こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

宇宙に羽ばたく快男児「ナショナルキッド」

ナショナルキッド」は、1960年8月から1961年4月にかけて放送された全39話の特撮ドラマ。

 

 古い!

 その昔、父の秘蔵ビデオコレクションの中に紛れ込んでいた本作をちょっとだけ見たことがあるのだが、そのビデオすらもう何十年も前のものだろう。本放送はなんと60年も前。

 現在仮面ライダーが50周年だということで世は盛り上がっている。ライダーも半世紀か~、超すごい!なんて思っていたが、それより10年も前の東映作品がこのナショナルキッドである。すごいな、仮面ライダーすらずっと若く思える白黒特撮だぜ。

 それを令和時代に入って見るという乙な秋の夜長の楽しみ方を選ぶ私のセンスも絶対に悪くないものだろう。

 

 早期段階から国境を越えブラジルでも放送され、そちらでも人気を博したという。その証拠に、日本より先んじてブラジルでDVDが販売された。そこで負けるのかとびっくり。

 日本で全話セットのDVD-BOXが販売されたのは2015年のこと。割と最近。今回はそいつを抑えてしっかり視聴。

 残念なことにここまで古いので、一部映像が欠落している箇所もある。だが現存するフィルムは綺麗にしてすっかりDVDに収められている。こんなに古いものがここまで残っただけでも感謝。

 

 今はPanasonicを名乗っているが、その旧称は松下電器だった。松下電器は商標として「National」を使っていた。当時の家電にはPanasonicではなくNationalの文字が刻まれている。我が家はPanasonic信者であり、だいたいの家電はPanasonicにしている。

 そんな我が家で現在使っている家電の中で、扇風機は未だにNational製のものを使用している。うん十年前に最新モデルとして売り出されたのを祖父が購入し、そいつは今でも現役で活躍している。「松下の製品は丈夫だ」と祖父も信頼を置いていた。

 

 Nationalもとい松下電器が全面的にスポンサー担当したことでタイトルは「ナショナルキッド」。ナショナル坊やと並んで皆に愛されたNationalの看板キャラとなった。

 個人的にDIGA、3DOナショナルキッドは、松下電器Panasonicが長き歴史の中で生んだ偉大なる発明だと思っている。

 

 そんなナショナルキッドを見た感想を書いていこう。

 古き良き時代の特撮の魅力がたっぷり詰まった素晴らしい作品に仕上がっている。

 

ナショナルキッド DVD-BOX デジタルリマスター版

 

 タイトルロゴの字体にめっちゃクセがあるな。不自然に出る所が出て、引っ込む所が引っ込んでいる。これがあのナショ文字か。

 

 アメリカにはスーパーマンという空飛ぶ超人ヒーローがいる。こちらもそこらへんを意識しての作りか、まず最初に売り込む要素は空を自由に舞う能力を持っていること。

 OP映像からナショナルキッドがマントをはためかせて空を飛ぶシーンが多用される。大空を舞う彼の勇姿こそ作品の象徴的画であると言える。

 スーパーマン同様、ナショナルキッドもスーツの上にブリーフを穿いた風なグローバルなファッションで戦いに挑む。

 

 現在放送中の最新特撮「仮面ライダーバイス」を見た後にこっちを見ると「嘘だろ」ってくらいチープな作りに思える。だが当時としては高品質な特撮技術を投入して番組作りに望んだという。時代も変わるよな 

 

 先輩ヒーローの月光仮面のごとく、メインの武器は科学が生んだ二丁拳銃。電気会社がバックにいるからか、懐中電灯やドライヤーのようにも見える銃を使っている。

 当時はパソコン処理で派手に見せるなんて出来ないから、銃をぶっ放す描写では銃口から煙を焚くなどのチープ使用が見えた。

 

 月光仮面が子供達から「月光仮面のおじさん」と呼ばれ親しまれていたごとく、こちらも「ナショナルキッドのおじさん」と呼ばれている。

 

 科学に詳しいインテリお兄さんの旗竜作がナショナルキッドのおじさんの正体である。テレビの前で第三者視点で見れば明らかに彼がナショナルキッドだと分かるが、不思議なことに一者、二者では景色と事情が異なることからバレないものなんだよな。

 3部からは旗竜作の俳優がチェンジする。急な変更に焦るが、どちらの俳優もハンサムさんなんだな。

 

