こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

背中から見守るよ「ブルースワット」

ブルースワット」は、1994年1月から1995年1月にかけて放送された全51話の特撮テレビドラマ。

 

 前作のジャンパーソンがあのようなウルトラスーパーロボットだった反動を受けてか、次回作のブルースワットはかなり地味。リアル路線追求という、特撮をやるなら実は原点回帰かもしれないコンセプトのもと、しっかりとリアルに地味な作りになっている。

 

 ジャンパーソンから連続して見た当時の子供達なら、ブルースワットの方が科学力、火力、パッと見の格好良さでも負けているのでガッカリ、ということもあったかもしれない。

 確かに出だしでは不穏と不安な感じがあったかもしれないブルースワットだが、これがなんだかんだでしっかり面白い。私はこの冬の少ない自由時間を利用して、6日間で全話視聴した。一年間放送を6日で見るとは、ギュッと凝縮された楽しき時間だったぜ。そんなわけで、連続して見ても激しく飽きることなく楽しめる一作になっている。

 

ブルースワット

 

 ピンのヒーローだったジャンパーソンを経て、今回からはまたレスキューポリスシリーズのようなスリーマンセルヒーロースタイルに戻った。

 ブルースワットはチーム名であり、ヒーローそれぞれにはレッターとかブルースみたいな個体名が無い。

 変身前も後も、それぞれの人間名のショウ、サラ、シグで呼び方は統一。変身ポーズもなく、その点も地味にリアルに見せている。色々と硬派でスマートな作りになっている。

 

 全身武装ではなく、メットとプロテクターと銃で戦うヒーロー達が登場する。頭と胸周りしかガードはなく、後は身がモロ出ている。守っている箇所でいうと、剣道とかキャッチャーの防具と同じような面積。スーパーヒーローっていうよりも機動隊の装備って感じ。

 覆う部分がこうも少ないとは、予算不足だったのかな。過去作の「世界忍者戦ジライヤ」並に装甲が薄そう。

 

 モデルとしては皆同じスーツだが、ショウはブルー、サラは紫、シグはブラックと各員カラー分けはされている。サラはジャンパーソンカラーだな。微妙にカラーが違うこの感じがおしゃれ。分かりやすく赤、青、黄とかでなく、皆暗めの色なのも地味だが硬派な感じがして良い。

 このスーツには、可能な限り無駄な要素を削ぎ落とした究極の引き算で魅せる格好良さがあると思う。

 生身が出ている箇所が多い仕様のスーツでも決してダサいわけではなく、ちゃんと格好良いのだ。

 

 武器は様々あるが、レーザーガン、バズーカ砲、火炎放射器など、めっちゃ頑張れば地球の文明でもなんとかなる地味なものが揃っている。謎の超文明や未知なるエネルギーを導入するでもなく、地球産の武器で戦う。まぁそこもリアル。

 これと比べると、ジバンとかなら単体で国をも焼けるレベルじゃないか。

 

 中盤から後半にかけては、宇宙から来た仲間のゴールドプラチナムが、宇宙産のすごい武器をレンタルさせてくれるようになる。ここはテコ入れだろうな。ちょっと地味過ぎるから、スーパー宇宙文明で戦う展開も必要と思ったのだろう。

 ゴールドプラチナムの力で、ショウがハイパーショウになると、スーパーパワーでめっちゃ強い。そしてドラムガンナーは、地球産の武器よりも火力が強い。ここらあたりはファンタジーな良さ。シルバーカラーが映えるハイパーショウは、ほぼジバン。

 

 ショウの怒りに呼応してゴールドプラチナムは宇宙から助けに来てくれる。ドモン・カッシュのように怒りをパワーにして必殺技を出すスタイルなのか。

 普段は気の良いショウの心からの「許さねぇ!」を引っ張り出すレベルの悪さを敵がやってのけた時、新たな力が目覚めるのだ。この流れが中盤からは定着する。

 一回目なら分かるけど、ハイパーショウになるためにしょっちゅう怒られると、怒りのハードルも下がったのかとも思ってしまう。終いには、借金があること、足が臭いことを敵にバカにされたくらいで、ゴールドプラチナムが来てしまうレベルの「許さねえ!」が口から飛び出すようになる。ショウはいいヤツだが、ちょっと幼稚でコミカル。

 

