「Memories Off #5 とぎれたフィルム」は、2005に発売されたPS2ソフト。
2009年にはPSPに移植された。今回はそちらでプレイ。
今回は過去作の「想君」と同じく主人公が大学生になっている。
主人公の河合春人は、仲間達と共に映画製作を楽しむ青春を送っていたが、そのメンバーの一人の日名雄介が死んでからは映画を撮らなくなってしまう。そこに雄介が生前に残した脚本を持った謎のヒロイン仙堂麻尋が登場し、映画を撮ろうと話を持ちかけて来る。これをきっかけに、停滞していた映画サークルの活動がスタートし、途切れたフィルムが動き出す。でも選択肢によっては動き出さないこともあったりする。
そんなこんなで、映画作りをキーワードにした青春ストーリーが展開する。その中で可愛い子ちゃんとのラブもしっかり楽しめるのだ。
これまでのシリーズには無かった大学のサークル活動を追う展開が一つの見所。映画を撮るということで、仲間同士が結構揉めるし、それを越えて仲を深める展開も見えてくる。友情もテーマの一つ。
前作「それから」に登場したサブヒロインの木瀬歩が、新部員として主人公達が属する映画サークル「CUM研」に加入する。前作で雅と揉めて色々あった時には嫌な奴に見えた歩も、大学生になるとスッキリとした良き人間になっていた。ルートによっては結構出番があるヒロインになるが、今回でもサブヒロイン止まりで歩ルートはない。おまけ程度でもいいから作れや。デレまくる歩もそれはそれで見てみたい。
キーパーソンにもなる雄介はスタート時から召されているが、どうやって死んだのか、麻尋とはどんな関係だったのかはかなり後半まで分からない。この辺りの伏せられた情報の解明に当たる点には、ミステリー、サスペンスの要素も見えた。
歳に似合わず意味深な言葉を言いがちな雄介は恐らく変人。シャツの胸元開け過ぎだし、ホストみたいだった。
珍しいことに、主人公の春人にも立ち絵、ボイスが搭載されている。CV:森久保祥太郎だからか、何だか見た目が本田吾郎ぽいと感じる。
喋りでは「俺」、心の声では「僕」と一人称が変わる男子ならあるあるの特徴を持つ点には共感出来る主人公だった。
内容はかなり長く、普通にプレイすると全ルートクリアに25時間以上はかかると想う。
攻略ヒロインは少数精鋭の5人。程良い人数。
前作に増して絵柄が萌えな感じになっている。一昔前のゲームではあるが、皆可愛らしく萌えたので目の保養はバッチリ出来た。
では攻略順に各ヒロインを振り返ろう。
仙堂麻尋(せんどう まひろ)
あすかがメインと想ったら今作のメインヒロインはこちらだった。
雄介の遺作となった映画脚本をCUM研に持ち込んだ運命のヒロイン。
サバサバ系女子で飾らない感じが良い。スーパーモデルみたいな服装で大学に訪ねて来る。服のセンスがいいな。
序盤では、もしや雄介を殺ったのは彼女ではないのか、という嫌疑がかけられている。そんな感じだから主人公達サークルメンバーにも敬遠される。特にあすかからの当たりが強い。あすかに味方するのが常となっている修二からも良くは思われない。そんな感じで可哀想なくらいに悪役に回るターンがある。でも実は良い奴だと後になって分かる。
麻尋が持ち込んだ雄介の脚本で映画を撮るのか、撮らないのかで揉めるサークルメンバーの人間模様が不謹慎だけどちょっと楽しかった。
稲穂信と同じくファミレス「ルサック」でバイトをしている。麻尋のバイト制服姿は可愛かった。サバサバしたクール系女子かと想いきや、春人に制服姿を見られると恥ずかしがるのには萌えた。
このルートでは、信と主人公の春人の絡みがあまりないが、実は裏で麻尋と深く関係していると分かる。麻尋と春人の関係やサークルの揉め事の解消がスムーズに行くように、実は裏で動いていた信の活躍が尊い。
