一風変わったサスペンス展開が面白いヒッチコック監督作品である。
とある殺人事件の解決をテーマにしたサスペンスだが、ちょっと変わっているのはそこに宗教の概念が絡んでいること。これがあるから厄介だった。主人公がパンピーだったらこうも面倒な事件にはなっていない。
映画が始まってすぐに被害者ヴィレットの死体が映され、犯人もすぐに分かる。
ポートピアのヤスよろしく最初から視聴者には犯人が分かるスタイルを取ってのサスペンスとなっている。後はどうやって落ちまで導くのか、そこが見所。
犯人のケラーは、人を殺めてしまった罪を協会の神父に告白にする。それを受けたローガン神父は当然動揺するわけだが、告白を受けたままに警察へ通報することは出来ない。
そこには戒律という物が絡み、内容はさておき受けた告白内容を協会の外には漏らすことが出来ないのだ。まずは業務における守秘義務ってのがあるし、加えて宗教への信仰心から更に掟破りへのタブーの概念は強まる。
そんな中、犯人は法衣をまとっていたとう情報が出回り、神父のローガンに容疑がかかってしまう。事件の事は全部知っているのだから全て話してしまえば疑いはすっきり晴れる。でも話せない理由があるのだ。そこでローガン神父は苦悩する。告白された内容を世間に告白したくとも叶わないという歯がゆい状況がずっと続くのだ。
これに関しては「さっさと言っちまえ!」と思ってしまう。まぁ神父が戒律を破って喋ったら映画が成り立たないのだが。
宗教心によってこうも生きづらくなるものなのか。おまけにローガンにとって不利な情報が次々と出てきて外堀からちょっとずつ攻められ逃げ場が無くなってくる。神父様なのに容疑者として裁判の場に立つ緊張の場面も展開していく。ここまで来てもまだ真実を言わないローガンの真面目さはすごい。
有罪に出来ればこちらにとって都合が良いというわけで、警察サイドが誘導尋問を行ってくるのが憎たらしい。向こうも仕事だが、それにしても手を選んでこない点がムカつく。こういう奴らが冤罪を起こすのかなと思える要素もありだった。
ローガンが不利になるよう、実際のところは事件と関係のない元恋人との情事をネタに出してきたりにもする。ローガンを助けるために過去の恥ずかしい件を告白をしたルースが可哀想。ルースの夫も今回の事で傷ついただろう。嫁が昔の男の話をするのを聴くのは胸が痛かったはずだ。
余計に勘ぐって無駄な仕事をした警視連中もだが、そもそもの原因のケラーがムカつく。
告白された事は例え警察にでも漏らす事は出来ない。だから自分は安全だとたかを括っているのがムカつく。ローガンは最後まで神父として戒律を守れるのか試しているような素振りも見える。そこもムカつくなぁ。
何があっても最後まで告白内容を外部に漏らさなかったローガンはすごい。背信行為になるとしても我が身可愛さに情報を全て言ってしまうのが普通のはず。誰に疑われて攻められても真実を言わなかった精神力はすごい。私だったらこんな事になったら即ケラーを売り渡している。
裁判の場では真実を言うのがルールだけど、言えないからどうやっても矛盾の中にある。見る者にとってストレスが続くこの緊迫した状況が味噌となる面白い作品だった。
妻とホテルの料理人を銃で撃ったケラーが最後に始末され、ローガンは無実で事件は解決。
後半になって強めに見えるケラーの狂気性も印象的だった。ヒッチコック監督作品にはその手の人間性が出がち。
ケラーが勘違いから罪を自白したのがローガンの救いになった。最後まで協会のルールを守って黙したローガンに神が味方したかのようなラストだったぜ。なんだかんだあっても、神を信じて職務に忠実な良き若者は報われるってものだった。
事件と関係のない事とはいえ、男女の若き日の情事も絡める事で更に禁断性を強めたのもプラス要素だった。
ケラーの告白については、大らかな神になら許されても人間世界の法律が許さない。宗教世界に法律が突っ込んでいく観点にも面白みがあった。
派手さ無きじっくり魅せるサスペンスだったが面白い。
秘密を握るローガンがそれをどうするのかが最後まで気になってしまう構成も良い。これはアイデアものなサスペンスで良かったぜ。
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