こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

俺の怒りは爆発寸前!「時空戦士スピルバン」

時空戦士スピルバン」は、1986年4月から1987年3月まで放送された全44話の特撮テレビドラマ。

 

 ギャバンから受け継いだコンバットスーツヒーローの5作目にして集大成となる重要なポジションの一作となった。宇宙規模の壮大なストーリーをバックに展開するこのシリーズはスピルバンで一旦終わりとなり、次作からのメタルヒーロー枠は私も強く推すメタルダーにバトンタッチする事になる。このターニングポイントには思わずコイツはすごいぜぇ!を言いたくなる。

 

 そんなスピルバンも36年前の作品になってしまった。めっちゃ古いなぁ。

 チビの頃に図鑑で見たことがあるだけで本編はなかなか見れなかった。そして遂にこのGWのケツくらいになってやっと見ることが出来た。楽しかったので5日くらいで全部見た。

 放送当時にVHSでの販売はなく、レンタルにも並ばなかったとか。そういえば宇宙刑事シリーズはあってもスピルバンは無かったな。

 DVDの普及が広まった00年代中頃になってやっとパッケージ化を迎えた。DVDには販売当時のキャストインタビューも収録されているが、それすらもう懐かしい映像だな。こちらのインタビューではためになる撮影裏話などが聴けてめっちゃためになった。

 

 スピルバンというタイトルは、映画監督のスピルバーグから頂いたものである。確かに言われてみれば響きが似ている。私としてはそれよりも先行して語感と字面的に「ビデオ戦士レザリオン」を思い出した。同じ意見の人間は何人いるのだろうか。

 ワーラーの兵器にサメ型の戦闘母艦のスカルジョーズというのがいる。これはスピルバーグの手掛けた「ジョーズ」の映画を見ていないと思いつかないデザインとネーミングセンスだろう。

 

時空戦士スピルバン VOL.4<完> [DVD]

 

スピルバンと仲間達

 スピルバン、その幼馴染のダイアナは宇宙のどこかにあるクリーン星出身者。侵略者ワーラー帝国によって母星は滅んでしまう。幼い二人だけの生き残りが地球に逃げ延び、戦士となってワーラー帝国に戦いを挑む展開になる。

 

 クリーン星から地球に来るまでの旅路はとんでもなく長く遠い。片道12年かかる。12年の間二人は睡眠カプセル内で睡眠学習を行い戦士としての知恵を蓄える。戦いの厳しさが分かるのが、目覚めた後の2年はみっちりと身体強化特訓を行うこと。一族を葬ったワーラーへの逆襲を仕掛けるタイミングを待つこと14年の時が流れた事になる。大変だなコレは。これで負けたらシャレにならん。

 幼馴染だけどダイアナの方が2つ年下という設定は良いなぁ。年下の幼馴染って結構美味しいラビリンス。

 

 スピルバンという名前は地球人向けではないため地球では城洋介と名乗っている。

 ダイアナなら地球のお友達にダイアナ・ロスとかがいるので違和感なくいける。なのでダイアナはそのままダイアナ名義で活動している。ダイアナという名前は星を違えても通用するので汎用性が高い。

 

 スピルバンといえば代名詞とも言えるカッチョ良い武器がツインブレードだ。こいつはやっぱり今見ても格好良い。スーツデザインもやはり格好良く、先輩のギャバンシャリバンシャイダー、ジャスピオンそれぞれの良い所取りみたいな感じになっている。

 刀身の両側から刃が伸びるツインブレードのアイデアを盛り込んだのは先輩ヒーローと比べて強い魅力となるポイントだ。この光るツインブレードに心躍った特撮好きは多くいたはず。大発明だと思う。

 

 ツインブレードをぶん回す戦士の有名所を上げればスピルバンと並んでダースモールの名前が上位に来るだろう。ダースモールも思い出す一作。

 ツインブレードから繰り出す必殺技のアークインパルス使用時には、バラバラに引き裂かれた家族の事などの悲哀の記憶がフラッシュバックする。この演出は変わっている。

 悲しみから来る爆発寸前の怒りをブツケて敵を粉砕するのだ。悲しみを背負うソルジャーというどうしようもない哀愁性もまたスピルバンの魅力。

 