麻尋は前作ヒロインりかりんのファンで、家にはりかりんのポスターを貼っている。前作で信がりかりんのサインがどうのこうと誰かに電話しているシーンがあったが、あれの相手は麻尋だったのか。
麻尋を主役にして映画撮影が始まる。そこで歩と結構馬が合うらしいと分かる。この二人の組み合わせは好きだった。
麻尋とくっ付く上であすかと揉めて三角関係になる点が楽しい。修羅場が楽しいのだ。
メインヒロインならではの特殊仕様が、リバースカットというもの。麻尋ルートを一旦クリアまで持っていくと、今度は麻尋視点の乙女ゲー感覚でマルチサイドストーリーが展開する。春人視点では全て理解出来なかった彼女の情報、苦悩などが補完される。
すったもんだの末に春人と再会し、CUM研メンバーとも和解してメインヒロインルートはグランドフィナーレを迎える。そこでかかる彩音の名曲「ロマンシングストーリー」が良すぎる。一生聴ける最高の一曲だわ。
最初はあすかルートに入りたかったが、なんと一発目からメインヒロインルートに入ってグランドフィナーレを迎えてしまった。このルートは最後に回したかったが、入ってしまったからには仕方ない。
過去作のように、全ヒロインをクリアしないとグランドフィナーレのシナリオに入れないということがないので、一発目からボス攻略が出来る。これは良いものか悪いものか考えもの。苦労少なくボス攻略となるとストレスも少なくて良いのだが、その分ありがたみが薄れる感じもあり。
とにかく麻尋はめっちゃ可愛くて萌える秀逸ヒロインだった。
このルートはBADエンドも印象深かった。
麻尋に勢いで告白した春人は玉砕し、映画撮影も流れてしまう。麻尋と映画の事が青春から排除されたら、次はサークル仲間のもとに戻ろうとするが、その時にはサークルに自分の居場所は無い。自分抜きで仲間達は楽しくやっているのだ。一人孤独な道を行く最低のエンドを迎えるルートとなる。酷いけど、人間関係ならコレが意外とリアルかもしれない。一度軍団を抜けたら割と早期にその穴は埋まってもう戻る事は出来ない。これってありがちだと想う。いや~リアルに酷いオチだったな。
タイトルの「とぎれたフィルム」の部分にあたる肝心な雄介の脚本で作った映画の内容とは、自殺願望を持つ主人公が人生に希望の光を見て復活を遂げるというものだった。良いお話ではあるが、たくさん感動する感じもなかった。「とぎれたフィルム」の部分はお話のトリガーに過ぎず、真に重要なのはそれの完成に向けて皆であれこれと動くことにある。
あと撮影現場で出る業界ワードの「バッテラ」とはサバの押し寿司でなく、バッテリー&ライトだと分かった。歩も麻尋も寿司のことだと思っていたのが面白くて笑えた。
ちょっとは映画関係の勉強にもなるゲームだった。
観島 香月(みしま かづき)
高校からの映画仲間ヒロイン。
影からでも仲間達をサポートする優しくて気遣いが出来る子。そして感じやすく傷つきやすい一面も持っている。とにかく香月は友人としていいヤツと言える。
麻尋と同じくこちらもサバサバクール系ヒロインだった。でも意外にも一番ツンデレ要素が強いキャラでもあった。
普段はパンツスタイルが多い香月が、映画館デートの時にはスカートで来るのが可愛いくて萌えだった。ここで恥ずかしがるのも可愛い。
桑谷夏子がこのタイプを演じるのが意外だった。シスプリだったらもっと媚び媚びの萌えヒロイン芝居をしていたので、そのイメージがどうしても強い。男前で男言葉も使うクール系ヒロインの芝居もイケてた。
昔馴染みの女子とゆっくりと段階を経て恋人になっていくというリアル性にグッとくるものがあった。香月ルートが一番リアル性あるもので共感出来る。
