「鉄コミュニケイション」は、1998年10月から1999年3月にかけて放送された全24話のテレビアニメ。一話15分の作品である。
タイトルの「鉄」は「てつ」でなく「くろがね」と読む。全然関係ないけど、この10年後くらいには、同じく鉄と書いてくろがねと発音する「鉄のラインバレル」という楽しい作品がやって来ることになる。
先日、堀江由衣のラジオ「堀江由衣の天使のたまご」が1000回目放送を迎えた。それを聴いて思う。約20年も同じ番組を続けているなんてすごい。これだけの間仕事をしているとなれば、堀江由衣のキャリアもかなり長い。
改めてレジェンド声優の軌跡についてあれこれ思うわけである。このラジオを聴いた事をきっかけに、堀江由衣の新人時代の仕事を知りたくなってきた。そんなわけで色々調べてたどり着いたのが「鉄コミュニケーション」という作品。
原作小説がある。基本設定は原作と同じだけど、アニメ版だと後の展開がかなり異なるらしい。
本作が堀江由衣初主演作品ということで、これは彼女の歴史を辿る上では無視出来ない。OP、ED主題歌も担当。OP曲がCDシングルデビュー曲となっている。演技でも歌唱でも色々とお初なアニメになっている。
で、見てみると、当然ながら演技でも歌唱でも彼女の声が若い。フレッシュな堀江由衣が楽しめる一作となっている。
タイトルロゴの「コミュニケーション」の部分が、昔のミュージックステーションのロゴとなんか似ていると思ったのは私だけだろうか。
アニメの内容は終末系SFといった感じ。
まず最初に堀江由衣演じるハルカという少女が登場する。自称おそらく地球最後の少女ということで、これは気になるキャラだと注目してしまう。ハルカの髪型、ファッションを見ても、ちょっとアスカ・ラングレーぽいと思ってしまう。
作品世界観は荒廃したもので、なんと地球は大きな戦争のためにほぼ終わった状態になっている。街には廃墟ビルが乱立し、文明は死んだということが一話目からもよく分かる。
終わった世界に一人美少女がいる。これは未知なるロマンスを感じるではないか。
一時は放射能が地表を覆い、人が住めたものでない最悪の状態にまで追い詰められた地球でハルカが生き残った理由は、コールドスリープをしていたから。目覚めると過去の記憶を失っていて、周りには5体のロボットがいるばかり。
終わった世界で、人間の少女ハルカと5体のロボット達がファミリーを形成して生きていく物語が描かれる。
たまにこの手の破滅的未来設定作品があるが、フィクションとして見る分には結構好きな世界観なんだよな。
5体のロボット達は個性的。同じロボットというくくりではあるが、それぞれデザイン性の統一感がなく、キャラかぶりもない。バランスの取れたメンバーになっている。
ハルカ様大好きなスパイク君は、おっちょこちょいの小僧って感じ。序盤だと何かとラッキーすけべ枠でハルカのお色気シーンに突っ込んでいく。
トリガーは一番ファンタジーなマスコットキャラって感じのロボ。ファミコンのパチ夫くんみたいな感じ。
リーブスは大柄のおっさんって感じ。表皮を剥いだ後のターミネーター感がある。一番男らしい見た目なのに、オネエ口調な点で印象に残るキャラ。
クレリック先生は、なんというか一番見た目が謎。ロボットというよりエヴァの使徒感もある。こんな感じの使徒いたよな。声が大塚芳忠で、このずっと後に同氏が演じることになる仮面ライダー電王のデネブとも同じような格好をしている。声も格好もデネブっぽい。
セクシー枠なお姉さんロボットのアンジェラも良いポジションのキャラだった。他の4体はハルカを支えることをプライオリティに動くが、アンジェラは過去の傷から人間を毛嫌いしている。少しずつハルカがアンジェラに歩み寄ることで、二人の間にファミリーの絆が生まれる過程は清くて良いものだった。これは皆思うことかもしれないが、アンジェラの見た目やクールなヒロイン性が攻殻機動隊の素子姉さんぽくて仕方ない。
中盤でハルカとアンジェラがお風呂に入るシーンでは、アンジェラの乳首が解禁される。アンジェラの巨乳っぷりが見えたのは目の保養になった。
序盤では、こんな酷い世界にも見えるファミリーのほっこり日常系作品の要素があった。ずっとこんな感じのほんわかテンションで行くのかと思うと、徐々にそうではなくなっていく。
中盤からは津波が起きていつまでも同じ場所でのうのうと暮らせなくなる。そこで住処を移す冒険もののようになってくる。中盤での移動手段となる大型飛空艇フライヤーの離陸シーンは結構迫力があってワクワクした。
ハルカの記憶が徐々に回復し、両親に関する悲しい過去の記憶も解禁される。この点にはシリアス要素もありだった。
後半からの見所は、実はまだいた人間の少年カナトとの出会いを通して、ハルカの未来が大きく動く点。カナトを演じたのは、声優を引退した今井由香だった。懐かしいイケメンボイス。
カナトと共に、カナトの身の回りの世話をする少女ロボットのアリスとリリスも登場。それぞれ銀髪、金髪の少女ロボットコンビは、萌え要素のテコ入れだったのか。ハルカやアンジェラとは違うアニメ的萌えと華があった。
後半でハルカとカナトが出会うと、とりあえず地球人にもまだ二人生き残りがいたと分かる。終わった世界のアダムとイヴだな。加えて、まだいた生き残りは、火星に逃げていたことも分かる。なんだかすごい規模のでかい話になってきてワクワクする。
最終回ではフライヤーに乗ってハルカとカナトは火星を目指す。ロボット達には地球を復興する仕事があるので、彼らは地球を離れることが出来ない。ここで悲しき別れになるのでウルリと来る。
そしてオチでは、火星から地球に帰還したハルカとカナトの姿が見られる。加えて二人の子供の姿も確認出来た。火星産ベイビーになったようだ。ハルカの帰りを一番喜んで駆け寄るスパイク君の姿に泣ける。本当にハルカ様大好きロボットだったな。
そんなわけで、かなり楽しめた終末ものアニメだった。24話でコンパクトにまとまっていて普通に面白かった。なによりも遠いあの日の堀江由衣の仕事が見れたのが良かったぜ。
ED曲の「Dear mama」には心癒される。遠くの母へ近況報告しているような歌詞を、優しいメロディに乗せて可愛く歌い上げている。この曲好きだな。
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