 気になる第1話を再生すると、まず目に飛び込むのは

「四次元の世界を克服し 不可能を可能ならしめ 科学兵器より強く正義と平和の為に斗うナショナルキッド

というメッセージ。これがナレーターにより勇ましく読み上げられる。

 ちょっと何を言ってるのか分からぬ。四次元の世界を克服~の所が特に。

 ただ分かるのはとにかくナショナルキッドはすごいということだけ。子供にはそこだけ分かればそれで良いだろう。

 なんかイミフな問答からのスタートになっている。故に気になる。わくわくしながらの全話視聴がスタートだ。これだから特撮ヒーローは止められない。

 

月光仮面」「快傑ハリマオ」などでもそうだったが、昔の特撮は物語を各部に分けて展開していた。これは見やすく分かりやすいシステム。

 本作は全4部構成の物語を全39話でお届けしている。

 

 では、各部ごとに振り返りを行おう。

 

第1部「インカ族の来襲」

 地上にあるインカ帝国の人達が攻め込んで来るのかと思いきや、まさかの宇宙にいるインカ金星人という連中との戦いが展開する。一瞬イカルス星人にも見える。そんなイカルス星人とは、シルエットもちょっと被る点あり。

 現代日本だとインカ金星人の格好で街を歩けば普通に不審者の扱いを受けてお巡りさんに話を聞かれることになると思う。これのコスプレ衣装があればハロウィンにお試しするのも一興。

 

 彼らが地球に放つメッセージは、原子力実験、宇宙に飛ばすロケット実験をを行うこを止めろということ。それによって自分達の住む領分が脅威にさらされるからだという。

 

 テレビを離れたリアルの都合を見ても、当時は核実験とかの脅威についての情報がトレンド入りしていたのだろう。そんな世相の反映も見える主張を行ってきたのがインカ金星人である。

 

 無謀な実験で地球を汚染する人間達を一掃すべくインカ金星人は地球に攻め入ってくる。主張としては正当性も感じるのだが、奴らは大変冷酷でもある。

 殺ると言ったからには全部殺るのが彼らの流儀。大人子供関係なく種を絶やすべく動く。

 

 放射能をぶっ放して食物を汚染し、人々を腹痛にして死なせる。水源に毒を撒いて東京中の人々を毒死、または脱水に追い込んで死なせるなど、科学的にエグいやり口に出て来やがる。シンプルにビームとかでなく科学でジワジワ攻めてくる点にちょっとのリアル性が見える。それゆえ怖い。

 

 水に撒かれた毒を分解する石がアフリカにあるとされ、ナショナルキッドが一飛びでその石を回収するミッションもあった。国境を越えれば大気圏も抜けて宇宙へと、マジであちこち飛びまくるナショナルキッドのタフさが伺える。

 

 二丁拳銃の名手であり、格闘技術にも優れることで、ナショナルキッドは超人的に強い。だが、頭を使った敵の作戦も驚異的なものだった。雷で攻撃することで一時的にナショナルキッドの超能力を奪うことに成功している。空を飛べないただの人になってしまったことで、ナショナルキッドが敵の作戦に遅れを取るという苦戦の展開も見られた。

 敵の猛威の前にヒーローがピンチになるという定番でワクドキが生まれるスリル展開も見えて良かった。

 

 インカ金星人の兵隊が持つ銃は、銃弾が発砲されるスタンダードなものでなく、引き金を引けば炎が飛び出す火炎放射器的な仕様になっている。これが大きなライターを使っているように見えてちょっと笑える。 

 

 特撮の見せ所や子供心を喜ばせるポイントは円盤の浮遊シーン。円盤自体の作りや機体のアクションについても、当時としては高品質の特撮技術を用いたという。だが、今見るとやっぱりしょぼくも感じる。

 

 インカ金星人は地球に降りても48時間外気に晒されると体質の関係上死んでしまうという設定も印象的だった。

 

 後半ではナショナルキッド単体でなく警察、軍隊とも連携を取った総力戦に臨む。楽しい頂上決戦が見られた。

 

第2部「海底魔王ネルコン」

 オープニングは深海に潜った潜水艦の中よりお届け。

 第1部では活躍がいまいちだった少年探偵グループのメンバー紹介から始まる。二部での彼らの活躍を期待させる導入となった。

 

