「想い出にかわる君 〜Memories Off〜」は、2002年に発売されたPS2、またはドリームキャストソフト対応ソフト。2008年にはPSPにも移植された。
PS2版ではカナタが、ドリームキャスト版では音緒がそれぞれジャケットを飾っている。もちろん両方確保済。
7月に入り、今年もかなり暑くなった。こうも暑いともっと熱くなるギャルゲの一つでもやりたくなるもの。てなわけで、今回は手軽に出来るPSP版で本作をプレイ。PSP版初回ボックスのジャケットはとても良い。
今作はメモオフシリーズ第三作にして外伝的な位置づけでもある異色作になっている。それまで冠だった「メモリーズオフ」のタイトルがサブタイトルの方に回っていることから、それなりに気分一心して新しいものを作ろうとしか意気込みが見える。
新世紀が明けてマジでちょっとの時分に出た古い作品なので、今となってはプレイ済みの人間は腐る程いる。そいつらがネットで色々発信している情報がちょっと気になるのでさら~と感想を読んでみたところ、あまり評価が良くないみたい。中にはシリーズの黒歴史とまで考える者もいるようだ。
とはいってもそこらのオタクの意見など鵜呑みにするものではない。真実は真実の人たる己の目で確認せよ、というのがいっぱいある私の座右の銘の一つ。前評判はどうであろうがとりあえずプレイ。
まぁいろいろツッコミどころはあるし、ちょっと説明不足でキャラ心理の掘り下げが惜しいという意見が出るのは共感出来る。でも、なんだかんだで楽しかった。ていうか、ざっくり包括すると好きかな。普通に読み進めていて楽しく、次の展開が見たくなる。途中で苦痛で投げようと思うことはなかった。
これまでの作品よりもややシリアス要素は抑えめだったと思う。ギャグやおマヌケ要素も多々ある。
前作の2ndでは、色んなルートに侵入する度、可愛いくて良い子ちゃんなほたるを泣かせることで胸を痛めたものだ。今回はその部類の苦しみは無かった。でも、三角関係はやはりあるのがこのシリーズ。ほんと、日本人ってマクロスの頃からも三角関係が好きだよな。私も大好き。三角関係の末、なゆ、音緒を捨てるルートでは胸が痛んだ。
主人公の加賀正午は脳天気で凡人の大学生。なんだか謹賀新年、賀正とかの縁起の良い単語をイメージ出来る縁起の良い名前な気がする。
今までは高校生が主人公だったけど、こちらは大学生なので年齢は大人。でも精神的にはちっとばかし幼稚なところも見える。そんな点にイライラしてゲームを投げた人もいるかもしれない。でもコレまで主役を張った智也、イナケンも同様にウダウダして心を決められない困ったさんだった。このシリーズの主役はこんなものと割り切ってプレイ。
ろくに勉強もしない大学生の分際でかなり良い生活をしている。親の稼ぎがしっかりしているのは確実で、かなり良いマンションに暮らしている。響ルートに入ればルサックでバイトするけど、そうでない場合は仕事もしないお気楽学生生活を送っている。初代の主役の智也の時も思ったけど、こいつも勉強しない学生なんだよな~。大学の講義をサボりまくってカフェでだらだらするだけの日々を送っている。
カフェ「キュービック・カフェ」が作品の主な舞台を占める点も印象的。ここで過ごす仲間達とのダラダラした時間が、最高に安らぐ青春の一時なのだろう。先日聴いた嵐の歌の詞に「最高の退屈な日々」というものがあった。丁度そんな感じの日々がカフェで展開する。これをそのままに、見ていて退屈と思う人もいるだろうが、私としてはこのような生活の何でもない間を楽しむ展開も好きだった。カフェでのダラダラは結構楽しい。シン、マグローら、ここに集まる連中って暇人ばかりだな。
目立つ点は野郎キャラの多さにもある。最初に思ったものな、ヒロインズが出揃ってわいわいする前にも野郎が次々出てくるから「どうしたんだろう?」ってなった。
