「綾音ちゃんハイキック!」は、1997年に発売されたOVA。
1話約30分で2話までがリリースされた。本来なら全4話リリースの予定だったが、なんだかんだの末に話が流れて未完状態で終わっている。
この時代のOVA作品の都合をいうと、こういう悲しいエンドを迎えるプロジェクトの存在は決して珍しい事ではなかったらしい。結構面白かったので続きも見たいと思ったところでズバッと尻が切れている。3話目の予告まで入っているのにリリース無しだからな。これは悲しい歴史があったものだ。
こんな状態なのでDVDになるわけがなく、VHSとLDでしかこの地球には映像が残っていないという。我が父の部屋を掘り返したら出て来たVHSの方で本作を楽しんだ。画質も音質も荒いな。VHSってのもその内にはロストテクノロジーになるな。
タイトルにもある綾音ちゃんこと三井綾音が、プロレスラーを目指して邁進する内に、なんだかんだあってキックボクシングをやる事になる女子スポ根物語である。
元気で健康的でとにかく足が良い綾音を演じる宮村優子の元気なお声が良し。
女版乱馬やレイアースの光ちゃんぽいボーイッシュながらも可愛らしいキャラデザが光っている。
女学生にしては武闘派な綾音は、女子プロレスラー志望の戦士であり、最初は女子プロの試験を受けに行く。特技は飛び殺法だと言うが、三半規管がいまいちらしく、使ったらフラフラしていた。
レスラーになれなかったところで丹下国光という怪しいおじさんに連れられて高速道路下のジム、とは名ばかりのガラクタ置き場みたいな所で無料レッスンが始まる。特訓をつけるおやっさんらしい名前をしているなぁ。夢だけでは食っていけないということで、コーチ以外ではファミレスのバイトをしているおやっさんの姿も描かれている。意外と堅実なんだな。
綾音の足はとにかく良い。もちろん筋肉の状態とかを見たアスリート視線での話である。そう想った丹下のおっさん指導のもと、綾音は特訓を開始させるのである。
おバカな綾音は全く気づかなかったが、それはレスリングでなくキックボクシングの特訓だった。初めての試合が組まれてリングに上がるまで自分はキックボクシングをやらされていると気づかない点はおマヌケだった。
そんなわけで騙されてまさかのリングインすることになる。コミカルな導入でよろしい。
練習試合の相手にはアジャ・コングが良い、プロになって豊田真奈美選手と戦いたいなど、綾音の口からは実在するレスラーの名前が出てくる。豊田真奈美はキャラ化もされて出てくる。
強い相手に倒されそうになった時には、精神の支えとして憧れの豊田選手の姿が脳裏をよぎる。そのくらい綾音は豊田選手推しである。豊田選手は戦う女子のアイドルスターだったんだな。
バトルシーンは結構楽しめる。キックボクシングの試合ではあるけど、レスリングで慣らしたことからそっちの技もそれとなく入れてくる綾音独自の戦闘スタイルも楽しめた。
そういえば女子のキックボクシングなんて見たこと無いな。男子のも無かったかもしれない。
リング入りが学校にバレて退学処分の話が出たりするなど、学園もの要素もありだった。キャラが立っているチビの校長先生とかは面白かった。
プロレスが好きな同級生男子の稲垣勝兵を山口勝平が演じている点は名前被りでユニーク。
若手のやり手選手 宮川桜子がライバルキャラとして登場する。お嬢様で自信家でうるさいけど憎めない感じのキャラ性から、「YAWARA!」の本阿弥さやかを思い出す。お嬢様ボイスといえばこの人の川村万梨阿が演じている。
何か良い感じのライバルも出てきてこれから熱くなりそうってところで終わっている。声優も有名所が出ていてよかったのに、コレはオチが見たいところだな。
マンガも刊行していたというが、こちらも同じく未完で終わっているという。途中まで見るに悪くない作品だと想うのだが、なんでこうなったんだろう。
キックボクシングやプロレス団体の名前が番組協力者として上がっている。名を提供して作品作りに協力した彼らは何を想うのだろうか。自分の名前や姿が出ていることから豊田選手も何か想ったことがあるのかもしれない。
次回予告で映像も出た3話目の収録も進んでいたのかもしれない。主演の宮村優子は打ち切りになってどう想ったのだろうか。というか、こんな仕事したことを今でも覚えているのだろうか。
そんな感じで、テーマとして珍しい女子キックボクシングを題材にした不遇な作品を今更になって視聴した。
こう見れば日本のアニメ史にも光と影のそれぞれがあるよなって思えた。
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