 前回は宇宙から、そしてお次は海底から侵略者がやって来る。

 

 こちらからはテコ入れの成果もあってお話が分かりやすい。そして怪人、怪獣の類も出て来ていよいよ特撮って感じがして楽しい。

 第1部では全身タイツの敵だったの比べ、こちらではしっかりしたスーツの魚人が街で暴れる。海底原人ラゴンよりも始末の悪い海底の魚人が東京の街を派手にぶっ壊すスリルシーンが味わえた。

 

 一話からチョウチンアンコウ型の大きな潜水艦が暴れるといった子供ならワクワクする特撮要素も強く見られる。 

 下から水が吹き上げる中浮上するアンコウ潜水艦のアクションシーンにはワクワクした。

 

 敵が海から陸へと攻め込んで来た理由は、人間が原子潜水艦を放り込んで海を調査することで海底の民が脅威に晒されるから。インカ金星人の時にも同じ事が言えるが、各種族には領分があり、それを踏み越えてしまうと怒りからこのようなことになる。人間の発達しすぎた文明が、他の種族を怒らせることにもなるという都合が見える。ちょっと考えてしまう内容。

 

 海底の民達は皆が好戦的ではなく、平和の心も持っている。見た目こそ化け物だが、仲間が殉死すれば涙を流して悼む心も持っている。意外だ。

 後半では虚しい争いが嫌になって地上侵略から手を引きたがる海底勢力の存在が見えてくる。好戦派、保守派で意見が分かれて揉めるという難しい展開も見えた。

 どこの種族も種族として歩む方針決定には慎重になり、それゆえ苦労するのだと分かる。

 

 ちょっと怖いオチが、海底人達を焚き付けていた悪の親玉ネルコンの正体が地上に住む人間のおっさんだったこと。人類最大の敵は魚人でなく身内にいたという皮肉と恐怖が味わえる。

 

 このシリーズは一番特撮していて面白かった。

 

第3部「地底魔城」

 第3部から旗竜作の俳優がチェンジする。ニュー旗の活躍を見よ!

 

 第1部では宇宙人、2部では海底人、そしてお次の3部でナショナルキッドが相手取るのは地底人。これだけ色々な領分出身の者が集まるとはナショナルキッドもグローバルだな。第3部では地底人の地上侵略を打倒する物語が展開する。

  

 吉見百穴に遠足に行った子供達は、地底と地上を繋ぐルートを見つけてしまう。これを皮切りにあちこちで面倒事が起きる。初めて見たけど、壁一面に穴が空きまくった謎の遺跡の吉見百穴はファンタジック仕様だった。今でもあるのかな。

 

  このシリーズは8話しか無い割にはポンポンとリズミカルに色んなことが起きる。それだけに敵さんの作戦展開も早い。

 

 旗竜作の家で面倒を見ている身寄りの無い子供の叔父だと言う者が現れる。彼を頼って大阪まで移動することで、物語の舞台もそちらに動く。その叔父の情報がそもそも敵が仕掛けたフェイクでだったことが分かる。やってくれるな。

 

 敵は地底人らしく地震を起こす作戦に出る。地底を抜けて空飛ぶ円盤を操作しての攻撃にも出て、最終的には宇宙にも行くことも可能となる。すごい文明を持っている。

 冒険小説ならドキドキすること必須の地下迷宮に挑む展開もある。

 

 中盤から後半にかけては、金のブローチに隠された重要な情報を巡っての事件が展開する。原田老人から少女へ、次いで浮浪者、質屋、そして地底人の手へと、お使いイベントのごとく次々と持ち主が変わるブローチの行く末も見所だった。

 このブローチに潜む情報をきっかけに、地底人サイドで内部分裂が起きる。

 ヘルンシュタイン総統と黒岩博士が袂を分かつことになり、そこにキッドがいることで、事態は三つ巴合戦へと移り変わっていく。いい感じに揉めて楽しい。

 

 最終的には、分裂した敵側の二つの勢力それぞれが半分ずつ重要情報を持って共に姿を消す。二つの情報が一つになれば、世界を転覆させることにもなる。どちらも打倒できぬままに終わるので危険はまだ残っている。二つの情報が一つになることがないようこれからも悪の動きをしっかりリサーチすることを誓って第3部のキッドの戦いは終わる。