 最終回で繰り出したアークインパルスでは、それまで爆発寸前だった怒りがすっかり爆発し、より一層脅威的な破壊力を見せた。寸前状態が続くと良くないので逆に解放からの発散とするのが良かろう。そんな事も感じるラストだったな。 

 

「結晶」の掛け声で結晶システムが発動し、瞬時に戦士スピルバンへと変身が完了する。この変身シーンはやはり格好良い。

 スピルバンからの珍しい点は、主人公の相棒の女子も変身すること。男だけにまかせて黙っているなんて出来ない。女子だって変身してワル共をぶっ飛ばしてやるという意気込みが見られた良き作風。ダイアナも変身してダイアナレディになる。

 

 もっとすごいのが、後にスピルバンの姉のヘレンも特訓することでヘレンレディになること。3人1チームで戦う体制なら後のメタルヒーローシリーズとなるレスキューポリスシリーズ、ブルースワットビーファイターにも見られた。それらに通ずる魂の系譜がスピルバンからも見られたわけだ。やはりスピルバンはすごいぜ。男がセンターで両脇に女子を置くというこの編成は、多くある3人1チームヒーローでもここくらいのものだろう。

 ダイアナもヘレンも系統は違えどイカすギャルであることに変わりない。というわけで両手に花だな。

 

 ダイアナの格好って冷静に考えるとドエロいのでは?

 地球にいるのにダーティペアみたいな服なんだけど。それもイメージ的にはユリでなくケイの方かな。

 ヘレンは初期はヘルバイラ、後半はヘレンレディとして、こちら側あちら側双方の技術で変身している。何気に2つの変身を行う美味しいポジだったな。よく見たらシャイダーのアニーと同じ女優。

 

 あと普通に見ていてどうしても目に入るのがツインヒロインがチラ、モロ織り交ぜつつ色んなところでパンツを開放していること。シャイダーを見ていてアニーってめっちゃパンツ見えているよな~って思ったものだが、こちらでもヒロインのパンツがかなり見えるな。これを見ていた当時のお父さん達は元気になったのではないだろうか。元気にチラもモロもかかって来いな良き時代だったんだな。見えて不快な事は全く無しで、普通に得した気分になれた。そこも作品の良さ。

 

カニック

 初手となる第一話からあっちもこっちも戦力を出しまくって派手にドンパチしたのが印象的。

 一話ではスピルバン側も出せるメカ関係は惜しみなく出しまくるし、敵だって戦車、戦闘機をバンバン出して派手に大バトルを見せた。この派手な導入は良し。とにかく楽しい。

 DVDのスタッフインタビューを聞くと第一話は、モノホンの戦車を投入しての撮影だったという。張り切って撮っていたんだな。

 

 スピルバンはバイクのホバリアン、戦闘空母グランナスカ、戦車のガイオスの超兵器を有している。このシリーズのメカニックは相変わらず優秀。

 ガイオスに搭載された飛行機のジェットガイオスが羽を広げるシーンが格好良い。

 

 グランナスカが優秀すぎる。

 飛行機の形態からデカい銃になるカノンフォーメーション、人型ロボットになるコンバットフォーメーションになる変形機能も組み込まれている。

 カノンフォーメーションで完成したデカい銃をスピルバンが手にしてぶっ放しているように見える演出はグッドアイデアだな。

 一話の段階でED映像に登場していたコンバットフォーメーションの初お目見えは中盤回まで待つことになる。これはカノンフォーメーションが優秀すぎたから出番が回る回数が減ったのかな。あの火力があればロボにならなくても事が済むだろう。

 