香月ルートのバッドエンドを見ると、それはそれで納得も出来る。気遣いな香月の性格からすると、サークルの人間関係を繋ぎ止めるために動くのはきっと精神の負荷となったはず。それに疲れてサークルメンバーから離れてしまうというバッドエンドでの香月の進路には説得性もあるというもの。
日名 あすか(ひな あすか)
高校生ヒロインで亡き雄介の妹。
野川さくらが覚悟を決めた萌え萌えボイスで可愛く演じている。ダ・カーポの時も主人公を慕う妹キャラがハマっていたので、こちらも声と役がマッチしている。
めっちゃ可愛いとは想うが、性格を見るに扱いによっては直ちに面倒な地雷女に回る危険性もあると想う。ちょっとヤンデレ感もあったかもしれない。
異性には受けが良いだろうけど、同性には嫌われるタイプな気がする。
パンツが見えそうなくらいのミニスカで攻めてくる。あすかの学校の制服は珍しい真っ赤なブレザー。この赤い制服は良かった。
普段着がスーパーアイドルみたいだった。あすかの衣装は学校の制服、バイト先のバッガーワックの制服、家でのラフな私服、外行きの私服と種類が多めだった。
スタート時から既に主人公スキスキ攻撃を仕掛けてくる特殊枠。「2」のほたるのように、スタート時の正式彼女ではないが、押しかけヒロイン枠で常に春人の側にいることで、他ヒロインを選ぶと修羅場を生む厄介なヒロインにもなる。どのヒロインルートでもそこそこ絡んでくる。
主人公への想いは純愛でもあるのだろうが、兄を失った孤独からの依存でもある点が濃く見える。ここがあすかの怖い点。ルートによってはちょっと怖いヒロインでもある。
本当の意味であすかを過去の孤独から救ったのは修二の方なので、それを思えばあすかに相手にされない修二が気の毒に思えて来る。
あすかルートでは修二を迎えての三角関係になる。で、選択肢によっては修二との友情を深める修二エンドにもなり、ある意味修二も攻略対象だったかもしれない。PSP版の初回BOXを購入したが、全攻略ヒロイン+修二もジャケに写っていたので、多分そういう扱いで問題ない。
普段はおとなしい修二が切れた時の芝居には迫力があった。演じた岸尾だいすけの演技が良い。
現在は休業中だが、あすかは子役女優。しかし業界の闇に触れる内にカメラ恐怖症になってしまう。女優業が出来なくなった事で母親と揉めるようになり、険悪な仲になっている。あすかの抱える軽くはない家庭問題が見える展開も印象的。実際に子役がいる家庭でもこんな感じのことがありそうでちょっと怖い。
ワクドキのギャルゲーらしく、秘密の同棲イベントも待っていて楽しめるルートだった。
雨宮 瑞穂(あまみや みずほ)
春人のバイト先の先輩社員。お姉様枠の24歳とシリーズ内では高齢な方。そして実は既婚者で、夫を亡くした未亡人である。
おっぱいがデカく妖艶だけどミステリアスな感じもある属性多めのヒロインだった。
こちらに誘いをかけるようでいて、さっと引く感じも見えることから、計算でなく天然で翻弄するお姉様だったかもしれない。
年齢が年齢だけに、ルートでの展開はアダルト。
この段階だとシリーズ一の淫らなルートかもしれない。タオルケット1枚で寝ている瑞穂のCGはエロい。
メモオフだからそこはなんとしてもボカシにかかるが、これって絶対にキスの先の世界に行ってるだろうって感じのシーンが見える。やってるなコレは。
この困ったお姉さんが一気にCEROのレベルを上げる危険人物だったかもしれない。
決して悪ではないのだろうが、終始良くない事をしいてるようなドキドキ感が良いルートだった。
瑞穂の設定からしてどうにも「めぞん一刻」を思い出してしまう。で、とどめは春人が死んだ元夫の墓の前であなたごと瑞穂さんをもらう的宣言までするし。これはもう作家が分かった上で、めぞん一刻の告白シーンを引っ張って来ているのだとしか想えない。