 ゴールドプラチナムは、強くて頼れる黄金の戦士。でもなぜか、絶妙にサルっぽく見えないこともない。ウルトラマンのサル戦士のハヌマンをちょっと思い出すな。

 こんなに落ち着いたイケボだが、ゴールドプラチナムの声は、キンタロスと同じてらそままさき。シャドームーンとキンタロスが同じ声って知った時はマジに信じられないと思ったが、ゴールドプラチナムもそうだったのか。てらそままさきって最近ではアニメでマジなおっさんをやるイメージがあるから、こんなイケボも出せるのかとびっくり。良い声。

 

ブルースワット VOL.3 [DVD]

 

 ヒーローが悪者をぶっ飛ばすという設定は、多くの作品同様据え置きだが、地球侵略を企むスペース・マフィアという連中とやりあうのは特徴的。要はとんでもないエイリアンが相手となる地球存亡をかけた戦いが描かれる。

 敵はなんというか生物感が強く、いい感じに肌にヌメっとした感があり、とてもグロイ。外国映画の「エイリアン」ぽく、もっと近いところで言うとゼイラムだな。 

 敵のデザインが思った以上にマニアックで、コレは子供受けしないだろう。子供から人気の出る感じの怪人はいないな。

 

 ブルースワットのスーツよりも、目玉はこちらの化け物共の方かもしれない。全話を通してたくさんのエイリアン共が登場した。複雑怪奇な造形美が見える化け物連中のデザインセンスは、キモグロいけど秀逸。これのスーツの方がお金がかかっているのではないかと思える。

 

 古い時代の作品だが、技術革新の上でも過渡期ということで、新たな挑戦でもあるCGの存在が大きく見えるのも作品の特徴になっている。

 主にエイリアンのアクションに、当時だと結構頑張った作りのCG描写が見られる。人の体に入ったエイリアンが外に出てくる時には、CGを用いた演出の存在感がかなり目立つ。違和感薄めに普通に楽しめる。

 ゴールドプラチナムのアクションに見えるCGは自然に見えてなんかすごい。スターフォートレスが登場するシーンのCGが一番格好良い。

 

 エイリアン達は、人に憑依して体を乗っ取るインヴェードという術を持っている。人の目で乗っ取りの判断は出来ないから、やり口によればとんでもない悪さが出来る。

 この反則的能力を使い、敵はブルースワット基地のボスに憑依して悪さをし、一話目から組織を壊滅させてしまう。

 ブルースワットはジャンパーソンのように個人勢で戦っているが、一話冒頭段階ではそれなりに大きな組織として稼働していた。たった三人を残して、一話目で基地は飛ぶし、他の隊員も消されてしまう。なんとも酷いスタート。

 

 第一話でショウは、一仕事したボーナスが出ることを楽しみにしていたのに、支払いが済む前に会社は消滅してしまう。ご愁傷さまだな。

 というか、ヒーローの前に会社員だからな。第一話冒頭のミッション時には、サラと給料の話なんかをしているし。あの頃が懐かしくなるくらい、後の戦いは孤独を強いられる厳しいものになる。

 

 生き残ったヒーローの3人は、後にメカ周りに強いセイジ、そこらへんの女子大生のスミレを仲間に入れ、たった5人で激戦を乗り切る。

 ピンチからのスタートで、最大限切り詰めた戦いを描くこの地味さが興味深く、面白みにもなっている。

 

 今思えば、たった数名からなるチームで、よくこの戦いに勝利できたなと思う。敵は単体で強い上に、数も多く、それなりに大きな組織で動いている。この勝利は奇跡かもしれない。

 

 ブルースワットとは、基地壊滅にあう以前からも謎に満ちた組織で、政府公認とか、警察の一部からなるチームでもないらしい。そもそも規模狭き個人勢だったのが、もっと絞ってたった3人になったという形を取っている。ありえねぇよな。

 立派な基地があったのに、ぶっ壊された次の瞬間には、チンピラが基地にでもしそうな廃工場に住んでいるし。

 

 金はいるということで、ブルースワットの三人は、ブルーリサーチというなんでも屋みたいな会社を設立している。戸籍上、基地壊滅事件で三人は死亡扱いになり、新聞でも死んだ人として顔が載っている。そんな状態でも生きて金は稼ぐという厳しさも見える。

 地球全部をぶっ潰すレベルで動く強大な敵を相手に、地味に会社経営をしながらたった5人でよくやっていけたよなと思える。

 コツコツと地味にやっているヒーローという点に好感が持てる。

 

 メンバーの内、ショウは元トライアスロン選手の一般人。サラはロス警察で鍛えた生え抜きのエリート戦士。そしてシグの正体は、なんと向こう側と同じく宇宙人であり、彼もまた人間にインヴェードしている。この三人のキャラ性のバランスも丁度良い。各員の魅力、生い立ちまでも掘り下げる見せ方も面白かった。