 グランナスカの内部には特訓ルームがあり、そこ専用で活動出来る宇宙剣士ティーチャーが住み着いている。こいつが外に出て戦う事が出来ればワーラー帝国討伐はもっとスムーズに行ったかもしれない。出番はマジでちょっとしかないけど何気にティーチャーの事もお気に入り。

 

 スピルバンが戦闘時に使用するバイパスリップのシステムもすごかった。

 町中でドンパチやると一般人の皆さんにとって危なすぎる。そんなわけで広い場所に敵ごと一瞬で移動してしまうすごい技術。

 ヒーロー稼業の中で浮上するであろう現実的な課題についてよく考えられているなぁ。これがもっと前からでもあればザンボット3のようにヒーローが住民に言い攻められる悲劇も回避出来ただろう。

 ギャバンマクー空間に引きずり込む装置みたいなのを今度はヒーロー側が使えているのが意外。

 

ワーラー帝国

 ワーラー帝国が求める物は質の高い水である。

 我々人類同様水がないとやっていけない連中でありながらも、そいつらが住み着くことで星は汚染されていく。次から次へとキレイな水を求めてあちこちに行くしかない大迷惑な連中なんだなコレが。

 

 水の惑星といっても地球の水の多くは海水。でも奴らが求めるのは真水である。そこで海水も全部真水にしてやろうと計画することがあった。これはすごい。いくらかをそう出来るのなら人類にとって有益な発明なのかもしれない。

 

 環境を汚染し星ごと駄目にされた異星人の生き残りが地球に逃れてくるというスピルバンの設定には、デンジマンのウミツラーの事件と同じようなものを感じる。

 で、そのデンジマンでボスキャラだった曽我町子が今作でもボスキャラのパンドラ女王役で怪演を見せている。これまた共通要素だが、ウミツラーと同じ声の飯塚昭三演じるデスゼロウ将軍がパンドラ女王の下についている。また悪者俳優達のコラボだな。

 曽我町子飯塚昭三もめっちゃ悪い芝居してちびっ子に有名なんだよな。

 

 パンドラ女王は普通に怖くて悪い女だった。ニヤニヤしながら普通に怖い事をするからやっぱり怖い。

 こいつが真のボスだった。正体はヒトデの怪物だから水ないと駄目ということだった。

 

 デスゼロウの重厚感あるデザイン性は格好良い。漆黒のボディもクールだ。パッと見て真っ黒仕様のモビルスーツハンブラビって感じ。ハンブラビってミサイルっぽいフォルムだなって思っていたが、こちらのデスゼロウはミサイルになって飛んでいく事が出来る。

 初期には冷酷でストイックな悪のカリスマな感じもしていたが、後半では恋愛ドラマ撮影を偶然見かけたことで自分も彼女が欲しいとかほざくナンパなギャグ要員に落ちぶれた。あれはあれで良い魅せ方だった。結果、敵対するダイアナに沼って言い寄ったセンスは悪くない。しかしデスゼロウがこのようなキャラ変を辿ることになるとはびっくり。

 

 幹部キャラに女スパイ達がいるが、これも結構攻めた格好でちょっとエッチだったな。ヒロインのセクシー要素がチビ向けにしては余分にあったかもしれない。まぁ悪くないけども。

 

 途中から悪の追加戦士としてギローチン皇帝が仲間入りする。ビジュアル系メイクのロックスターって感じもする。尖った見た目だな。今の時代からすると余計にすごい格好に見える。

 ギローチン合流までのエピソードの導入は興味深い。ギローチンは2201年の未来から連れてこられた戦士である。

 2201年の東京では、当然今以上に文明が発達して生活は便利になっている。がしかし、どんな時代、どんな世界にもはみだし者はいる。それが浮浪者という存在。悪のカリスマ皇帝の出自を見ると、なんと2201年の浮浪者だった。ボロボロの服でまともな生活が出来ていない。

 それでもワーラーの血を引く優秀な悪の才覚があるため、喋るハムスターに案内されて現代の日本にやって来る。

 23世紀になってもなお今ある世界の負の要素が残っていると分かるギローチン合流までのエピソードは印象的。でもこれがリアルな未来予想だとは思う。ギローチンはカリスマ浮浪者だった。

