「オールウェイズ 」は、1989年に公開されたアメリカ映画。
平成1年目に放たれた作品を今になって見る。こいつはなかなかにオツというもの。
意外にもスティーヴン・スピルバーグ監督作品だった。スピルバーグの中ではちょっとマイナーな部類なのか、普通に生きていて今まで知らなかった。
こういう爽やかなラブとファンタジーと飛行機野郎が織りなす世界観も持っていたんだな。とか思ったらすっかりそうというわけでもなく、本作は1943年に公開された「ジョーと呼ばれた男」のリメイク作品だという。そちらも知らなかったぜ。オリジナルもリメイクも大昔のことだな。
内容
空中消火隊員のピートは、山火事現場に飛行機で向かう。そのミッション中、同じく飛行機乗り隊員のアルの飛行機が火を吹く。これを助けようと奮闘する中、ピートの機体もまたトラブルから発火。アルを助けることは出来たが、ピートは助からず大空で爆死してしまう。
死んだピートが目を覚ますと、そこには天使ハップの姿があった。天使の命によりピートは亡霊として人間界に舞い戻り、新人の飛行機乗りテッドの守護霊として過ごすことになる。
ピートは恋人のドリンダを残して世を去った未練がある。そしてテッドはベリンダが好きだと分かる。
現在守護してやっている若者が自分の恋人とくっ付きそう。そんな苦悩の中、ピートのファンタジックかつロマンチックな物語が展開する。
感想
死んで幽霊になった主人公が現世に残した恋人を見守る。この内容から見た人のほとんど全部が、かの有名なニューヨークの幻を思い出したことだろう。そうなのだ、どうにもヒット映画のゴーストっぽい。
でもゴーストの方がこれより1年遅れの作品なので真似っ子した訳では無い。それにリメイクなのでもっと遡ってこれっぽい世界観の作品はあったことになる。
そんなわけで、とりあえず最初の感想としてゴーストっぽいと思った。
消防隊のお仕事だけど、飛行機で山火事の消火作業をするという珍しいお仕事現場が見える作品だった。
空から消火剤をぶちまけて消火するお仕事になっている。単純にこんなのあるんだと学びになる。
適した高度とタイミングで消火剤を撒かないともちろん意味がない。中盤ではテッドが飛行機で消火剤を撒く訓練シーンがある。ここで教官のアルに赤い消火剤をぶちまけるシーンはちょっと笑った。酷い目にあっているな。
飛行機に「ファイヤーイータ(火喰い野郎)」とペイントしているのがおしゃれ。
飛行機アクションの迫力は良し。飛行機がキレイだし格好良いんだよな。森に突っ込むスリルある描写は印象的。
危険なお仕事帰りにピートがドリンダと愛を重ねるシーンは美しい。
むさい男まみれな現場では天使のドリンダはめっちゃモテる。油まみれの男達がドリンダと一曲踊るため揃って手を洗うシーンがなんか良い。真っ白のタオルが即真っ黒になる。黒い油に絡めたコミカルシーンが愛しい。
油のギャグネタと言えば、アルの顔がべったりと黒い油まみれになる箇所もお気に入り。
アルを助ける過程で自分の飛行機にも火がついた時、ピートは「あれ、見てよ」って感じで火を吹いた翼部分に向けて首を振る。この段階でもう助からないと悟ったのか、最後はニヤリと笑って逝く。
空の事故は一瞬らしい。ニヤリと笑ったすぐ後に飛行機は爆散。死体も残らない勢いで弾けていた。このシーンには緊張感が走っていた。急な爆発にびっくりしたぜ。最後のピートの表情は印象に残る。
その後には、消火が終わって黒焦げになった森をピートが歩いている。作品の前情報無しならどういうこと?ってなる。
火事でハゲ山になった一帯の一箇所だけ不自然なまでに青々と植物が生える地帯がある。これが天使スポットだった。
天使ハップが登場し、なぜかハゲ山で散髪サービスが始まる。天使からの高待遇だな。
作品の強い見所の一つがこの天使の存在。なんと演じたのはオードリー・ヘップバーンである。彼女の出演作品なら10作品くらいは見たことがあるのでもちろん知った顔。そしてこれが遺作となった。平成時代にオードリー・ヘップバーンが見れたということで本作は価値ある作品になったといえよう。
ここからはピートの幽霊編エピソードが始まる。前情報無しに最初から見ていると、天使や守護霊の要素が出てくるようなファンタジー展開になるとは予想がつかなかった。序盤は硬派な空のお仕事ドラマだったからな。緩急をつけてきやがる。
人間界に降りてぶらつくピートだが、もちろん誰にも見えていない。
アルにいたずらしたり、テッドに向けて独り言を言ったりして幽霊生活をエンジョイしている。
テッドが飛行機訓練の時にも普通に後ろの席にいる。なんだかシュールな絵面。
ドリンダに迫るテッドを見れば、ピートは「俺の女だぞ」とやはり苦悩する。これってきつい試練だな。
テッドを家に招く時には、一生懸命料理をしました感が出るようわざとキッチンや自分を汚すドリンダの女子な部分が見えて楽しめた。
終盤の消火ミッションで飛ぶのがテッドでなく、ヒロインのドリンダだったのは意外。そこはピートが見守ったテッドじゃないんだ。終盤のテッドの活躍無くね?
天使ハップの教えは、死んだ者は現世で自分のために何かアクションを起こしようがないから生きている者を助けることで何かを残せ的な事だった。良いこと言ってる。
テッドを後押しし、ドリンダを助けてピートは成仏するのだった。
ラストのピートが滑走路を歩いて行くシーンは物悲しくも希望が見える印象的なカットだったな。
ラブとファンタジーと程よいコミカル要素で魅せる爽やかな一作だった。これは退屈せずに普通に見れた。大空を目指す浮遊感も心地よかったぜ。
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