 

 シグが実は子持ちで、息子のザジと戦うことになる悲哀の物語は見どころになっていた。途中で「パパ、止めてよ」とか言って息子を出し、シグが怯んだ隙を狙うザジの戦法はムカつく。しかし、ザジの体には、エイリアンのジスプが入っているのでコイツが一番のワル。

 それにしても子持ちヒーローというのも珍しい。シグは若いイケメンにも見えるが、所帯持ちの貫禄あるお兄さんにも見える。

 

 ショウは割と童顔に見えるが、しっかりイケメン。長身で180以上ある。意外にデカいんだな。ヒーローにしては言動の節々にチンピラ感が見えるが、実は情に深く、熱い一面もある。このキャラ性は好きだった。

 サラは紅一点でもキャピキャピした感じはなく、クールな姉御肌といった感じのヒロイン。なにせロスで仕事経験があり、激戦をかいくぐって帰還する生存率の高さから「地獄帰りのサラ」の異名も取っている。まだ若いのにこの段階で過去が濃密。

 

 メイン三人のそれぞれのキャラ性が、結構珍しいものだったかもしれない。

 

 敵のエイリアン共は、最初の内はたくさん喋ることなく、本能として人を狩っているようで不気味。言葉無く侵略してくる点はリアルで、それゆえ怖い。考えてみれば、必ずしもこちらの星の言葉に合わせてベラベラ言う必要はない。ガチで侵略するなら、なるたけノイズは無しに行うのがベストなんだな。

 中盤になると、それまで組織的に動く様子が見えなかったエイリアン達も、ジプスを頭に統率の取れた組織的侵略に出る。そして敵同士でもコミュニケーションを取るようになる。敵の化け物にキャラ性を持たせることで、こちらも感情移入出来て恐怖心が薄れる。この点は、ちびっこに向けてのテコ入れだったのかもしれない。

 

 敵も結構頭が良く、地球侵略をするなら、次に住むことを考えて、なるたけ自然は残して星を壊さない、労働力もいるから必要以上には殺さない、という無血寄りの理念を抱いて仕事に出る。侵略者もただぶっ壊すバカじゃないよな。

 改心してブルースワット側につくエイリアンも出てきたりと、中盤から後半にかけては、敵との間にもドラマが見えるようになった。一年も放送するなら見せ方も工夫するわな。

 

 後半にはジプスより格上のクイーンという怖い女エイリアンが登場する。こいつは言動が乱暴で、無血などと甘いこを言わず、どんどんぶっ壊す、ぶっ殺すのスタイルで行くと宣言する。

 ここからは意見対立が起き、ジプスとクイーンとの内部抗争も起きる。後半の敵側の揉め事もちょっと見どころ。

 

 最終回は寂しくも爽やか。

 地球を守った英雄達でもあるブルースワットのことは、一話から最終回まで大衆に広く知られることは無かった。よってこの聖戦の勝利は、無喝采の栄光となっている。歴史の裏側での活動に徹した彼らの生き様が格好良い。「地球を守っちゃったんだよ」とか思わず知人に言いたくなるところを、彼らは鼻にかけず、ただ自然に生きるのみ。

 

 地球を守って散っていったゴールドプラチナムの意志を次ぎ、最終回でショウは宇宙へ上がる。これにサラも同行する。この二人はなんだかんだでデキていたのではないだろうか。

 宇宙から地球を見たショウの「グッバイ!俺達の地球」のセリフで物語は幕を閉じるのだ。あの最後のシーンは良いなぁ。地球を見ながらのラストだなんて、仮面ライダースーパー1ぽくて良いじゃないか。

 

 ブルースワットは、大日本特撮ヒーロー史において、やや影がかかった部類のヒーロー達かもしれない。しかし、その地味なやり口にこそ美学が見えたのである。格好良いぜ。

 

 OP曲の「TRUE DREAM」は、特撮ソングらしい暑苦しが皆無の爽やかミディアムバラード調の名曲である。技名、キャラ名、タイトルが一切入らない普通のJポップな出来なのが珍しい。この曲は神がかって良い。

「君の泣き顔見たくないから背中から見守るよ」の歌詞の響きは美しいもので印象的。そういうことか。世間様に公表して表立った活動をしない彼らなりの戦い方が、まさにこの歌詞通り。我々人類を背中から見守って、地球を救ったのだ。ブルースワット、まじカッケェー。このどうしようもない地味さとロンリーさがクセになる。

 そんな異色のヒーロー ブルースワットのことを私はいつまでも忘れない。

 

 また会う日まで、グッバイ、俺達のヒーロー!

 

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