 敵の全滅が叶わぬまま終わる点では後味が悪い。しかし、それが正義の味方であることへのモチベーションとなり、キッドが活気づいて終わる点は勇ましくて良かった。これはこれで良き落とし方。

 

 今回から新しく登場する太っちょの写真家 緑川剛介とその助手佐野かおるのコントなやり取りも楽しい要素になっていた。

 

第4部「謎の宇宙少年」

 第3部で取り逃がしたヘルシュタイン総統、黒岩博士が再び悪さを行う。これをなんとかするお話。

 

 ヘルシュタイン総統はマゼラン星の力を借りて地球侵略を目論む。

 地球は核実験をするし戦争もして内部で揉める野蛮な星である。だから宇宙から消そう。ヘルシュタインはそのようにプレゼンしてマゼラン人からの支援を求める。

 消す前の実地調査ということで、マゼラン星は、地球名として大空太郎を名乗る少年を地球へと派遣する。この少年こそが、タイトルの宇宙少年である。

 

 マゼラン星は争いを超越したクリアな惑星として描かれ、核実験、嘘を吐くといった愚行無き平和な世界を築いている。

 そんな所から来た太郎少年からすると、未だ核実験なんかをしている地球は遅れていると感じるのである。やばい星なのかとやや疑われもする。

 

 ヘルシュタイン総統の売り込み、太郎が見た地球の現状は決して嘘ではない。しかし悪い所が目立つ以上に、良い人間もたくさんいるのだということを地球の子供達やナショナルキッドは訴えかけるわけである。

 第1部に登場したインカ金星人からも指摘された人間の野蛮で愚かな点をそれとなく指摘した社会派なメッセージ性がここにも見られる。

 

 敵は人間改造技術を用いて簡単に人間を操ることが出来る。各国のお偉いさん同士を喧嘩させるように仕組んで戦争を引き起こすというセコくて怖い作戦にも出てくる。

 

 子供オンリーに向けた作風ではなく、時には人類の愚行に対してチクリと刺すようなリアル性が見える点が面白みとなっていた。

 

 短い第4部の中でも更に二部構成を取っていて、マゼラン星と地球が事を構えることになるかもしれない前半の面倒の後には、母星を追われたザロック人が地球侵略に来るエピソードが展開する。

 

 こちらの目玉となるのは、奴らが連れてきた巨大怪獣ギャプラの存在。

ウルトラQ」の誕生がまだだった当時だと、怪獣がお茶の間に浸透するにはまだまだ時間を待たなければならない時期だったはず。大日本テレビ史においては、「月光仮面」のマンモスコングに次いでお茶の間を賑わした最初期の巨大怪獣となったことだろう。

 ギャプラは透明化能力を持った怪獣であり、最初は視聴者には見えない透明状態で登場する。そして引っ張りまくった最終回一話前の第38回放送のめっちゃ後半でやっと正体が明かされる。そして最終回でナショナルキッドと全面対決となる。出番は非常に少ない。その理由は、スーツの完成が遅れたからだという。なるほど、透明怪獣の設定にしておけば、スーツが間に合わなくても撮影がストップせずに済むものな。大人の事情から生まれた名アイデア。そんなギャプラはちょっとゴジラっぽい怪獣だった。

 

 最終回でギャプラを討伐した後、地球で一回り成長した太郎はマゼラン星へと帰っていく。そして我らが旗竜作は、自分の正体は3万光年の彼方より訪れし正義の使者ナショナルキッドだと明かす。

 地球人に未来を託し、ナショナルキッドは自分の星へと帰って行くのである。それを皆で見送ってエンド。

 そんなこんなで綺麗な最終回だった。この時キッドに向かって手を振っていた子供達は、現在生き残っているのならとっくにおじいさん、おばあさんか。そう思うとすごく時間の流れを感じた。

 

 

 

 しっかり古いけどなかなか楽しめる内容だった。

 地球人は自分達で地球を壊している事を所々で指摘しているのが印象的だった。それくらい当時の地球は一体どこへ向かうのかと制作側も不安に思っていたのかもしれない。だからこそ盛り込んだ要素なのか。

 現在も地球は何とか住める状況で残っている。名前がPanasonicに変わったがナショナルの意志も受け継がれて地球に残っている。この結果があれば及第点だなと思える。

 

 こんな考察をしたところで、宇宙に羽ばたく快男児ナショナルキッド」の視聴感想を終わろう。

 

 

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