こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

独特の雰囲気があるワンダースワンのノベルゲーム「テラーズ」

「テラーズ」は、1999年に発売したワンダースワン対応ソフト。

 

 先日押し入れをあさっていると、ワンダースワンを発見した。セットで「テラーズ」という不気味なジャケットのソフトも出て来た。であれば「よし、やってみるか」となる私の心理に不自然さはまるでないだろう。しっかりちゃっかり遊んだのである。

 あと、マジで何にも関係ないけど、昔見て楽しんだ映画「嘆きのテレーズ」に語感オンリーで似ている点に親しみが湧いた。それもあって手に取る意欲が増した。

 

テラーズ WS 【ワンダースワン】

 

 ジャンルは「ノベルシアター」と銘打たれたもので、要はチュンソフト必殺のサウンドノベルと同じようなものである。

 

 ゲームをスタートさせると、謎の5冊の本が現れる。それぞれ怪奇的内容が納められた5つの物語をプレイヤーが読み進めていくというもの。

 

 各シナリオのザックリとした内容は以下の通り。

 

怨霊旅館

 田舎に旅行に来た青年は、そこで出会った家出美少女と行動を共にし、旅館を目指す。その旅館に入るととんでもない恐怖体験を行うことになる。無事脱出を目指して頑張る話。

 

愛しき友

 女子二人が共同生活するマンションの一室の隣には男が住んでいて、そこから喧しいステレオコンポの音が毎晩聞こえる。ステレオの騒音問題を何とかするべく働きかける内に、何ともならない恐怖が彼女達を襲うという、リアルにあってもおかしくないご近所トラブル談。

 

小さなお化け屋敷

 仲良しJK三人組が、噂のお化け屋敷に入る。どうやらショーではなく、マジの怪奇現象が渦巻くお化け屋敷だと分かり、そこから何とか脱出するべく奔走するお話。

 タイトルにには「小さな」とあるが、登場するお化け屋敷は部屋数も多く、手の混んだ仕掛けの装置もあったりで、小さい感じがしない。むしろしっかりした規模って感じ。

 

きしむ音

 きしむ音、それは田舎にいる祖父の胸から、そして僕の胸からも聞こえる。主人公青年はそれに気づくのだった。自分達の正体がゼンマイで動く人形と知った彼。その秘密を彼女に知られる恐怖。不安定な精神の中、人形の体に人間の心を宿した彼はどのようにして青春に決着をつけるのか。そんな重めな人間ドラマと怪奇が渦巻く魅せる話。

 

マザーボード

 両親がおらず、天涯孤独なJKの主人公は、学校で恐怖体験に遭遇する。その中で、現在お付き合い中の彼氏の人間性の是非を問う心理の物語も展開する。思春期の心は難しく色々ある。そんなことが分かるお話。

 

 ↓

 

 以上5つの物語を読むと、6つ目の隠しシナリオがオープンする。ありがたき隠し玉である。

 

 扱うネタには、霊的怪奇現象、マンションでのご近所トラブル、ややファンタジックで人間の心が宿った人形などの要素を扱っている。幅広くて楽しい。

 どれも退屈せず面白く読めるもので良い。マンションでのご近所トラブルを扱う物語は、スピリチュアルやファンタジーの要素はゼロで、リアルに人間関係で起きる怖い揉め事を扱っている。これが一番親近感が湧いて面白かったかもしれない。

 

 一つの話は短編でだいたい30分もあれば一周出来る。やってみるとどの話も結構面白い。安定の文章力で読みやすく、恐怖的雰囲気もまあまあ出ていて臨場感もあるといえばある。ただし、物語により深く入っていくには邪魔な要素がある。これは時代柄仕方ないと言えばそうなのだが、画質、音質がゴミっていること。いや~古いものだからそこに高いパフォーマンスは期待せずに始めたのだが、ここまで画質が荒く、音がかち割れたものなのかとビックリ。

 

 画は実写を取り込んだっぽいけど、白黒な上に解像度も死んでいるので、物によっては何がどうなっているのか分からない。だが、逆に言えば、この荒さが不気味で悪くない雰囲気の演出に一役買っているとも言える。怪我の功名ってやつかな。

 

 ヘッドホン推奨とゲーム説明にあるが、もはや強制しても良いレベルで、それが無いと音が悪すぎていかん。最近の音の出る家電なら初期装備でイヤホンジャックがあるのが普通だが、ワンダースワンには別個カスタマイズしないとそれが叶わない。専用イヤホン装置は手元になかったので、裏なのか表なのかよく分からないが、とにかくスピード重視の伝を用いて確保した。こんな古いゲームの周辺機器だから、それなりの額が発生した。こんな買い物をしたことが親にバレたら笑われる。

 