 こちらはヘレンを気に入って強引に嫁にしようとした。ツインヒロインは悪党にもモテる秀逸な仕上がりだった。

 

 後半の少ない回にはヨウキというスピリチュアルな臭いがする幹部クラスキャラも登場する。聖飢魔Ⅱの端っこの方にいても違和感なく馴染めそうなルックスだな。

「ムムム」というカルト教団を立ち上げて悪さをする不気味なヤツだった。危ない宗教が流行った時代だったのかな。

 

 敵サイドにいながらもキーパーソンとなったのがドクターバイオだった。デスゼロウが真っ黒な戦士ならこちらは真っ白な戦士。二人並ぶとめりはりある絵面が整う。

 実はスピルバンとヘレンの父ベン博士が改造人間になった姿である。洗脳からスピルバンの事は忘れ、帝国のためにしっかり働く悪の戦士になっているが、娘のヘレンのことだけはいつまでも忘れず最後まで娘への愛を貫いている。家族愛が見えるこの点は清い。体を失い脳みそと目玉だけになってもヘレンの事を思って動く父の愛には感動出来る。

 人間体のベン博士を演じるのは主題歌を担当した水木一郎だった。皆のアニキがここではしっかり顔出しで出演している。若すぎてクレジットを見ないと初見では誰だか分からない。しかし良い顔をしているな。改めてアニキはイケメンだと分かる。

 

 作品の大きな見所は、スピルバンが姉のヘレンや父のバイオと敵対する悲劇性にある。

 この構図になるよう楽しんで仕掛けを行うパンドラ女王達が本当に悪い。

 

 弟と戦うのが嫌で組織を脱走したヘレンが、いろんな職を転々として稼いでいるシーンも印象的だった。よその星に来ても意外と適応能力がある。牧場、保育園、アパレルショップなど色んな仕事をしていた。ヘレンの逃避行も大変なものだったんだな。

 

オチ

 ワーラー帝国との戦いのオチはどうしても記憶に残る。これはこれで良かったのか。世間の評価は知らないがSF的で嫌いではない。

 猿の惑星とよく似たオチで、そう来たかぁとなる。メタルヒーローでこの感じは珍しく意外だった。

 スピルバン達が元々いた世界は遥か未来のことであり、地球での戦いは過去に戻ってのことだった。そうなると23世紀から来たギローチンだって大昔の人間だったわけで。そうなるとこれは壮大だ。油断していると頭が追っつかない。

 

 最後の最後に来て「時空戦士」ってそういうことかと納得出来た。時空を越えてバトルしていたわけだ。

 すったもんだの末にさよなら地球、こんにちは地球となって終幕。うむ、良かった。

 

時空戦士スピルバン VOL.3 [DVD]

 

 古いけど普通に面白く、しっかり作られている。この時代の特撮は良いな。作り手のスピリットの熱量が強めだ。

 ちょっと気になったのは、コメディリリーフの発明家 大五郎が中盤から静かなる降板を迎えたこと。あいつ結構好きだったのに、ある時から一生出てくこなくなったから寂しかった。まぁ放送の見直しやテコ入れでこういう事ってザラにあるものな。

 

 物語とは関係ないけどタバコの自販機がアップで映る回があり、その値段が気になった。1986年当時には、一箱220円、240円の物が並んでいた。私はタバコを吸わないから詳しい事は知らないが、今だとこれの倍くらいは取られるらしい。タバコって本当に高くなったんだな。まぁ一生買わない嗜好品だから別に良いけども。

 

 というわけで爆発寸前の怒りを背負って戦うツインブレードの英雄スピルバンの物語が大変楽しかった。

 最終的には自分の星を大事にしなって言ってる話だったと思う。なので我々の地球ではクリーン星の悲劇を見ないよう日々気をつけて生きていこう。

 ありがとうスピルバン

 

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