主人公、皆勤賞の稲穂信は据え置きなので分かる。他には魚屋の息子で後輩キャラのマグロー、怪しい商売をする不良のトビー、そしてクールでニヒルでそれでいて兄貴肌を感じさせる憎めないあんちくちょうのテンチョーがいる。で、こいつらがただいるだけでなく結構出番も多く、セリフも多い。
中でもテンチョーは、作品の象徴となる「死」または「生」を哲学的に解く印象的なセリフも飛ばすことで記憶に濃く残る。このテンチョーがかなり良いキャラをしている。ムカつくことは確かにそうだけど、やっぱり好きなんだよな。人間性の良し悪しで言うとムラっ気があるものの、絶対に良い事も言っている。
「死んだ男をライバルにしてたら永遠に勝てない」
「時間と死だけが全ての人間に平等」
これらを始めとした、作中で一番大人な男ならでは引っ張り出せる名言集は必聴。
うるさい役をやりがちなイメージの岩田光央が、物静かに哲学的名言を放つテンチョーを演じた点も意外性があって記憶に残る。
ヒロイン
メモオフはやはりヒロインが可愛い。ということで、賛否両論あったらしい本作のヒロインについても語りたい。
今回もヒロインズは美しく可愛い。個人的想い出によるプッシュだろうけど、総合的に言うとシリーズで一番声優が強い。世紀末から新世紀明けくらいに頭角を表したスター達ってやっぱりいいよな。
カナタを演じた福井裕佳梨は、ややイレギュラーな登板となり、アイドルさんだけど声優に挑戦したとか。ぶっちゃけ、カナタのルックスでこの声で来られることに最初は違和感があった。だが、ゲームをやり終えた今では、この声で良かったとも思える。川澄綾子、浅野真澄らやり手が囲む中でカナタの声はちょっと浮く感じもあったが、悪いばかりではない一風変わったエッセンスになったのではなかろうか。声は可愛い。
今回はちょっと変わった売り方で、ヒロインは対になる二人ワンセットで推し出す仕組みになっている。
音緒、深歩の荷嶋姉妹。
なゆ、沙子の異母姉妹。
響、環のテンションが両極端の二人。
この組でルートが展開する。
そして、これら6人のルートを攻略すると、気になるあの人であるカナタルートが開放される。カナタのことが気になっても、一発目からはカナタルートには入れない。お預けプレイに耐えられない軟弱者はお断り仕様になっている。
今回のボスであるカナタの位置づけは、ショーゴの元カノとなっている。過去に何があったのか、そして過去が素敵な今にも繋がるのかというワクワクを持ってプレイ出来た。カナタまでの道のりは長いが、何があったのか気になるので頑張って楽しんで出来た。
ヒロインズ、各ルートのちょっとした感想を述べよう。
荷嶋 音緒(かしま ねお)
デザート大好き女子でめっちゃ可愛い。音緒はマジ可愛い。一番キュンキュンきたヒロインだった。
清水愛の透明感ある声もめっちゃ好き。まじでスケスケだからな。後にプロレスラーとしてリング入りした女優の芝居とは思えない程繊細な乙女の感じが見えた。
カフェでは妹と揃って漫才みたいなことをしているギャグ要員性もありな変なやつかと思ったけど、単体だとまた違った魅力があって良い。
付き合い始めるとめっちゃ女感出して来ていいじゃないか。やや愛が重めだとショーゴが胃を悪くする反応を見せるが、このくらいは許容範囲内だろう。
カナタと音緒とで三角関係になった末音緒を振るルートは可哀想すぎて胸が痛む。思わずショーゴに対して「お前クソか!」と言ってしまったのは、私だけでなくたくさんいたことだろう。
多くのドラマはハッピーエンドだけど、自分達の現実の生活はそんなエンドの続きが死ぬまで続く。その道は残酷なもの。高校生の身でありながら、考えれば簡単だが、考えに及ぶきっかけを掴むのに難しいそんな問題を突く彼女の敏感なところが良い。
雨の日デートでは、こんな優しい雨なら雨宿りも悪くないという風流にして萌える一言を言ってくれる。可愛い。