愛する者を亡くした過去を持つ女の苦悩が見えるシリアスさもあるが、もっとやばいのはここでも潜り込んでくるあすかを加えての三角関係。
あすかも春人も同じバイト先で働き、瑞穂は二人の指導者。職場にも持ち込まれる三角関係の修羅場を見ると胃がもたれる。でも楽しいのだ。
このルートだと春人と瑞穂の関係をよく想わないあすかの荒れた態度がバイト先でよく見えて来る。そうなるのは分かるけども、それでもあすかの態度が良くないぞと思えた。
春人、瑞穂とは隣人関係ということで、このルートだと信の出番も多め。
愛する人を亡くして残された者のことは、友人の智也のことや、命の恩人の店長のことで経験済みなため、彼ならではの視点で春人に助言をくれる。信の良さが生きるルートだった。
瑞穂ルートの2つのエンドはどちらもキツイ。瑞穂がトラックに召される死別か、生き残っても離別の道を行くかのどちらかになる。幸せにその後の人生を御一緒するハッピーエンドは無し。
死について考えさせられるのはメモオフの基本要素でもある。その点が見えたことでこの重めのルートは印象に残る。
あすかを傷つけることで二人が道を進めるのが必須となる。そこで二人は、大切な人を傷つけても幸せになれるなんて道はあるのか、ないのかと議論する展開がある。これは難しい事を言っているようで印象的だった。でも幸せのためなら、ある程度のものは切り捨てることになるのだろう。幸せを掴むならそれで正解だと想う。
「らんま1/2」や「あずきちゃん」などで、可愛い声の芝居をしていたイメージの強い佐久間レイが、妖艶な未亡人を演じた事も意外なものとして記憶に残る。
早蕨 美海(さわらび みうみ)
あすかの同級生女子。主人公とは従兄弟同士。
家庭教師として勉強を教える内に、同じ映画好きということもあって仲良しになってラブが芽生える。これはラブが生まれて仕方ない状況ではある。
コンビニで、どのおにぎりを買おうかと迷っている美海に助言を行うイベントが序盤に見られる。その悩みは分かる。
他の4人のヒロインはスタイルに迫力があり、おっぱいがもあるが、美海だけはそんなことはなく、本作ではちんちくりんのロリ枠。見た目の迫力では他のヒロインよりも弱い。
そんなわけでちょっとおまけ感も出ているかなと想いきや、後半でなかなかのネタをぶっ込んでくる。美海の持つ秘密は、一年ごとに記憶がリセットされるという厄介な記憶障害を持っていることにあった。一週間フレンズの猶予がもっと長い版だな。時代の間にちょこちょこ出てくるのが記憶障害持ちヒロインなんだよな。
地味な感じのリア恋枠と想いきや、なかなかファンタジックなヒロインになったな。
あすかと美海は親友同士なので、ここでもあすかの存在がちょっと厄介な三角関係が出来る。あすかはどこにでも潜り込んでくるな。
美海は脚本家志望者なので、彼女のルートに進むと、雄介の脚本を使わず美海考案の脚本で映画を撮る事になる。亡き雄介には申し訳ない気分になるが、根底を変えた全く新しいルート展開になってこれはこれで興味深い。
美海はものすごく優秀で勉強が出来るから、本来なら家庭教師など必要ない。でも春人とお喋りしたいがために、今度も来てもらえるようあれこれ手を売ってくる。この感じの好意の見せ方にはキュンとくるものがあって良かった。
名塚佳織が演じる控え目で弱々しい女子の演技にも萌えだった。
そんなこんなで、映画を撮って、友情も愛情も育んで、バイトもしっかりしてというメモオフらしい青春物語が楽しめて良かった。
歌詞に作品の要素が多々見られるエンディング曲の「ロマンシングストーリー」を聴きながらこの素敵なゲームを記憶しよう。
スポンサードリンク