 内容としてはホラーノベルなのだが、謎のセット売りでアイドルを押し出すというプロジェクトも動いている。ゲームに映っている女子達は、顔が全然見えないけど、多分当時売出し中のアイドルっぽい。作品に関わったアイドル達のトレーディングカードとかもあったとか。こんなゲームとセットでアイドルを売るって、攻めすぎていて謎すぎなプロジェクトだな。とにかく斬新。

 ワンダースワンという古い機種にしては意外にもボイスがちょっとだけ出る。アイドル達は、声優として登場キャラの声も当てている。でも音質が笑えるくらい悪く、本当に人間が喋っているのかどうか怪しいくらいのイメージもある。電子音なのかなと思えた。

 

 出演者に中島礼香の名前がある。その昔グラビアで慣らし、アニメ「だぁ!だぁ!だぁ!」ではOP曲を歌って歌手出デビューもしたあの彼女なのかな。

 男性キャラボイスに高橋広樹の名前があるが、現在プロ声優でやっているあの人と同一人物なのだろうか。なにせ古い上にマイナー作品なので、情報がイマイチ拾えず、事実確認が難しい。気になる。

 

 マイナーゆえ情報が集まらないといえば、ネットでの攻略情報もそうだ。探したけど、しっかりはっきりゲーム攻略情報が確認出来る攻略サイトがない。これまで色んなゲームを遊んだけど、だいたいはスタートからエンドまでの攻略を記したサイトがあった。でも、この作品のは無い。ワンダースワンの中では結構売れた部類のゲームだと聞くが、全体数としてあまり数が出ていないのがワンダースワンなので、その中でのヒットと言っても世間的には空気なのかもしれない。

 

 このテラーズだが、あのウィキペディアにも独立したページがない。誰でも彼でも暇があるヤツが書き込むここで専用ページがないことが何を意味するかというと、それだけ関心と認知度が低いということだ。誰かテラーズのページを作ってよ。

 

 このゲームは面白く、気に入っている。

 でも攻略がムズいと思う。この手のゲームジャンルなら、一つの物語に復数のオチが存在するのが常識だ。このゲームでもそれが当てはまるのだが、全部のエンドを出すのにはかなり苦戦する。一話が短いが、オチが多く、10を越えるエンディングがあるものもある。

 システム周りでイラつくのは、クリア後にしおりをロードすることが出来ず最初から始まること。既存メッセージスキップが出来ず、オートモードも使えないこと。現在のノベルゲーならあって当然、なかったら袋叩きのバッド評価に繋がるのがこの変の事情だ。で、あって当然の便利機能がないから、このゲームを復数回プレイするなら時間がかかって仕方ない。結果、時間が無駄になるので、全てのシナリオでオールエンディングを出すことは諦めた。

 分岐は意外にも多く、全部合わせると結構なボリュームになると思う。選択肢によっては、起きた事件の過程からオチまでまるっと入れ替わって全然別の話になる新鮮味も味わうことが出来る。攻略が楽ではないものの、なかなかに面白い。

 

 テラーズならではの特殊な仕掛けがテラーズポイントというもの。これが独自のシステムで目玉要素になっている。単純に行動選択のみで未来を決定するのではない。主人公が取った行動により、ビビリの度合いが変わり、それが数値化されるようだ。このテラーズポイントが無駄に貯まると、ここ一番で勇気のいる選択を選んでも、主人公がビビって言うことを聞かなくなる。例えば、ここは何がなんでもヒロインを助ける場だろうが、と思っても、それまでの行動でビビリ数値が上がりすぎていると、助けるを選択しても主人公が逃げの一手に出てしまう。「くそかよお前」と突っ込んでしまう。

 そんなこんなで、やっつけるのは分岐ルートだけでなく、ビビってしまう主人公の心にもある。テラーズポイントの上げ下げを考えて選択肢を選ばなければならない。この要素は攻略をスムーズに進める上での妨げにもなるが、独自性があって面白い。やはりビビる心は誰にでもあるという説得性も感じられる。

 

 演出面では、当時ハードのゴミスペックで出来る限りのことを一生懸命頑張った感じが見えて良かった。

 ただテキストを表記させる単調なものでなく、あまり動かないアニメーションを使用したり、漫画のように擬音がドンと表記されるなどの工夫を凝らしていた。

 

 全体的にはとても良い作品だと思う。

 良い出来なので、もっと上に行けたろうと思う。まずワンダースワン自体が、もっと戦略を練って商戦に臨めば上を目指せたはず。そして対応ゲームの「テラーズ」もまた然り。

 

 地味ながらも素敵なゲームに出会えました。

 ホラー系ノベル好きと、知名度の高低なくアイドルなら何でも好きなヤツにはおすすめできる一作だ。

 

スポンサードリンク