荷嶋姉妹ルートでは「電車男かよ!」と思えるネット掲示板の揉め事が一つのキー要素になっている。妹を支える良いお姉ちゃんをやることに対する重圧から、ストレス発散のため、掲示板荒らし行為に走る音緒の切羽詰った心理が描かれている。ちょっと社会性もありなルートだった。
「てへっ」とか「きゃは」とかいう、可愛いギャルでないと看過出来ないノリで来るのも印象的。
荷嶋 深歩(かしま みふ)
だいたいの日本人から絶えず需要がある妹キャラ。そして車椅子のヒロインということで、病弱属性的なものもある。
演じた白鳥由里の美声がまた良い。
足が不自由でも、いつも明るく元気な花を愛する少女。モテそう。めっちゃ可愛い。
独特過ぎる感性を持ち、時には彼女の練り込まれたマイワールドに踏み込めない事もある。結構ファンタスティックな乙女でもあった。
真実が持つ真実性は、残酷さにこそ見えるというのが、作品の一つのアンサーだったと思う。そんな中で深歩に見る真実の残酷なアンサーは、歩けないことでのハンデ。頑張っても歩けないものは歩けない。そこはゲームであっても譲れない。
花屋さんでバイトがしたいが、車椅子の人間では無理。頑張っても働けず、姉の人生において足を引っ張っているのではないか。自分は端っこに追いやられる存在なのではと苦悩する一面も見せる。ここにはリアルな人間心理が見えてキツイ。普段の明るい一面に隠された本音が出るシーンでは胸が痛くなる。
音緒がいる前で、ショーゴに車椅子を持って私の元へ来てと叫ぶ修羅場シーンでは……楽しくなってしまった。
あのトビーが深歩ルートでは良いヤツになる点も印象的。
鳴海 沙子(なるみ いさこ)
黒衣をまとったクールビューティー。武闘派で男相手にも引けを取らない。
川澄綾子の声が大好きなので注目。
実はショーゴの忘れられた幼馴染だった。最初はなゆが幼馴染かと思わせといて、それは記憶違いでこっちだったという騙しの技術にちょっとドキドキするドラマ展開が見えた。
ちょっと出番が少なかったかなと思える。もっと出番もセリフも欲しかったな。
沙子、なゆの姉妹が共に持つ罪の意識を開放させるという重めのお話だった。
ルート攻略により、ショーちゃん呼びしてデレを見せる沙子には萌えた。
北原 那由多(きたはら なゆた)
ショーゴの大学の同級生で授業を一緒に受ける内に仲良しさんになる。鳴海家の人間だけど、旧姓の北原を使っている。学校をサボらない行動を取れば、異母姉妹とお近づきになれる。
新人時代の高橋美佳子が演じている。このどうしようもなく同級生感がある声が良い。
芸術家なもので、独特の感性があることが言動からも読み取れる。
バンダナを巻いて変わった髪型をしているエキゾチックなヒロインだった。一昔前のドリカムの吉田美和がこんな格好をしていたことがあったような気がする。
漫画を読むし、音楽好きでもあるので私とも気が合いそう。
沙子を選んでしまうと、目に見えてなゆが可哀想なことになるので、プレイしていて傷つく。
なゆのルートでやたらとショーゴに絡んでくる変人の山下2.5号は、必要性を強く感じないキャラだったが、インパクトはあった。
百瀬 環(ももせ たまき)
修学旅行で街を訪れ、そのまま家出してトビーの露店で店番をしている高2の少女。信じられん。
普通に皆と過ごしたりしてるけど、家出中の学生だからな。そう思ったら大事。
セット売りの環、響に共通するのは、コミュニケーションを取るのがやや困難なこと。響はたくさん喋ってうるさいが、環は言葉での主張が弱く、言葉が少ないし、話すのが遅い。気長な対応は必須。
この時なら自身も学生くらいの年齢だったであろう沢城みゆきが演じている。このメンツの中に入って若き沢城みゆきがヒロインの一人に抜擢されているのがすごい。今では強い女を演じるイメージが強い沢城みゆきが、環のような弱々しい声を出すのは珍しい。
環ルートではまずバッドエンドにハマることだろうと思う。後半の選択肢判定はシビアで、復数ある中から当たりを引かないと環は死んでしまう。環が生き延びるルートを出すのが難しかった。
