの代表作である実写版を先日視聴した。あの実写版から30年の時が流れた2020年が舞台の新たな物語となっている。

 子供が大人を相手にして施設に立てこもるという構造を残しつつも、あとは現代的にいろいろいじった挑戦の一作になっていた。

 よ~く見てみるとタイトルにちょっとだけ変更点がある。実写版のタイトルは「七日間戦争」となっていたのが、今回のアニメ版では「7日間戦争」になっている。とりあえずきっちり一週間の戦いが描かれる。

 

 歴史小説の中でも戦略家に特化した渋めのオタクの主人公くんが、親に無理やり転校させられることになった幼馴染の女子を連れて炭鉱に立てこもるという内容になっている。おまけで愉快な仲間達もついてくる。あと、出てくるヒロインが皆可愛い。

 今回でもやはり大きな施設に立てこもるのがちょっと楽しそうで、とってもやばいと思える。

 

 新旧各時代の子どもたちが立てこもる理由とテンションは様々だと分かる。宮沢りえの実写版を見ると、もっと大人の素行が悪く、子どもたちが理不尽に苦しめられる様が見られた。今回でもメインヒロインの親父がとんだパワハラ政治家なので悪いのは悪いのだが、子供よりむしろ同僚の大人達に対してキツく当たっていたと想う。急な転校を嫌がる乙女心は分かると言えば分かるが、あそこまで規模の大きな反逆までやる?とも思えた。ちょっとだけ反逆への理由が弱かったかもしれない。いずれにしろ仕掛けられた行為のダメージの大小かかわらずキレやすい若者はいつの時代にもいるものだ。

 

 炭鉱には先に不法入国者のマレットというガキが住み着いていて、家出の子供達を捕まえるのとは別口で大人が炭鉱にやってくる。役人が不法入国者を取っ掴まれるのは当然のことで、それなのに子供たちがマレットを匿って大人たちを追っ払ってしまう。これはちょっと駄目だろうとも想う。キャラクターがセリフでちゃんと言ってるけど、幇助罪とかになって匿ったヤツもアウトっぽい。

 

 ヒロインの親父が荒れた政治家で、不法入国者がいるという点をプッシュしたのが現代的な新要素だったのかとも想うが、考えればいつの世でもどっちもいるっちゃいるよな。政治家の親父のカツラがバレて皆に泥団子を食らう後半シーンにはスカッとした。

 それにしてもヒロインの親父は悪だったな。政治家と仲良くしないと仕事をもらえなくなるという大人の会社事情が見えたりもしたし、正しい大人は上の人間の言うことに従う者だという意見もパワハラおっさん特有のもので印象に残る。言われたことになんにも従わないヤツは終わっているけど、かと言って何でも聞くように仕向けるのもやっぱり良くないよなと思った。

 

 ヒロインの父親の下っ端が、立てこもった子供たちの顔をネットに晒すことから始まるネット社会の闇の部分を掘った展開は今時な感じがしてリアル性があった。他の関係者がネットで子供たちの黒歴史を晒す展開を見てもネットって怖いと思えた。櫻井孝宏演じるこの下っ端男が時に物事の確信を突く洞察力も見せるのだが、顔写真を晒したのは悪いと想う

 

 ネット晒しの関係から、立てこもった子供たち同士の友情にもヒビが入り、一気に鬱展開へと流れが変わる仕掛けはショッキングだけど嫌いではなかった。

 ここでそれぞれが腹に抱えていることを暴露しあうのが、なんか「あのはな」後半のお寺でのシーンみたいで青春を感じた。

 腹に溜まったものをさらけ出すことで再び子供たちが結束する流れになるけど、幼馴染ヒロインを裏アカで晒して悪口行ってたヒロ君は簡単に許しては駄目だろうとも想う。

 

 議員の娘と仲良くなると父親の仕事が安定するという理由で、香織が綾に近づいたという偽物の友情が暴露される。しかし、入りは偽でも今は互いに好きあっているということが分かる女子二人の関係にやや萌えだった。あれはもしかして友情を越えてのラブだったということか……やっぱりそうだよな。あまり深堀りしていなかったけど、ユリ告白だったとも感じられる。という訳で薄っすらとユリ要素もあった。前情報になかったまさかの展開となり、ユリ萌としては嬉しい。ええやん。

 序盤で香織が「綾にちょっかい出すな」的なことを鈴原に言ってたあれは、ちょっとのおせっかいでなく、お前の方でも好きだったのかと後で思える。

 鈴原のチャット仲間の玉すだれさんも言っていたように「青春時代は、人生の解放区」なのだから、このようなユリ解放もあってよいではないか。玉すだれさんのこの格言が素敵で印象に残る。おそらく視聴者の多くがユリ展開に困惑しただろうが、私としてはアリだった。でも鈴原くんが可哀想。

 

 玉すだれさんと言えば、初期こそ誰だよコイツと思えたが、最後の最後でこの人こそ宮沢りえその人だと後で分かった。玉すだれさんの車の中に、戦車の前で撮った子供たちの集合写真があることにグッと来る。30年前から時が繋がっていたのだと分かるのが嬉しい。宮沢りえもこの30年で色々あっただろうなとか想うと、人生って深いと分かる。いずれにしろ青春とはとても尊いものである。

 

 マレットが髪留めをしたことで鈴原がやっとマレットの正体が女子だと気づくシーンもちょっと萌える。男だと思っていたヒロインが本気になると萌えるという昔からある萌えのパターンが見れた。マレットも忘れてはいけないヒロインだった。

 

 東京に行った後の綾の制服姿も眩しいもので目の保養となった。

 事件後子供たちはとんでもないペナルティを背負うことになるのだろうが、最後は明るい感じで終わって良かった。

 

 現代版にすると色々変わった感じに仕上がったが、いつの世だって子供も大人もある程度は勝手なものなのは同じ。良い度合いを見て譲り合うのが必要である。

 主人公が歴史的策略家からヒントを経て考えた作戦を大人達にぶつけたり、モールス信号でエレベーターの操作を行うなどのマニアックな要素は良い意味で目立っていたと思う。社会派な一面も見える青春ストーリーで、時間的な点からもサクッとまとまっていて見やすかった。

 結果としては悪くない青春の反逆を描いた物語だった。

 

 人生は反逆したりされたりの繰り返しが死ぬまで続くものであるとまとめて、この映画の感想を終わりにしよう。

 

 

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