主体性無き乙女だった環が、自分の道を歩むようになるグッドエンドのラストでは、可愛いワンピ姿で笑顔を見せてくれる。あの笑顔は可愛かった。
児玉 響(こだま ひびき)
とにかく喧しい当たり屋ギャル。16歳でコンパニオンのバイトをしている。意外に若いんだ。もっとお姉さんかと思った。
うるさいけど可愛くて音緒の次に好きだったかも。
ショーゴにぶつかって携帯が壊れたから弁償しろというアレはフェイクだったと後で語る。まぁ可愛いから許すけど、待ったなしのスタンダードな当たり屋稼業でウケる。
浅野真澄が演じるキャラのスタンダートなら、もっと理知的なイメージがあるが、かなりアホの子の響の芝居は可愛くて好きだった。声が好き。
「やったやった」の歓喜の舞。「ちっが~うよん」の口癖、ざわつく心境のことを心が「どかどかする」などと言う点は印象的。コミュ力がどうこうの前に、ボキャ貧で単語を知らないことから、会話が困難なこともある。毎夜ショーゴに送ってくる謎のメールにそれが濃く出ている。
電車は押せば到着までの時間がちょっと速くなるという冗談かマジが分からない響の持論はウケる。
このルートでは、おバカなやり取りからバカップルの恋模様が楽しめる。
絶対にバカだけど、悪い子ではなく、感じやすい面もあり、総合的にはいい子だと思う。たかりっポイ態度も見て取れるが、こちらがしてあげた事にはたくさん「ありがとう」を言ってくれる点は素直に嬉しくなる。家庭料理を振る舞ってくれる良いお嫁さんの素養を見せる点には激しく萌え。めっちゃ可愛い。
黒須 カナタ(くろす かなた)
本作のボス。
明るくポップなギャルだが、掴みどころが無くミステリアスな一面もある点から攻略しづらそう。
付き合えば一緒にいて楽そう、でも面倒臭そう、そんなことを思える不思議なヒロイン性があった。いずれにせよ魅力的ヒロインではある。
モデル業を行う売れっ子タレントでもある。タレントとの恋はムズいって、と想いながらも音緒を捨ててこいつのルートに入る。
高校の制服を着てショーゴのマンションに突撃し、あの頃に「ジャンプしよ」と誘いをかけるのには、心を悩ませる効果があったと思う。何をしでかすか分からないスリリングなヒロインだった。
テンチョーと付き合っているのはまさかの展開だった。そんでテンチョーがカナタルートに入るとサクッと死んでしまうのも意外。死後発掘されたテンチョーのノートには人生教訓がたくさん詰まっていた。
全キャラの水着カットは用意されていないが、カナタの水着カットはしっかりあった。大変美しかった。
すったもんだの末、MDに入っている空耳ソングの「ショーゴ、愛してる」の部分と、カナタの魂からの思いの「愛してる」が合致するラストは美しかった。
音緒ルートクリア後に清水愛の歌が流れるのは分かるが、カナタルートクリア後に宮村優子がエンディングを歌っているのが未だに謎。なんでだろう。
まとめると、なんだかんだで楽しかった。
ショーゴの目を通し、「死」とやがては想い出に変わる過ぎゆく「時間」の切なさをテーマとして見せている。これらの要素に、人生の真実性を見ることが出来た。
なんだかんだ言われてもメモオフなので、要所要所でキャラに良いことを言わせて伝えたい要素の発信が出来ていた。一つか二つは人生の良き気付きとなる教養があってこそのメモオフだ。
ヒロインは電波や地雷女も含め、なかなか面白いラインナップになっていて良かった。
唯笑やビューリホー女子大生コンビら旧作キャラの登場も嬉しい。
あと、無人チャリが走る中で流れる水樹奈々が歌うOP曲の「リプレイマシン」は格好良い。最近気に入ってめっちゃ聴いている。
このゲームをプレイした楽しい記憶も想い出に変わっていく。
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